【前編】会社の同僚と飲んだ帰り道→『明日はゴロゴロして過ごすかな~』とか思っていると、ゴチン!!という鈍い音と共に後頭部に痛みが走った・・・

2年前・・・会社の同僚と酒を飲んだ帰り道。夜10時ごろだったと思う。
俺は暗がりの路地を駅に向かって歩いていた。
当時29歳の俺はごく普通のリーマンだった。
明日は土曜で会社は休みだ。
「1日ゴロゴロしてゲームでもして過ごすか・・・」
なんて考えていたら・・・「ゴチンッ!」と今までに聞いた事のない音がした。
それと同時に後頭部に鋭い痛みが走る!
「なんや・・・これ??」と思いながらも、あまりの激痛に膝を突いた。
「ヤバイ・・・ナグられた!」頭で色々考える・・・。
「なに?なんで?リーマン狩り??」
とっさに後頭部を手でなでる・・・なんか濡れてる・・・。
暗くてよく分からないが出血をしているみたいだ。
膝ざまづく俺に人影が忍びよる気配がした。
「ヤバイ・・・とどめを刺される!!」
そう思った俺は「ゴルァ~~~!!寄って来たらブチコロされんどぉ!!」と喚きながら腕を振り回した。
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高校時代、授業で柔道(ウチの学校は授業といえど結構本気)趣味でボクシングをしていた。
この状態でも弱いヤツなら追い払うことができる。
というか・・・この時の感情は「コロしたるっ!!」であった・・・。
「やったんどコラァ~かかってこいや~」等と喚き散らす俺。
痛みと暗がりで相手はよく認識できできない・・・が、どうやら犯人は1人のようだ。
その時・・・相手がいきなり走りだした。
「逃げるつもりか!?逃がすかぁ」などと考え相手を追いかけた。
後頭部の痛みは激しい怒りのせいか忘れてた。
走る俺。相手は意外と足はが遅い!段々と相手との距離が縮まる。
相手はかなり小さい。ってか小さいどころではない。もしかして子供??
いきなり前方から鉄パイプが飛んで来た。
しかし走りながら投げた鉄パイプが命中するワケもなく俺の横で「カコーン」と音を立てる。
これで殴られたのか!!??一瞬ゾっとした・・・。
相手との距離が手を伸ばせば届く距離になった。この時ハッキリと認識した。
相手は女だ!しかも小さい・・・子供かも??
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これがのちに俺の彼女となる華との出会いだった。
どこの世界に初対面で、後頭部を鉄パイプにより殴打された彼氏がいるだろうか・・・。
相手が女といっても興奮状態の俺は止まらない。
「待てやぁ~!こんボケがぁ~!!」と喚きながら髪の毛を掴んで振り回す。
走る相手の髪の毛・・・一瞬全部抜けてしまうか!?と思ったが相手は痛みのためか足を止めた。
「離せやぁ~!コラ~」などと抵抗する声はまさに女。そして子供の声だった。
しかし怒り狂う俺はその声を無視して大外刈りを決めた。
軽い!相手は簡単に倒れる。背中を強打したようだ。
「ぅぐ・・・」と声が漏れる・・・。
俺は構わずマウントの体勢で胸倉を絞り上げる。
「お前・・・コロしたるどぉ~」
こんなことを言いながら俺は薄ら笑いを浮かべてたと思う・・・怒りのあまり理性は吹っ飛んでた。
この時相手の顔を初めて正面から見た。
一言で言えばかわいく綺麗な顔立ちだった・・・。
目は大きく少しキツイ感じ。髪は長めで色白。
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その他のパーツも整っていた。しかし顔は幼い。小学生だろうか!?
その童顔の顔で精一杯俺を睨みつける。
痛さと怖さで目から涙をこぼしそう・・・。
しかしそれを堪えて必タヒに俺を睨みつけてくる。
「敵に襲われ絶命寸前の小動物みたいやな・・・」などと思っていた。
必タヒにバタバタと抵抗する女。
しかし俺に胸倉を締め上げられているので上手く声が出ない。
「はな・・・せ・・や」と喋る度に締め上げる。
すると息ができなく苦しかったのだろう。目からポロッと涙が落ちた。
一瞬にして俺は「なにしてんだ?」と思い、この子供のような女が可哀想になった。
手を緩める。しかしマウントの体勢は崩さない。逃げられるからだ。
女は素早く涙を手で拭った。俺に見られたくないのだろう・・・。
しかしバレバレだ。なんかそんな仕草が少し可愛かった。
「子供のくせにツッパリやがって」っといった感じだろう。
「立てや。K察いくど」そう言って女を起こしてあげた。女は急に大人しくなる。
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「K察いきたなぃ・・・」ボソッとそう呟いく。
俺は「仕方ないやん。悪いことしたらおまわりさんに捕まる」
「これ社会のルールやぞ」といいながら腕を引っ張る。
イヤイヤと抵抗して足を動かさない女・・・。
少しマズイ。ここは人通りは少ないが通行人が見たら
「強引に子供をナンパする口リコン男」だろう。
俺は「ちょっとそこの公園行こう」と言って女を公園のベンチに座らせた。
後頭部が痛い・・・痛みが復活していた。俺は女に聞いく
「なんであんな事したんや?見ず知らずの人間襲うなんて?」
女は意外と素直に話出す「お金が欲しかったねん・・・」
絶句。この年でゴートウ生涯かよ・・・。
「なんで金欲しいねん?」
「・・・・」
女は黙り込む。この時俺は考えていた。この女をK察に突き出すかどうか?
