【後編】会社の同僚と飲んだ帰り道→『明日はゴロゴロして過ごすかな~』とか思っていると、ゴチン!!という鈍い音と共に後頭部に痛みが走った・・・

【前編】会社の同僚と飲んだ帰り道→『明日はゴロゴロして過ごすかな~』とか思っていると、ゴチン!!という鈍い音と共に後頭部に痛みが走った・・・
【第四部 二度目の窃盗・・・裏切り】
俺は会社に1年下の後輩がいた。吉村だ。こいつが今回の主役である。
俺と吉村は非常に気が合い
仕事帰りも度々飲みに行ったりする仲だった。
(ちなみに華に最初に襲撃された時も吉村と飲んでいた)
吉村は非常に信頼できる人物である。
実は華と付き合っていることは、この吉村にしか言っていない。
やはり世間体もあり人にはなかなか中学生と付き合っているとは言えなかった。
吉村も苦労人で俺は華の窃盗癖について相談したことがある。
「それは難しいですね。正直精神病の類かもしれませんから・・・」
遠慮気味に吉村はそう忠告してくれた。
ある日、吉村が言ってきた。
「1さんの中学生の彼女に会わして下さいよ!」
うむぅ・・・特に断る必要は無い。
3人で食事をするのもまた楽しいかもしれない。しかし問題は華だ。
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あの年頃の女の子が大人と食事をする事は果たして楽しいのだろうか?
その夜電話で聞いてみた。
「ぃぃよ~♪1の後輩さんにぁぃたぃ~」
意外に反応が良かった。よし!3人で飯を食ってみるか!
その週の金曜日。俺と吉村は会社帰りに華と合流し食事に向かった。
吉村は小声で「やっぱり子供ですね。でも可愛いですね」とニヤニヤしながら言ってきた。
やっぱりそうだろうね・・・吉村は年下の女の子相手に上手く話せる男だった。
華が退屈しないように気遣いながら接してくれた。華もそんな場を楽しんでいたように思う。
その店は個室のある洋風居酒屋だった。
俺達3人が個室に入り1時間程度飲み食いをした時。
俺の携帯が鳴る。会社からだった。
「ちょっと会社から電話。外で話してくるわ」
吉村も「僕もトイレに行ってきます」
2人で席を立つ。個室には華が1人残った・・・。
電話を終え個室に戻ると華と吉村が談笑していた。
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その後1時間程度で会はお開きとなった。
そして会計・・・レジへ向かう俺と吉村。華は1人店の外へ・・・。
いつも吉村と飲む時は俺が少し多めに支払う。
先輩だから仕方が無い。その日の会計は1万2000円程度だった。
華の分は当然俺持ち。俺は吉村に言った。
「吉村今日は4000円でええよ~」
「有難うございます~」
そう言いながら財布を覗き込む吉村・・・急に顔色が変わる・・・。
何度も財布を覗き込む吉村。鞄の中を見たりしている。吉村が言った。
「すんません1さん。なんか今日金下ろすの忘れてたみたいで・・・」
「あっそうなん?んじゃ今日は俺が出しとくね」
そういって会計を済ませた。
「すんません・・・・」
吉村はそう言うと頭を下げた。帰り道・・・。華はご機嫌だった。
「おいしかったなぁ~また連れてぃってなぁ~♪」
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「行こう行こう!また3人で行こう~」
酒が入っていてご機嫌だった俺は吉村に華を紹介したことにも満足していた。
これで華と俺との関係を認めてくれた人間が1人できた。
しかし吉村の表情は暗かった・・・なにやら考え事をしている様子だった。
駅で吉村と別れる。
「んじゃ俺は華を送っていくから~気付けて帰れよ!」
俺と華は吉村を見送ったあと、華の自宅がある路線に乗り込んだ。
車内でもご機嫌だった華。今日が相当楽しかったのだろう。
華を自宅の最寄駅で降ろして俺も自分の帰る路線へ・・・。
電車で居眠りをしていた俺は携帯のバイブで目を覚ます。
うん??誰??吉村からのメールだった。
内容は「まだ華ちゃんと一緒ですか?」
俺は吉村にメールを返した。
「もう別れたよ!今は自宅帰る電車やで」
するとすぐに吉村からメールが返ってきた。
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「すみませんが自宅に帰ったら電話頂けますか?」
なんだろ・・・??自宅に戻り早速吉村に電話した。
「どしたんや~?」
吉村は言いにくそうに口を開く
「実は・・・さっき会計の時にですね・・・俺金を忘れたって言ったじゃないですか・・・」
「うんうん」
「俺確実に・・・2万は財布に入っていたハズなんですよ・・・」
俺は血の気が引いた。酔いも一瞬でさめた。
まさか・・・?まさか・・・??
しかし・・・しかし・・・どのタイミングで??あっ・・・・。
「俺の携帯が鳴って、お前がトイレにいった時・・・吉村・・・財布どこに置いてた・・・」
俺の声は震えていたと思う。
吉村は言いにくそうに、しかしハッキリと口調で言った。
「上着のポケットです。上着は・・・・個室に置いてありました・・・」
目の前が真っ暗になる。吉村は続けた。
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「華ちゃんが1人残っていた・・・個室に置いていました」
普通に考えれば吉村を信用するだろう。
当たり前である。数ヶ月前に2度も俺から金を奪おうとした女だ。
しかし・・・しかし・・・俺は全てが信じられなくなった。
なんで・・・?なんで・・・?
「吉村・・・・」俺は声を絞りだした。
「明日まで・・・時間をくれ」
吉村は「はい・・・」と言って電話を切った。
またか・・・また華を問い詰めるのか。
しかし今はあの時と状況が違う。華に対しての見方も変わった。
華の俺に対する想いも十分伝わっている(子供なりの愛情表現だが)
そして今の俺は華を愛している。
その華に・・・その華に・・・聞くのか・・・。
「吉村の財布から金を盗んだのか?」
激しい絶望感が俺の体を貫いた。
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しかし・・・これは俺と華だけの問題じゃない。第三者まで巻き込んでしまったのだ。
俺の大切な後輩まで・・・聞かなければならない。
1社会人として・・・。そして華の彼氏として・・・。
俺は震える手で携帯を握り・・・そして華に電話を掛けた。
怖い・・・正直いま華には電話に出て欲しくない。
しかし不思議なものでこんな時に限ってすぐに出るものなのだ。
「ぁーぃ。華ちゃんやで~♪」
前回俺はUSJでの時もそうだったが華は金を盗んだ時ほどテンションが高い。
カムフラージューのつもりなのか?それとも金を奪い盗った喜びからなのか?
後者だとしたら・・・本物の窃盗犯罪者だ。
俺はなかなか言葉が出てこない。
それはそうだろう。どこの世界に「後輩の金盗ったでしょ?」と自分の彼女に聞く彼氏がいるのか??
「華・・・少し話があるねん・・・」
カラカラの喉・・・言葉がかすれる。しかしコレだけは曖昧にできない。
「ん??どしたん??」
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華は俺の声を聞いてただならぬ雰囲気を察したようだった。
「今日吉村と食べにいった時な・・・」
ヤバイ声が震えている。
「ぅんぅん」
「華は先に店出たけど・・・俺と吉村は会計してたやんか?」
「・・・ぅん」
華の反応が微妙に変わった・・・。聞きたくない。怖い。でも・・・。
「吉村の財布から2万無くなってたそうや・・・」
「・・・・・」
「間違ってたら謝る・・・・」
「犯人は・・・華か?」
頼む違うと言ってくれ!むしろ「なんでそんな事ぃぅのんっ!!」と怒ってくれ!!
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
お互いの沈黙が続く。それだけで華の答えとしては十分なものだった・・・。
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沈黙が1分を過ぎたころ華から口を開いた。
「・・・ちゃぅ。ぅちとちゃぅ・・・。盗ってなぃ」
消え入りそうな声だ。
華はとうとう嘘までつくような女になったのか??俺は言った。
「華のその言葉信じてええんやな?吉村の財布からお金盗ってないんやな?」
華は無言。
「よし!俺は華を信じるわ。自分の彼女やから・・・でもな」
「俺は明日吉村をナグる!大切な後輩やけど・・・華を疑った吉村をナグる!」
「ええよな?華??」
良心があるならば正直に答えてくれ。そういう願いを込めた言葉だった。
すると華のすすり泣く声が聞こえてきた。
「・・・ごめん。ぅちが盗った・・・。ごめん・・・」
終わったな。全てが・・・どこにも希望がない言葉を突きつけられた。
「俺は・・・華は俺と付き合ってから・・・盗みはやめたと思ってた」
シクシク泣く華の声が聞こえる。しかし俺は華を許すことができなかった。
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「華も言うたよな?俺と付き合ったら盗みやめるって・・・」
「俺と付き合ってからも・・・人の金盗んでたんか??」
華はすすり泣く声で絶望的な言葉を浴びせる。
「・・・ぅん」
俺は続けて聞き出してみる
「何回くらい?何回くらい盗んだ??」
「じゅ・・10かぃ・・くらぃ・・・」
10回・・・。そんなに・・・。よく今まで捕まらなかったものだ。
華は俺と付き合ってもなにも変わっていなかった。
表面上は普通の女の子に戻っていたが・・・中身はなにも変化していなかった。
「初めて俺と会った時みたいに・・・人を襲って・・・ゴートウみたいなことはしてないよな??」
少しでも・・・少しでも希望が欲しい。
そういう願いから生まれてきた言葉だった。
しかし・・・華は答えない。待っても待っても答えない。
まさか・・・。俺はついに華に対して初めて怒鳴った!