「ぅぅ・・・」急に女が背中に手を回してか細い声を上げた。
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俺の大外刈りで強打した背中だ。
「大丈夫か?痛いんか?」
女は唇をかみ締めながら「痛なぃ・・・」と言った。
どこまで気が強い子供なのだろう。
「なんでK察行きたくないんや?」
「親に連絡される・・・し」
俺はこの時に思った。いくらとんでないガキだろうが所詮親が怖い年頃だ。
許してもいいかな・・・なぜかそんな思いがよぎってきた。
「お前名前はなんていうんや?」俺は聞いてみた。
「・・・・華」
嘘かもな?おそらく嘘やろな・・・そう思ったが確かめる術がない。
この年だと免許も持ってないことは確実だ。
「何歳や?」
「・・・14」
最悪小学生かと思っていた華は中学生だった。
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さすがに小学生が鉄パイプでリーマンの後頭部をナグることはないか・・・。
いやいや中学生でもない話だ。
「お前学校行ってんか?」そんな質問をした瞬間。
「ぅ・・ぅっ・・ぅぅ・・・」突然華が涙をポロポロ流しだした。
なに?今の質問のなにが涙腺を刺激したのだ?
意味は分からないが泣き顔は子供のそれだった。
俺はもうこの時、完全にK察に突き出す意志は消えていた。
「泣くなよ」そんな言葉まで掛けていたのだ。
「分かった。K察はやめとこう。その変わりお前の自宅の番号教えてくれ!
親御さんにこの後頭部の傷の慰謝料は請求させてもらうかもしれん。
その代わりK察はなしや。それでええか?」
少し考える華。目は泣きすぎたためか真っ赤だ。
「それも・・・ぃや・・・やねん」
「・・・・・・・」
本当は慰謝料を請求するつもりはあまり無かった。
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しかし社会的責任を負わす意味で脅しを掛けたのだ。
それでも嫌というのなら仕方ない。もうあとの判断は華に委ねよう。
14歳といえば子供かもしれないが、自己責任くらいは考えられる年だろう。
「んじゃお前は、俺の後頭部をいきなり殴って傷を負わせた責任をどう考える?」
「・・・・・・」考え込む華。
そして出した答えは「うちが自分で慰謝料を払う。家の番号は嫌や・・・うちの携帯教える」
そうきたか。子供の発想だがそれでもいい。少しは反省している様子だ。
それに華の番号でも知っておくことは大切だ。
この後「脳内出血してました」などの展開を迎えたら
さすがに連絡先を知らないわけにもいかない。華の携帯から俺の携帯へ着信をさせた。
これでこの番号は少なくとも嘘じゃない。解約されたら終わりだが・・・。
「もう帰ってええわ。遅い時間やし」
俺がそう声を掛けると華はノソノソとベンチから立ち上がり
出口の方へ歩いていった。その姿はすごく寂しそうだった。
俺は公園のベンチに座って休憩していた。
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興奮が冷めると同時に、華に見舞われた一撃が痛み出す。
夜の公園でボーっと考えていた。
俺の中学時代はいつも勉強もせず友達と遊んでた。
野球したりゲームしたりして。なんで華みたいな寂しいガキがいるのだろう?
これが現代の中学生なのか?そんなことを考えながら後頭部を触っていた。
すると・・・公園の入り口に人影が見えた。
近づく人影。小さい・・・女??華だった。
「お前・・・どしたん?」
「・・・・・・」
華はなにも話さず俺の前に立っている・・・。
「報復にきた!?」一瞬脳裏にそんな思いがよぎる。
ナイフでも出された日には最悪だ!!
すると華はゆっくり右手を差し出す。そこにはハンカチが握られていた。
「これで・・・血拭いて・・・」
そういって華はポカーンとする俺の膝にハンカチをそっと置いた。
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正直驚いた。華は俺にハンカチを渡すと走ってまた出口に向かった。
ハンカチ・・・「あのガキも意外に女の子やなぁ~。」そんなことを思った。
それが華との出会いだった。しかしこの出会いがとんでもない結果を招く。
華は俺が手に負える女ではなかった。
規格外のモンスターだった(少し大袈裟かな)
【第二部USJ窃盗ジ件】
次の日は起きたら後頭部がズキズキ痛んだ。休みで良かった。
ベットでボーっとそんなことを考えていた。
昨日自分で応急処置したガーゼが剥がれている。
やっぱり後頭部の治療は自力では難しい。
しかし病院にいくほどでも無さそうだ。それに病院嫌いだし・・・。
午前中はボケーっとTVを観て過ごした。
そして考えていた。華のことを・・・。
どうするか??慰謝料を請求するか??
答えは既に出ていた「もうええか・・・」である。
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電話に出るかな・・・?俺は華に電話を掛けることを考えた。
「もう慰謝料もいらない。この件は忘れてもよい」
そのことを伝えようとしたのだ。夕方華の携帯に電話をしてみた。
おそらく出ないだろう。そんなことを思っていた。
それならそれで良い。それで終わりにしよう。
電話のコール音を聞く。1回2回3回・・・。
やっぱり出ないかぁ~。そう考えていた矢先!!
「はい・・・」昨日のガキの声だ!