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「答えろや!!華っ!!」
涙声で華は答えた。
「・・・それも・・・やった・・・」
やっぱりゴートウまでやってたか・・・俺は呆れた。もうなにもかも終わりだ。
「分かった。吉村には俺から2万返しとく」
泣き続ける華。俺は間髪入れずに続けた。
「もう華とはおしまいや」
華は「ぃややーーー!!そんなんぃややーーー!!」と言いながら
激しく泣き出した。
「1ぃややーー!!そんなんぃわんとってぇぇ!!」
「ぅちもぅ人のぉ金盗れへんからーー!!」
「学校もちゃんとぃくからーー!!」
「ぃややねん。1と別れるのぃややねん!!」
「ぅちちゃんと謝るからーーー!!」
「許して!ぉねがぃやから許してーーー!!」
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「ぅち・・ぅち・・頑張ってぇぇ子になるからぁーー・・・」
胸が痛んだ。悪いのは華だけではないと知っている。
家庭も悪い。あの母親も悪い。でもでも・・・。
「悪いけど・・・もう無理!!」
俺はそう言って電話を切った・・・。
切る間際の華の「ぃややぁーー!!」という泣き声は耳から離れなかった・・・。
電話を切ったあと俺はベットでめを瞑った。もう何も考えたくない。
華に裏切られた・・・その思いが頭の中をグルグルと駆け巡る。
華からはその間、何度も着信があった。マナーモードに切り替えて無視した。
メールも何通も来た。
「ごめんなさぃ・・」
「もぅせんから・・」
「ぅちと別れるなんてぃぅんやめて・・」
メールを見て同情はした。しかし・・・やっぱり俺には
無理だと思った。若干14歳でゴートウ生涯を起こす女・・・。
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俺には無理だ。彼女の人生を背負うことなんてできない。
俺はビールを一気飲みして眠った。
次の日俺は吉村を休憩室に呼び出した。
昼休みまでこの場所には人がくることは無い。俺は吉村に深々と頭を下げた。
「申し訳ない。やっぱり犯人は華やった。この通りや。ごめん」
吉村はそんな俺を見て
「頭上げて下さい。1さんが悪いわけやないし・・・」
「いや。俺の責任や。アイツを信用してお前に会わせた俺の責任や・・・」
そして俺は財布から2万取り出し吉村に渡す。
「受け取ってくれ。ほんまにすまんかった・・・」
吉村はためらいながらも
「そんじゃ・・・受け取っておきます」
休憩室に重い空気が流れる・・・吉村はわざと明るい声を出した
「さぁ。1さん仕事に戻ってがんばりましょう!!」
俺は「うん・・・」と言って2人で休憩室を出た。その時吉村が俺に言った。
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「1さん。やっぱりあの子の窃盗癖は病気の類やと思います」
「このままやと1さんの人生が狂います・・・・別れたほうがいいと思います」
吉村の言葉が胸に響いた・・・。
【第五部 吉村まさかの裏切り!華の暴走】
それから1週間は引っ切り無しに華からの着信があった。メールも山ほどきた。
「もうしなぃから・・・」
「ごめんなさぃ・・・」
「許して・・・」
「別れないで・・・」
ほとんどがそんな内容だった。俺は電話もメールも全て無視した。
疲れていた。怒っていた。そして・・・。華が怖かった。逃げたかったのだ・・・。
1週間するとパタリと華から電話もメールも来なくなった。
そうなればそうなったで心配ではあった。
なの小さい体で家にも帰らず1人夜の街を歩いている・・・。
そんな華を想像するとさすがに心配になった。でも俺は華との連絡を絶った。
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俺にあの子を更生させることは無理だと悟ったからだ。
そんなある日俺は会社内での変化を感じとった・・・。
皆が俺を避けてないか??確実に周りの空気は変わっていた。変によそよそしい感じ。
そして俺が仕事の話をすると明らかに無視する者まで出てきた。
おかしい・・・。なぜだ?この頃から吉村ですら俺を避けるようになっていた。
飲みに誘うといつもなら「3軒はハシゴかましましょう!!」とノリのいい吉村が
「今日は用事があって・・・」そう言って逃げるように俺から離れる・・・。
毎回・・・毎回・・・。さすがの俺も吉村に避けられていることを悟った。
もしかして・・・華との事がバレている??
29歳のリーマンが14歳の女子中学生と付き合っている
(正直この時は微妙な関係。別れているともいえない状況)
事が会社にバレた・・・??俺は内心焦った・・・焦りまくった・・・。
そりゃそうだろう。俺が華と付き合う前に1番ネックになったのが「世間体」
俺だって周りにそんな人間がいたら白い目で見るかもしれない・・・。
しかし・・・しかし・・・華との関係がバレる筈が無い。
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俺は会社の人間に華との事は話していない・・・。
誰一人として・・・・。いや・・・・。吉村以外には・・・。
疑念が確信に変わるのに大した時間は掛からなかった。
11時ごろ休憩室に入ろうとした瞬間だった。
通常この時間の休憩室には人がいない。
俺は自販機でコーヒーを買おうと休憩室のドアノブに手を掛けた。
すると・・・中から女子社員3~4人の声が聞こえる。
「マジで~?あの1さんが中学生と~!?」
「それって口リコンやん。キモーw」
「援交かな~??」
「なんか晩御飯食べさせてるみたいやで~w」
俺はドアノブを握りしめながら凍った!やっぱり華との付き合いが全てバレている!!
そして決定的な一言が!!
「しかもその中学生って人の金とるらしいでぇ~」
目の前が真っ暗になった。全てが終わった。
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口リコン・・・最悪それならまだいい。人の性癖だ。ほっておいてくれ。それで済む。
しかし・・・。1社会人の彼女が犯罪者・・・これは世間が・・・会社が俺を許す筈がない。
「しかもその中学生・・・・」
女子社員が続ける。
「吉村さんのお金も盗ったらしいよ~w」
確定・・・この件は吉村しか知るはずが無い。
吉村に裏切られたのか・・・あんなに信頼していたのに・・・。
何度も何度も飲みに行っては2人で楽しんだ仲なのに・・・。
俺は正直いって華に裏切られた時よりもショックを受けていた。
吉村とは付き合いの長さが違う。約6年の付き合いだ。
会社を離れれば先輩後輩の関係ではなく「親友」そう思っていた・・・。
それから会社内は地獄となった。大人社会にイジメはある。
無視。陰口。冷たい視線。それも耐え難いものだった。
吉村は平然と仕事をしている。しかし俺から吉村に近づく事は無かった。
吉村も徹底的に俺を避けた。俺と吉村の関係は華によって終焉を迎えた。
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吉村に対しての怒りは確実にあった。殴ってやりたいとも思った。
しかし・・・。そんなことをしたところで所詮俺はただの口リータ・・・。
会社内での立場が悪くなるだけだ。
それに吉村じゃなくても同じことをする人間はいるだろう。
それが世間の見る「中学生と29歳の恋愛」だと思う。
俺は段々鬱になっていき会社に行くのが嫌になってきた。
華が吉村の金を盗んで1ヶ月が過ぎていた。
俺と華の連絡は皆無になっていた。もちろん華のことは毎日思い出す。
「また人様の金は盗んでいないか?」
「学校には行ってるかな?」
「飯はちゃんと食ってるかな?」
「まさかK察に捕まってやしないか?」
色々考える。しかし・・・この時の俺は
自分の会社での立場を考え心の余裕は皆無だった。
そんなある日・・・俺は会社にいると吐き気を覚えるようになり
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早退して部屋のベットでゴロゴロしていた。
「もう会社辞めなあかんなぁ・・・」
そんな事を考えていた。その時!メールの着信音がなった。
誰だろう??表示された名前を見ると・・・それは華からのメールだった。
華・・・。どうしたんだ一体。
この時、華との関係は終わっていた。俺の認識では華と別れていた。
その華からのメール・・・なんの用事だろうか??
メールを開く。俺の目に飛び込んで来た文字。
「今からタヒぬ」
え・・・??「タヒぬ??」
驚いた。なんでタヒぬの?意味が理解できない。
しかしこのメールを送りつけてきたからには俺に何かを求めてきているのだろう。
俺が散々華を無視し続けたことに対する「脅し」??それとも華なりのSOS??
それともヘンヘルにありがちな構ってちゃん行為か??