「え・・・と。昨日鉄パイプで頭割られた男やけど」
なんか情けない自己紹介だと思いつつ話かけた。
「うん・・・」華は小さい声で応える。
「もうお前から慰謝料も請求せんし、安心してくれ」華は無言だ。
「それと学校なんてところは行かんでええと思う。
 でも行ったら思い出はできる。年とってからなかなかええもんやで」
相談もされてないのに暴走する俺。
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なんでそんな事を話したのだろう・・・おっさんになった証拠だ。
すると華は意外に素直に「ぁりがとぅ・・・考えてみる」と返事したのだ。
「それだけ言いたかっただけ。ほんじゃ」そう言って電話を切った。
この時はこの件が全て終わり、華のこともいづれ忘れると思っていた。
事実その後は忘れていった。傷の手当てをする度に思い出す程度だった。
傷が癒え手当ての必要が無くなると同時に華のことは完全に忘れた。
しかし・・・1ヶ月後、なんと突然華から電話が掛かってきたのだ!
華の番号は残していた。というか消すのが面倒で残っていたのだ。
日曜日に洗い物をしていたらら着信音が鳴る。
着信番号をみると「はな」と表示されていた。
「はな・・・??はて??」と一瞬思い出せずにいた。
それくらい華のことは忘れていたのだ。
「はな・・・はな・・・ああアイツか!!」
思わず手が後頭部を摩る。もう痛みも傷も完全に消えてた。
しかし・・・あの華がなんの用事だろう??恐る恐る電話に出てみる・・・。
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「もしもし??」
「・・・・華やけど・・・覚えてない?」
この声は間違いなくあの時のガキ。
「いや。覚えてるで」
「ぅん・・・。」
沈黙・・・・俺は聞いてみた
「どしたん?なんで電話掛けてきたのや?」
「ぅん・・・」華は少し緊張している様子。
「傷はどんな調子??」
意外な言葉が飛んできた!!少し驚く
「ああ~。完璧に治ったわ。なんや心配してたんか?」
「ぅん・・・」
俺は正直少し可愛いなぁ~っと思った。
兄貴2人しか兄弟のいない俺は、妹がいたらきっとこんな感じなのだろうと思っていた。
その矢先!突然華が聞いてきた。
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「ぉ前・・・名前なんてぃぅのん?」
絶句した。中学生が29歳に対してお前・・・。
その前に加害者がヒガイ者に対してお前・・・。
「俺は1っていう・・・」
「あのな、あんまりお前って言葉はやめといたほうがいいぞ!俺一応年上やしな・・・」
なるべく諭す感じで言ってみた。最近の中学生はこんなことも分からないほどアホなのか??
「ごめん・・・」
華は意外と素直に謝る。これが俺にゴートウ生涯をしたガキとは思えない。
「そんで。今日はなんで電話してきたんや?」
それが1番知りたいところだ。華はもじもじしながら話し出す。
「・・・ぅん・・・えとなぁ。1ってUSJって行ったことある?」
呼び捨てかぁ。それはもはや言うまい。
しかしUSJ!!??なんでUSJ!!??
「USJは3回くらい行ったことあんで」
「あんなぁ。うちUSJ行ったことないねん。・・・ぇぇなぁ~1は」
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これは!?これはもしかして!?俺をUSJに誘っているのか?
1ヶ月前に鉄パイプで頭をカチ割り
さらに盗みをはたらこうと考えた相手を誘っているのか!?
「なんや華。もしかしてお前USJに行きたいんか?」
「うんっ!!」
この時初めて華の明るい声を聞いた。可愛いと思った(子供としてね)俺は更に聞いてみた。
「もしかしてやで。もしかしてやけど・・・俺を誘ってんの??」
華は少し間をおいて答えた。
「ぉわびしたぃしぃ。。。だからUSJ・・・」
後頭部殴打のお詫びがUSJ・・・。
「まぁ中学生なんてそんなもんか?」
そう考えていた。俺は言った。
「んじゃ一緒に行こか?USJ」
華はこれ以上にないといった嬉しそうな声で
「うんっ!!」と答えた。
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約束は2週間後の日曜日にした。
その日俺は財布に金が無かったので近所のコンビニで現金を下ろした。5万円。
華は俺に対するお詫びと言ったが、まさか中学生に出してもらうワケにはいかない。
USJの最寄り駅で昼12時に待ち合わせ。本当にくるのか?少し不安だった。
改札を出ると華はいた。
正直顔は忘れかけていたが、そこにいたのは間違い無く1ヶ月半前に俺を襲撃した女だった。
しかし雰囲気は全然違っていた。着てる服装はまさに厨房の女の子。
ドルガバのシャツにスパッツ。ラインストーンが入った靴・・・子供だった。
一緒に歩くのが少し恥ずかしかった。
でもその子供っぽい服装に安心したのも事実だ。普通の子なんだ。
そしてこういうカッコしていれば普通に中学生として十分可愛い。
「久しぶりやな!」
華は少し気まづいのか恥ずかしいのか目を合わせずに「ぅん・・・」と答えた。
俺は「飯食った?」と聞いてみた。
華は「食べてへん・・・」と答えた。
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「飯食べようか?」しかし華は
「え~~!!早くUSJ入りたい!!遊んでから食べよ!!なっ?なっ?」と急かしてきた。
本当に妹ができたみたいで可愛かった。
「OK!んじゃ行こうかぁ~」
そういって入場ゲートに歩いて行った。入場券は当然俺が買った。
本来なら華が俺に対するお詫びのはずだったが中学生だし良い。
華は「ぁりがとぉ~。めっちゃドキドキすんな~ジュラシックパーク行こなっ♪」
などとはしゃいでいる。なんかそれでいいような気がした。
久しぶりのUSJは客が少なかった。
昔来たときはもっと活気があったような気がしたが・・・。
「ET」「バックトゥザフューチャー」「バックドラフト」
そして華待望の「ジュラシックパーク」「ジョーズ」
全て華はリアルタイムで観ていないんだろなぁ~と考えながら俺ははしゃぐ華を眺めていた。
このUSJで初めて「はな」の字を教えてもらった。
「華」という名前は気の強い彼女にピッタリの名前だと思った。
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華はまるで子供のように喜んだ。観ているこっちまでなんだか幸せになる。
なんか分からない「角みたいなのが生えたカチューシャ」を欲しそうにしていた。
買ってあげると喜んでつけていた。
ウッディーウッドペッカーの気ぐるみを発見すると走って行き嬉しそうに抱きついていた。
やっぱりまだ子供なんだな。
しかし・・・そんな可愛い女では無かったのだ!華は・・・。
1ヶ月半前、俺を鉄パイプで殴打し、ゴートウを企てた本性はいま静かに眠っているだけだった・・・。
アイスを買ってあげ、お土産を買ってあげ
結局お詫びどころか俺が全部おごってあげたこの日。
それはそれで全然良かったのだ。
その度に華は喜び「ありがとぉ~。めっちゃ嬉しいわぁ~」と笑顔を輝かせていた。
最後にレストランでご飯を食べ別れの時が来た。
駅の改札。華に切符を買ってあげ見送る。
しかし俺はこの時ほんの小さな違和感を感じていた。
券売機での違和感・・・華はいつまでも笑顔で「ありがとなぁ~」と手を振っている。
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俺も手を振る。楽しかったなぁ。この日1日の正直な感想だ。
もう2度と華と会うこともないだろう・・・。
最初はとんでもないガキだと思っていたけど、素直で可愛いやつだった。
きっと家庭不和が原因で寂しかったのかな?いつか幸せになれるといいな!
帰りの電車に揺られながらそんな事を思っていた。
しかしそんな俺の思いは華にことごとく打ち砕かれる・・・。
帰宅後、どう考えても財布の残金が少ない・・・。
華と遊んだ金は2万5千円程度。どんなに多く見積もっても3万。
それが残金5千円・・・・どういうことだ。しばらく考える。
答えは1つしかなかった。華に抜かれたのだ。
なぜだ?そしていつだ?考えを張り巡らせる。
レストラン・・・俺がトイレに立った時か!
俺は通常トートバックに財布を入れている。
そのバックは・・・席に置きっぱなしだった・・・愕然とした。
金の問題というより今日の華との楽しかった1日を思い出すと悲しくなる。
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華の笑顔を思い出すと裏切られた切なさが沸いてくる。
しかもなぜこんなにすぐにバレる窃盗を・・・??
どう考えても華の思考は理解できなかった。
「もうどうでもいいや」という思いと
「なぜこんなことをしたのか?」という思いが交錯する。
電話して確認するか?いや・・・もう繋がりは断ったほうがいい。
あの女は本物の犯罪者なんだ・・・。双方の思いが存在した。
1度だけ・・・1度だけ・・・電話してみよう。きっと出ないだろう・・・。
今さっき金を盗んだ男の電話に出るわけがない。
常識的に考えて着信拒否だろう。それでいい。それがいい。
出なければ出ないで全て終わりにしよう。
そして万一出た場合・・・。追求してみよう。
電話を掛ける手が震える。異常に喉が渇く。俺はビールを一缶空けてから電話した。
緊張する・・・コール音が鳴る。意外な事に着信拒否はしていない模様。
しかしコール音が鳴るばかり。華は電話に出ない。
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終わったな・・・。裏切られて・・・俺は電話を切った。
俺はボーっとベットに寝て天井を見ていた。
終わったと思ったがさすがに切なかった。
頭を割られ、挙句に財布の金を盗まれた・・・。最悪だな。俺は・・・少し笑えてきた。
目を瞑ってもうこのまま寝てしまいたい・・・
そう思った時。携帯の着信音が鳴った。
相手は・・・そう。なんと華だった。驚きながらも恐る恐る電話にでる。
「もしもし・・・」ヤバい声がかすれてる。
緊張していた。そんな俺の思いとは裏腹に電話を掛けてきた華の声は意外なものだった。
「やほ~♪さっき電話くれたやろ~?ごめんなぁお風呂入ってたわぁ(笑」
「!!!!!!????」え・・・?なにこのテンション??
俺は驚いた。電話が来ただけでも相当驚いたが華は悪びれている様子が微塵もない。俺は絶句した。
「今日めっちゃ楽しかったなぁ~。意外にバックドラフトが良かったなぁ」
「・・・・・・・・・・・・」
「お土産に買って貰ったチョコ食べたで~。めっちゃおいしいでぇ~(笑」
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え・・・なんで?なんでそんなことが言えるの??本当に理解ができなかった。
もしかして俺の勘違い??財布には5万も入ってなかった??
しかし・・・しかし・・・。俺は財布に入っていたATMの利用明細を見た。
確かに5万引き出されている・・・そしてそんなに使っていない。
そんな困惑する俺を尻目にハイテンションの華は
「また連れていってなぁ~。今度は朝からいこうなぁ~(笑」
「・・・・・・・・・」
聞かなければ。確認しなければ。でもどうやって切り出せばいいんだろ??