なんにしてもこんなメールを送られて平気ではいられない。
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本当にタヒなれたら・・・。困る・・・。
いや・・・困るというより。華がタヒぬなんて嫌だ!!
俺は華の携帯に電話を掛けた。出ろ!早く出ろ!!
しかし華は電話に出ない。何度も何度も掛け直す。
まさか・・・まさか・・・。既に華はジ殺したのか??
しかし10回程度掛け直した時、華が電話に出たのだ。
「・・・ふぁぃ・・・」
久しぶりに聞いた華の声。
しかしそれは寝起きのような・・・酔っ払ったような・・・そんな声だった。
「華??華??」
俺は必タヒで呼びかける。
華はボーっとした声で「ふぁぃ・・・1・・なん??1・・・??」と答える。
華のこの反応。これはどんな状況を意味してるのか?
俺は聞く。声が大きくなる
「華いま何してんのや??答えろっ!!」
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すると華がグスグスと泣き出した。
「ぅん・・・なんもして・・なぃ・・。ぅち・・・ぅち・・・」
うちなんだ???
「・・・ぅち・・1とぁぃたぃ・・・ねん」
「お前酔ってんか?ジ殺とかしてないか??それ答えてくれ」
「・・・ぅち。お酒飲んでなぃ・・・」
華はそう答えるものの、それならなぜここまで呂律がまわっていないのか?
俺は優しく聞いてみた。
「華はいまどこにおるんや??」
すると華はシクシク泣きながら何かを考えている様子。
「ぅち・・はぁ・・ぃま家にぉるでぇ」
この状況ではラチがあかない。俺は華に言った。
「華。今から家出れるか?いつもの公園に来れるか?」
すると華は急に泣きやんで
「1・・・ぅちとぁってくれるのん??1とぁぇるのん??」
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「うんうん。会う。だから今から出てこれるか??」
「ぅち・・・1とぁぇるんや・・。ぁぇるんや・・・」
どうにも要領を得ない。
「せや。華と会うからあの公園に来てほしいねん。これるか?」
すると華は「ぅち公園ぃける・・・。1とぁぅ」
よし!俺は電話を切るとすぐさま家を飛び出した。
例の公園までは華の家からの方が圧倒的に近い。
しかもあの公園は会社にも少し近い。会社の人間には会わないだろうか??
そんなことを考えながら電車に揺られる。もう日が暮れてきた。
駅に着くまでの時間がもどかしい。駅の到着し華の待っている公園まで走っていく。
しかし・・・。華はいなかった。
華が家にいたとすれば十分についている時間。俺はベンチに座って華を待った。
携帯を掛けてみるが一向に出ない。待つしかない・・・。
公園に到着して30分ほど経った時入り口に小さな人影が見えた。
フラフラしている・・・。華だ!!俺は走って華の元へ駆け寄った。
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「華!!」そういって駆け寄る俺。
華は痩せていた。1ヶ月前と比べ物にならないくらいに。
顔色も悪い。青白くすらある。その時強烈な臭気が鼻を突いた。
華から発せらている刺激臭・・・。間違いない。シンナーだ!!
華は俺に話掛ける。
「1・・・ぅち1にぁぃにきたで・・・。1にぁぃたかったんやで」
涙目で俺を見る華・・・しかし・・・。
「華お前ラリってんのか?」
「ぅち・・ラリってないよぉ・・・」
「嘘つくな!シンナー臭いねん!!ラリってないわけなぃやろ!!」
すると華は地面に座りこんで泣き出した
「ぅちは・・・1にぁぃたかっただけやねんーーー!!」
そういって地面に寝転がってしまった。
「華!!華!!」
呼びかけても反応がない。地面でグッタリしている。抱きかかえて呼びかけてみる。
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「華!!華!!」
それにしてもシンナー臭い。吐き気がする臭気だ。揺さぶってみるが反応はない。
なんだろうこれは?ラリって気を失っているのか?