あまりに黙っている俺を不振に思ったのか華は聞いてきた。
「どしたん?元気ないやん?」
あるわけないやろっ!!しかし聞かないワケにはいかない。
金の問題じゃなく、本当に盗みを犯してこの態度ならこの女は異常だ!根本が腐っている。
俺は華の真意が知りたかった。
「あのな・・・華・・・。気を悪くせんと聞いてな」
「どしたの?」
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華はうろたえる様子が全く無い。
「帰ってきて財布の中身確認したんよ・・・そしたらな・・・・」
「・・・・・・」
「使ってもないはずの金が無くなってんねん」
華が急に黙り込む・・・。
「華が盗んだんと・・・ちゃうよな??」
俺は勢いにまかせ核心をついた。
「違うと言ってくれ!」俺は甘い。甘いかもしれないが
そう心の中で願っていた。
今日の無邪気な華の笑顔を思い出すと華を信じたくなってしまったのだ。
「・・・・・・・・・」
黙り込む華
「違うかったら俺謝る。だから本当のこと教えて欲しいねん」
すると華がおずおずと話出す・・・。
「ぅち・・・」
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「ぅち・・・・・・・」
「ぉ金・・・とった」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
沈黙・・・。2回目か・・・。この女にやられるのは・・・。
俺は本当に甘い。大甘いだ。
公園で貸しえてくれたハンカチも今日も無邪気な顔も全部嘘か・・・。
最近のガキなんてこんなもんか。
人に詫びる気持ちどころか、許した人間に対してこんな仕打ちをするのか。
もういい。これ以上このガキに関わるのはごめんだ。俺は切り出した。
「そうか・・・その金はやる・・・。もういいわ。ほんじゃ」
華は消えそうな声で言った。
「ごめん・・・ごめん・・・」
「いや・・・もうええねん。マジでお前と関わりたくなくなってん」
華は黙り込む
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「ほんじゃ。電話切るわ」
その時!華が突然大きな声で
「待って!1待って!切らんとって」
「なんでや?」
華の思考回路がわからない。
ヒガイ者の俺が終結させようとしているのに加害者の華がそれを阻止する。
「ぉ金返したぃねん・・・。ほんまに・・・ごめん」
俺は返す刀で
「いらん。やる」
すると華は電話口ですすり泣きだした。理解不能。
なぜそんなにあっさり返すのなら最初から盗まなければよいのだ。
「華ひとつ聞いてええか??」
「ぅぐ・・グスグス・・・ぅん」
「盗んだ金でなにが欲しかったん?」
「ぅぐ・・・DS・・・」
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アングリ・・・。ゲーム機かよ。
「明日の夜・・・9時・・・グス・・あの公園で待っとく・・グス」
「・・・・・・・・」
「ぉかね・・返したぃねん」
「・・・まだ使い込んでないんか?」
「・・・ぅん・・グス・・」
「約束は・・・できん。行く約束は・・・せん」
「待って・・・グス・・る・・から」
電話を切りました。
あの涙は嘘泣きなのか?マジ泣きなのか?俺には分からなかった。
会社では仕事が手に付かなかった。行くべきか?行かざるべきか?
金の問題で無い。正直言うと情けない事に昨日の涙は嘘泣きに思えなかった・・・。
更にUSJでの笑顔も・・・。
しかし・・・しかしだ。
俺の今まで生きてきた良識ではその相手から金をとるなんて考えられない。
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しかもバレバレの方法で。夕方には決意が固まっていた。もう1回会おう。
どんな考えを持ち、どんな思いを持って生きている人間なのか?
子供といっても14歳。情もあれば多少の人生観もあるはず。
それを確かめてみたい・・・
俺はその日無理やり残業し時間を潰し夜9時。華の待つ公園に行った。
公園に到着すると華はこの間のベンチにポツンと座っていた。下を向いて寂しそうな姿だった。
この辺は特別治安が良いわけではない。女の子1人はヤバかったなぁ~。などと考えていた。
事実俺も襲撃された・・・。この目の前の華に!俺は近づいて声を掛けた。
「・・・お待たせ」
顔を上げた華。それは意外にも涙でぐちゃぐちゃに泣き腫らした顔だった。
俺は華の横に座った。結構長い沈黙・・・すると華が突然
「ごめん・・・なさぃ・・・」
と言ってクシャクシャになった1万円札と数枚の千円札を差し出してきた。
その手は震えていた。俺はその札束を受け取った。そして聞いた
「DSが欲しかったんやろ?両親に頼むことはできひんかったんか?」
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華は無言で首を横に振るだけ。
「あんな華。お前・・・こんな事を繰り返してたら・・・
 誰からも信用なくなるで、それは分かるか??」
コクンと頷く華。俺はさらに突っ込んで聞いた。
「DSが欲しいってだけじゃないやろ?華が金盗んだ理由」
俺にはどうしても分からなかった。
あんなに楽しかった後に、その時間を共有した相手から金をとる心理が。
そしてその後の電話で平気で笑っていたことが。
「ぅち・・・ぅち・・・なぁ」
「ぅち・・・なんでか分からへんねん・・・。なんでか盗んでしもてん・・・」
「1回目に俺を殴った時もか?」
「ちゃぅ・・・あの時はぉ金が欲しかったねん・・・。
 でも今回は・・・自分で分からへんねん・・・。」
そして華は「ごめん・・・ごめん」と呟きながらまた泣き出した。
これはもしかして「心の病」というやつか?
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しかし無意識に人の金をとる「心の病」なんてあるのか?
俺の周りにはいなかったので解らなかった。
でも・・・でももしそうなら・・・。原因がどこかにあるはず。
「華は最近学校行ってんのか?」
無言で首を横に振る。
「んじゃ・・・友達はおるんか?」
これも無言で首を横に振る。
寂しいのか?構って欲しいのか?金をとることによって?俺は質問を続けた。
「お父さんは・・・どんな人なん?華の」
すると消え入りそうな声で答える。
「ぉとん・・は・・ぉれへん・・・」
「そうか。お母さんは?お母さんが働いてんか?」
首を横に振る華。そして・・・
「ぉかんは・・・アル中や・・・。基地外なっとる・・・」
マジでか!!??嘘じゃないだろうな!!??どうやって生活してんだ?この家は?
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「そか・・・」俺は息を吸い込んだ。
この時俺はまたしても大甘だった・・・華の境遇を聞いて同情してしまったのだ。
「華は兄弟おれへんのか??」
兄弟がマトモならまだ救いがある。
そう思った俺だったが・・・・ここで想像を絶する答えが返ってきた。
「弟がぉるけど・・・チャンソリ(シンナーを吸うこと)でラリッって頭いかれとる・・・」
!!!!!弟ということは当然華より年下。小学生かもしれん・・・。
それがラリって頭がいかれてる・・・これが本当に事実なら俺の想像を遥かに超えた家庭だ。
しかしよく考えてみると。そんなもんかもな・・・。
俺には想像を超えた世界であってもそういう世界は存在している。
決して珍しいことじゃない・・・そんなことを考えていた。
俺は華に掛ける言葉が見つからなかった。一言だけ・・・。
「大人になって自立したら、それなりの自由を手に入れる事ができる。あと4年だけがんばれ!」
そう伝えた。華はまた泣き出した。
しかし俺にはどうしてやる事もできひん・・・。
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「帰ろか・・・?」
華にそう言った瞬間、華から信じられない言葉が出た。
「ぁんなぁ・・・1・・・」
「ん?どした?」
「ぁんなぁ・・・・」
なぜかモジモジしている華。
「どしたんや?言うてみて」
「ぅん・・・」そう言いながらハンカチで涙を拭く華。
ハンカチはいつもキチンと持ち歩いてるのね。
「1はなぁ・・・彼女とかぉるん・・??」
そう言って顔を上げた華・・・。
その顔はグシャグシャに泣き腫らした顔だが、とても可愛い表情をしていた。
ドキン・・・気持ち悪いが本当にそんな感じがした。
少し動揺した。いやかなり・・・。
「いや・・・いまおれへんよ」
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華の表情が一瞬明るくなったような気がした。
「ほんまに・・!?」
「う・・・うん」
次の言葉を待つ俺・・・当然そういう展開になるだろうな。どうしよう・・・。
「ぁんなぁ・・・華なぁ・・・」
「1のな・・・彼女になりたいねん・・・」
懇願するような目。一言で言うと可愛い。子供と大人の女が入り混じった魅力だ。
「・・・・・・・・・」
俺は返答ができない。
「俺は・・29歳やで・・・」
意味不明だがこれが根本だろう。俺が厨房なら二つ返事でOKだ。下を向く華・・・。
「それは・・・ぁかんってこと・・・??」
「というか・・・世間的にみてもヤバいと思うし・・・」
「せけんとか・・・関係なぃやん・・・」
そうか!華は厨房か。確かに世間体なんて気にする年齢じゃない。
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「華は15も離れた俺と付き合ってなにがしたいの?話題も合わんで?」
華はポツリと言う
「ぅちなぁ・・・1の彼女になったら。ちゃんとできると思うねん」
「学校もぃって・・・もう悪いことせんようにできると思ぅねん」
これは・・・。心を揺さぶってきた。
「ほんまに・・・学校とか行けるの・・?」
ヤバイ!!流される。この時の俺は華に恋愛感情は無かった。
当たり前である。鉄パイプで殴られた上
つい先日は遊びに行った先で財布から金を盗まれたのだ。信用度も限りなく0に近い。
そしてなにより・・・。この家庭環境にして盗難癖。
口リコンに対する世間の目。確実な爆弾だ。華は。
しかし・・・流された感情はなかなか返ってこない。
その時コテン・・・と顔を俺の肩に倒してきた。可愛い。そう感じざる行為だ。
だたそれは親戚の子供の可愛さに近い。
もう14歳だけど・・・でも俺の肩に顔を傾ける華から感じたのは
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「華は14歳ですでに疲れきってんやなぁ・・・」そんな感情だった。
「華・・・」俺は決心した。
「付き合ってみる・・・?俺おっさんやけど」
華は肩に頭を乗せたまま俺の顔をのぞき込んできた。かなりの至近距離。
「ほんまに・・・??」
瞬きをする表情が可愛い。それに・・・既に女の匂いもする。
「うん。ほんまに」
俺はそう答えた。はっきり言って同情だった。偽善的行為でもある。
俺が彼氏になることで1人の女の子が更正する。大甘な偽善だった。
しかし・・・それが分かっていても、この時は気持ちがそっちに傾いてしまったのだ。
華は「ぁりがとぉ・・・1・・・」と言って目を閉じた。
しかし華はこの後俺の人生を狂わす爆弾と化す。
【第三部いざ華邸へ!アル中母との対面】
14歳と付き合うことになった29歳。
1番考えたのは「果たしてどんな付き合い方」をするかだ。
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こっちは一応社会人だ。会話は噛み合うのか?デートはどこへ行くのか?