寝ているのか?これは深刻な状況なのか?なにも分からない。
しかし息はしている・・・安心はするが危険な状態かもしれない。
まさか病院に連れていくこともできない。
シンナーがバレるに決まっているし医者にバレた場合
どういう華がどういう状態になるのかも想像できない。
とりあえあずベンチに寝かせることにた。30分ほどして華は目を開けた。
眠っていたのか?とりあえずホッとした。
「華・・・分かるか?俺やで1やで」
呼びかけてみる。すると・・・
「ぅん・・・わかるで」
反応が返ってきた。
「お前なんでラリっとんや?めちゃくちゃシンナー臭いぞ」
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「ぅちなぁ・・・弟の部屋にぁったなぁ・・・シンナー吸ってもてん・・」
そう言うと華は俺の膝に頭を乗せてきた。
「ぅちなぁ・・・1とぁぃたかって・・・。寂しくて・・・。シンナー吸ってもてん」
胸を締め付けられる言葉だ。
「ぅちはなぁ・・・。頑張って人のぉかね盗るのん・・・やめたねん」
「もぅ人のぉ金とってなぃでぇ・・・」
俺は涙が出てきた。あの最悪の母親。最悪の家庭環境。華は14歳の子供だ。
でも子供は子供なりに必タヒに現状を打破しようと頑張っていたのだ。
「華・・・ごめんな・・・」
そういって華を頭をそっと撫でた。
「ぅち・・・がんばったやろ・・・?」
「うん。頑張った!」
俺は涙を流しながらそう答えた。
華はだんだんと正常に戻ってきた。まともに話せるようになってきた。
「飯はちゃんと食ってんか?」
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「学校は行ってんのか?」
「母親の様子はどうや?」
俺は気になることを質問する。華は華なりの言葉で一生懸命返してくる。
もう華はあの家に帰さないほうがいいかもしれない。そんな思いが沸いてきた。
しかし・・・。どんな方法があるのだろうか?
施設・・・しかし華には一応ではあるが親もいて家もある。
そんな子供でも引き取ってくれるのか?
俺はその辺の情報に疎い。全く分からない。
それに審査があるだろう。そうすれば華の今までの生活や犯罪が明るみにされるに違いない・・・。
そしてなにより・・・。華がそんな施設に自ら入るとは思えない。
ネットで調べよう。なんか解決方法があるはずだ。役所にも聞いてみるか・・・。
そうこうしているうちに夜の8時ごろになった。今日は一旦華を家に帰そう。
「華・・・。今日はもう遅いから家に帰りやぁ」
すると華は俺のシャツを掴んで
「ぃやや!ぃやや!!ぅち家にかぇりたない!!」
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そう言って駄々をこねる。いくら説得しても華は聞く耳をもたない。
仕方がない・・・。この方法だけは今までためらっていたが。
「俺の家に来る・・・か?」
すると華は笑顔になって
「ぅち・・・1の家にぃってぇぇのん?」
「ああ。そのかわり明日はちゃんと家に戻るんやで?」
「ぅん。わかった」
そして電車に乗って華を自宅に連れていく。
途中コンビニで適当な食事が買った。華に何か食べさせなければ・・・。
俺の部屋は1ルーム。8畳あるが狭い。
華は俺の家に入ると「綺麗にしてるなぁー」と関心していた。
俺は割りと綺麗好きである。
そして「1の匂いがするなぁ~この部屋」そう言って笑っていた。
俺は華にコンビニで買った弁当を食べさせた。
あまり食欲は無かったが、それでも旨そうに食べていた。
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「華・・・一応お母さんに連絡しとき」
俺は一応社会人。29歳だ。それなりの常識もあるつもりだ。しかし華は断固拒否
「心配なんかしてないからぇぇ。電話なんかしたらまたケンカになる・・・」
それもそうかもしれない。
あの母親だったら娘の心配もしないで酒を飲んでいてもおかしくない。
それ以上無理強いはしなかった。
俺は華に自分のTシャツとパンツを貸して風呂に入らせた。
シンナー臭くてたまらい。華が風呂に入っている時に考えた。
布団1組しかないし・・・俺はどこで寝ようかな??
風呂上りの華は「やっぱり1の服はぉぉきぃな~」と言って
ブカブカのTシャツに身を包んでいた。
やっぱり子供だな。そう思うと無性に華が可愛かった。
俺も風呂に入った。また金ぬすまれるかな?