これに関しては思っていた程問題は起きなかった。
まず電話。これはほぼ毎日俺から掛ける。
華から掛けてくることもあったが、その時は俺が掛けなおした。
中学生で金が無いのは当然のこと、その金欠でまた窃盗を起こされるのを恐れた。
華との付き合いは終始窃盗との戦いである。
事実この後とんでもない窃盗を起こすが、それは後の話・・・。
電話の内容は華の家庭の愚痴が多かった。
その時は黙って気が済むまで話を聞く。
そして華はこの頃から学校へ行き始めた。
とはいっても2日か3日に1度だが喜ばしいことであった。
華にとって学校は決して楽しい場所では無かったようだ。
しかし僅かにながらできた友達の話を嬉しそうにする事もあった。
そして2日に一度は会っていた。デートと呼べるほどのものでは無い。
仕事帰り例の公園でダラダラと話すだけだ。
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途中コンビニで飲み物やお菓子を買って話をするだけ。
華はこの時間が1番好きだと言っていた。
帰りは必ず定食屋に行った。恐らくであるが華はマトモな食事をしていない。
アル中母の話を聞くと食事なんかどう考えても作っていない様子だった。
華はラーメンやファーストフードを好んだが出来る限り定食屋について行った。
よく分からないが中学生は成長期なはず
栄養バランスの取れた食事をさせてあげたかったのだ。
華は食べ盛りなのか比較的食べたほうだった。
それでも「1これぉぃしぃで。ちょっと食べてみて」と言って俺の皿に自分のオカズを乗せてきた。
そんなことがしたかったんだろう。きっと・・・。
家庭環境のせいか恐らく一般的な中学生より
大人だったと思われる華。しかし大人がついていけないようなツマらない話をする時もある。
「○○先生がめっちゃぅざぃわぁ~。この前もめっちゃムカつぃてんで・・・・」
この手の話は社会人には辛い。
教師も聖職者ではなく1人の人間と知ってしまったからだ。しかし華はまだ子供。
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教師に対して完璧を求めているのだろう。
初めて華とキスをした時は子供っぽくて思わず笑えたのを覚えている。
いつもの公園でベンチに座って話していた時。俺は時計を見た。もう9時だ。
「そろそろ帰ろうかぁ。遅い時間になったし」
華は大抵「まだぇぇやん。どうせぉかんなんもぃわんしぃ」と言う。
帰っても寂しいのだろう。すると華が突然聞いてきた。
「1はキスしたこと・・・ぁるやんなぁ??29歳やし・・」
「うん。あるよ」
華は下を向きながらモジモジし出す。
「そりゃ・・そぅやんなぁ・・・29歳やもんなぁ・・・」
こいつ・・・可愛い。恐らくキスがしたいのであろう。だからそんなフリをしているのだ。
俺は意地悪をする。決してその話に乗らない。すると実に子供っぽい仕掛けをしてくる。
「ぅちなぁ・・。1にプレゼントがぁんねんなぁ・・・欲しぃ??」
俺の目を真っ直ぐに見る華。華は目がすごく綺麗な女の子だった。
「欲しい欲しい」
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俺がそう答えると華はニコッっと笑って。
「ほんなら目ぇつぶってみて」と言ってくる。可愛いヤツだ。
案の定唇に柔らかい感触がする。これが華との初めてのキスだった。
目を開けた俺に華は「びっくりたやろ~??」と聞いてくる。
別にびっくりしながったがそこは話を合わせてあげる。
「めっちゃびっくりしたわ!!」
すると華は嬉しそうに笑う。まだ14歳の子供なのだ。
そして下を向きながら「ぅちなぁ・・。いまのんが初めてのキスやねんで・・・」と言った。
顔が赤くなっていた。多分・・・この時俺は初めて女として華が好きと自覚したと思う。
多分順調に付き合っていたと思う。
華が目指す中学生の恋愛がどのものかは分からなかったけど。
そして・・・とうとうあのジ件が起きる。
いつもの公園で華を話していた時だった。突然華がこんなことを言い出した。
「ぁんなぁ・・・今度ぅちに遊びにこぉへん??」
俺は正直びっくりした。アル中の母親。ラリった弟。
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俺ならそんな家族を恋人に見せたくない。そして・・・俺は会いたくなかった。
華は恥ずかしそうに言った。
「ぁんなぁ・・・ぉかんに紹介したぃねん。1のこと」
紹介!!!!!!!俺は正直引いた。
もちろん華のことは好きやだど・・・親に紹介される段階では間違いなく無い!
でも14歳の華にしたら大人の俺に目線を合わせようとしたのか?
親を紹介するのが大人の付き合い。そう考えていたのか?
それにしてもあんなに嫌っていたアル中の母親を紹介したいなんて・・・。
それにその家にはシンナーボケした弟もいるんですよね・・??
「う~ん・・・。紹介かぁ」それしか出てこなかった。
華は「ぅん。1にきてほしぃねん・・・。あかん??」
俺の目を見てすがる目をする華。華のこの目には弱い・・・。
「弟は全然家かぇってきてないから。ぉねがぃやねん」
そこまで言われたら仕方ない。
「分かった。次の休み華の家いこか!」
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華はニコっと笑う。子供の可愛さがある笑顔だ。
次の土曜に華と駅で待ち合わせをした。いつもより元気な華。
アル中の母親を見せるのがそんなに嬉しいのか?
華の家は木造の平屋だった。
金銭的余裕の無い家庭だと思ってはいたので、そんなに驚くことは無かった。
レトロ感たっぷりのその平屋は路地裏にあり、どこか寂しい感じがした。
「ここやねん」華はそういって玄関を開けた。
「ただいま~」なんて挨拶はしない。
俺に「遠慮せんとぁがって」と言うのみだ。
想像通り家の中は荒れていた。
玄関の靴箱に置かれた植物は見事に枯れ廊下には新聞が詰まれてあった。
そして家の中は少しカビ臭い。玄関から真っ直ぐに伸びる短い廊下。
その奥が居間のようだ。華が入ってゆく。俺も後に続く。
そこには汚い女が座ってTVを観ていた。
昼なのにパジャマ。伸びきったパーマのボサボサの髪。
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タヒんだ魚のような目。ガリガリの体。
半開きの口から見える歯は黄色く、数本欠けているように思える。土色の顔が不気味だった。
>>生活保護じゃね?
答えをいうとそうです。あとは親父の生命保険。
あとは親戚からの借金で食いつないでいたそうです
華はひいき目なく美人の部類に入ると思う。
今は子供なので可愛いと表現したほうが的確かもしれないが
大人になればかなり人目を引く顔立ちだろうと思わせる。
その母親が・・・この女・・・遺伝子を疑った。
次の瞬間華は信じられない言葉を発した。
「おい!コラババァー。お客さん来とるやろがいやぁ~!!挨拶せんかいっ!」
「・・・・・・・・・!!!!!!!!!」
華・・・おま・・・母親がゆっくりこっちを向く・・・。顔が怖い。
すかさずこっちから挨拶をした。
「華さんの友人の1です。はじめまして。」
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母親が口を開いた。そして信じられない一言を発した。
「お前・・・誰や・・・??」
「・・・・・・(いま自己紹介したやん)」
「えと・・・1と申します。突然お邪魔してすみま・・・」
俺が改めて挨拶しなおそうとした瞬間!
「クソババァ~奥で寝とかんかいっ!」
華の怒声がぶった切った。ダメだ。この家庭は終わっている。華の家に来て5分で全てが解った。
母親が奥の部屋へ引っ込む。
華は「座って」と言って俺に麦茶を入れてくれた。
俺は早く帰りたかった・・・。ここは地獄だ。いくらなんでも居心地が悪すぎる。
華は今日「母親に紹介したい」と言って俺をここへ連れてきた。
しかし母親を見るなり怒鳴りちらし奥へと引っ込ませた。
今日来た意味は一体なんなんだろう??
TVを眺めながらボーっとそんなことを考えていた。
すると・・・突然奥の部屋から声がした。母親だ!
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「華~酒持ってきて。酒・・・」
さ・・・酒。アル中ってのは本当なのか!?
華はそんな声を無視してTVを観ている。
すると1トーン上がった母親の声がまた聞こえる。
「華~。酒持って来い言うてるやろ~!」
襖の奥から聞こえる中年アル中女性の声。
かなり怖い・・・それでも華はひたすら無視してTVを観ている。
気まずさに耐えれなくなった俺は華に言ってみる。
「お母さんが呼んでるで・・・」
華は気にする様子もなく
「ほっとぃたらぇぇねん」と言ってTVを観ている。
俺はドキドキしながらただ座っている。
この緊張感には堪えられない!その瞬間!!バーーーン!!!!!!!
いきなり襖が勢い良く開いた!!!そして母親が狂ったように喚いた。
「酒持って来いいうとるやろが~~!!こんガキャ~~!!」
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俺はあまりに突然のことに腰が抜けそうになった。
すると華が「うるさいんじゃ~!!このアル中ババァー!!お客さんきてるやろ~~~」
怒鳴り返す。もう状況が読めない。それに狂った母親も応戦する。
「子供のくせに親に口ごたえすんな~~!!はよ酒持ってこんかい!!」
母親はそばにあったビールの空き缶を華に投げつけた!
こんな・・・こんな無茶苦茶な家庭が本当にあるんだ!!
「好きなだけ飲ましたらぁーー!!アル中で早タヒにせいや!!クソババァ!!」
そういったかと思うと華は冷蔵庫に移動して、手一杯に缶ビールを抱えてきた。
そしてその缶をなんと母親に力一杯投げつけた!!これはマズイ!!
他人の家のことだがさすがに止めに入る。
「ちょ・・・華やめろ。落ち着け」と言いながら母親の盾なる。
興奮状態の華はそれでも尚缶を投げつけてくる。
痛い・・・手に負えない。
華は泣きながら「タヒね!タヒね!タヒね!アル中クソババァー!!」と喚く。
華は手に持ったビール缶全てを投げつけると泣きながら俺の腕を掴んで
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「1行こぅ!!もぅぃややこんな家」と言いながらグイグイ俺を引っ張って行く。
何とか修羅場から生還した俺。もう一度華の家を見直してみる。
これは俺が想像していた以上の家庭だ・・・改めてそう思った。
華はなぜ俺をここへ呼んだのか?それは今でも解らない。
しかし・・・。考えられることは、自分の生い立ちや現状を俺に包み隠さず見せたかったのか?
それが華の俺に対する愛情表現だったのか?
あるいは・・・今日俺が訪ねることを華は事前に母親に話していたのではないか?
「娘の彼氏がやってくる」
その事により、母親に母親としての振る舞いを華は期待したのではないだろうか?
しかしそれは見事に裏切られた・・・俺は隣にいる華のそっと顔を観た。
泣き腫らした目。そして悔しそうに唇を噛む。
「こんな家・・・こんな家・・・ぃやや・・・」
そう呟く華。俺はこの時「華を守ってやりたい!」その思いがこみ上げてきた。
【後編】会社の同僚と飲んだ帰り道→『明日はゴロゴロして過ごすかな~』とか思っていると、ゴチン!!という鈍い音と共に後頭部に痛みが走った・・・

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