そう考えないことも無かったが俺は華を信じることにした。
ってかここで金を盗まれたら、気づかないフリをしてその金をあげよう。
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どうせ大した金額でもない。そう思っていた。
風呂上り華とTVを観てジュースを飲んだ。
華は久しぶりにリラックスした様子で楽しそうに笑っていた。そろそろ眠くなってきた。
「華は俺のベットで寝ていいから。俺座椅子倒して寝るわ」
華は俺のベットにもぐり込むと嬉しそうな顔で
「ぅちベットなんかで寝たことぁんまりないねん」
「1も一緒に寝よ」
そういって俺の腕を引っ張ってきた。
「ええわ。シングルやから狭いし」
そういって俺は自分の寝床の準備を開始した。
華は嬉しそうに「大丈夫やて!ぅちちいさぃから♪」
華は強引に俺をベットに引き寄せた。
口元まで掛け布団を被って俺の顔を見ている。嬉しそうな華の表情・・・。
俺は華と寝ることにした。華はそれからも色々と話しかけてきた。
「ぅちほんまにもぅ人のぉ金とってなぃで」
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「またちゃんと学校ぃくからね」
「ぅちがぇぇ子になったら・・・1はまた好きになってくれる??」
俺はそんな華は愛しくてたまらなくなった。
吉村に裏切られ、会社に居場所が無い俺。
そんな俺を華は必要としてくれている・・・。
子供だが子供なりの愛情を全力で俺にぶつけてきている・・・。
華は俺のTシャツの胸元を掴みながら目を瞑った。
俺は前から考えていたことを華に言おうと決心した。
「華・・・ちょっと話があんねん」
華は不思議そうな顔で俺の目を見る。
「なに??話って??」
俺は以前から思っていたことを意を決して華に伝える。
「華。俺と一緒に病院に行こう」
キョトンとする華。
「病院・・・??ぅち体は元気やで??」
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「うん・・・」
俺は唾を飲み込んで言った。
「病院は病院でも・・・心の病院や」
華が目を大きく見開く
「心の・・・病院・・・??」
「せや・・・」
華が急に不安そうな表情になる
「それって・・・せぃしん・・・病院??」
「いや・・・。精神病院というか・・・病院の精神科や・・・」
なにが違うのだろう・・・。
それは分からないが「精神病院」という言葉は華の不安を更に煽ると判断したのだ。
華は目に一杯の涙を溜めながた俺の目を見つめてこう聞いた。
「・・・ぅち・・・ぅち・・・。精神病なん??」
「精神病やない・・・心の病気や。俺はそう思ってる。まだ分からへんけど・・」
華は自分の心が病と言われ怖かったのか目から涙をポロポロこぼした。
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そうだ華はまだ14歳なんだ。そんなことを言われて怖くないはずがない。
「ぅち・・ぅち・・。精神病なんかとちゃぅ。病院なんかぃきたくない・・・」
そういって俺の胸にすがりついてくる。俺は華の頭を撫でながら
「華・・・落ち着いて聞いてや」
「華も俺も風邪ひいたりするやろ?それは体の病気やな?」
華は「ぅぅぅ・・・」と泣きながら俺の胸から顔を上げない。
「でもな。人間は心が病気になることだってあるねん」
「それは恥ずかしいことでも、特殊なことでもない。よくある話やねん」
「そうやって心が病気になった時。体の病気と同じように病院にいくねん」
華はシクシクと泣き続ける。俺は続ける
「それで元通り元気になるんよ。心も」
「だから華。俺と一緒に病院に行こ・・・」
それから華は5分ほど俺の胸で泣いていた。顔を上げた華は俺にこう聞いてきた。
「こわぃこと・・されへん??」
俺も精神科は行った事が無かったが大体はどんな所か知っている。
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「怖いことなんかされへん。先生と話するだけやで」
そう言って華の頭を撫でる。
「ぅちが・・・病院ぃって病気なぉしたら・・・」
「1はまたぅちの彼氏に戻ってくれる・・・??」
まっすぐに俺の目を見る華に「ああ。戻る」俺はそう答えた。
「ぅち・・・病院・・・ぃく」
華も自分の窃盗癖に苦しんでいたに違いない。
ダメなことと気づいていたに違いない。
しかし14歳の華には・・・
周りに信頼できる大人が皆無の華には、それを辞める術が分からなかったに違いない。
「俺ちゃんとした病院探しとくからな」
華は「ぅんぅん・・・」と言いながら目を瞑った。
俺は一晩中華の頭を撫で続けた。いつのまにか華は眠っていた・・・。
その顔は14歳の子供の寝顔だった。
次の朝俺は会社に行くため華と電車に乗った。
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昨日は病院行くことを納得した華だったが口数は少ない・・・やはり不安なのだろう。
華を自宅の最寄駅へ送って出社。俺の会社での立場はもう無いに等しかった。
仕事は1人でできるものではない。色々な人間に助けられ支えられできるものだ。
しかし・・・俺の周りには助けてくれる人間も支えてくれる人間もいなかった。
それならそれで割り切った。今は会社の仕事より華を病院につれて行くことが大事だった。
会社のPCで「精神科」でググってみる。
近所に精神科の病院は山ほどあった。この中からどれにするか・・・?
病院を極端に怖がっていた華を思うと大病院の精神科はキツいかな??と思った。
精神科にもクリニックというものがあった。
精神病院には違いないのだろうが写真を見る限りでは
清潔感がありアットホームで温かな感じがした。医者も女性で小綺麗な人だ。
この方が華も精神的に楽に違いないと考えた。
会社の外から病院に予約を入れる。2日後の午後に予約を取った。
会社があったが既にどうでも良かった。有給でもとろう。
俺はその日の夜華に電話をし、そのことを伝えた。
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「華。保険証あるか?」
「わからへん・・・ぁるかもしれんけど・・・ぉかんがどっかにしまってるかも・・・」
もしかしたら華の家庭に保険証などないかもな・・・?
それなら仕方ない。満額払ってでも行くのみだ。
「なぁ・・1・・・」
「うん?」
「ぅち・・・病院ぃったら・・もぅ人のぉ金盗んだりせんようになるよね・・??」
「なる。そのために病院にいくんやで!」
「わかった・・・」
2日後俺は華と一緒に病院を訪れた。
【第六部 病院~そして俺の実家へ~】
俺は予約時に華の兄貴と嘘をついた。
精神科といった場所がどういう所か分からないが
俺も華と一緒に医者の話を聞こうと思っていたからだ。
もしかすると華と他人の俺にはプライバシーの観点から
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立ち合わせてもらえない可能性を考えたからだ。
2日後・・・。病院の前。華にもそのことを伝えておく。
「華。先生に俺のことを聞かれたら兄貴って言うんやで」
「ぅんぅん」
「病院では俺のこと1って呼んだらあかんで!お兄ちゃんと呼べな」
「ぇ~~ぉにぃちゃん(笑)恥ずかしぃわぁ~」
「それに15歳も離れてんのにぉにぃちゃんって。。。ぁつかましぃで(笑)」
そう言うと華は俺と腕を組んできた。
「ぃこか?ぉにぃちゃん♪」
精神科・・・俺でも少し緊張している。華の不安はもっと大きなものだろう。
だからこそ、こうしておどけて不安をかき消そうとしているのかもしれない。
病院のドアをくぐった。
案の定、華は保険証を手に入れることは出来なかった。
病院の待合室は非常に清潔感があり落ち着いた雰囲気だった。
俺は受付で華の兄だと伝えた。看護師から用紙を渡された。
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華は用紙に必要事項を書き込み俺の横に来て座った。
二人で並んで座り診察を待つ。華は無言だった。
15分くらい待たされたか・・・その時間はやけに長く感じた。
看護師が華を呼びにきた。診察の番が回ってきた。
俺も立ち上がろうとした。すると看護師が
「まず華さんだけで先生と診察しましょうね」
「お兄さんは少しお待ち下さいね」
華の目にサッと不安の色が走る・・・。が仕方がない。
俺は華に「いっておいで。待ってるから」そう言った。
華は不安気な表情を浮かべながらも看護師について診察室に入った。
なんとなくドナドナを思い出していた。
俺は1人で診察が終わるのを待っていた。長い・・・それにしても長い。
人の診察を待つのってこんなに時間を感じるものなのか?
30分が過ぎたころだと思う。
華の入った診察室から先ほどの看護師が出てきた。
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「お兄さん。どうぞお入り下さい」
そう言われ看護師のあとに続いて診察室に入る。
想像と全く違った診察室に驚いた!
俺は風邪で訪れる時の内科のイメージを持っていたが。違う。
そこには白いベットも無機質な医療器具も無かった。おしゃれなお宅のリビングをいった感じだ。
そこに華が医者と向き合ってポツンと座っていた。
華は俺の顔をみると安心した表情で「1ぃぃ~~」と言った。
「お兄ちゃんと呼べ」と言ったことを華は完全に忘れていたみたいだ。
「お兄さんどうぞ。華さんのお隣へ」
先生は上品に優しさを兼ね備えた感じの女性だった。年は40代半ばくらいか。
「失礼します」そういって俺は華の隣に腰掛ける。
先生は俺をジッと見つめる。もしかして・・・
既に気づいているのか?俺が兄貴では無いことを・・・。
医者はニコっと笑うと俺に質問してきた。
「お兄さんは独立なされているのですか?」
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「はい。実家を出て華とは今別々で暮らしています」
「なるほど・・・」
医者は何か考えている様子だ。俺と華を交互に見て医者は口を開いた。
「今華さんとお話させて頂きまして・・・かなり複雑な家庭環境とお聞きしました」
「はい。その通りです」
「そして華さんは自分の意思に反して人の物を・・・特にお金を盗んでしまう癖がある」
「その通りです」
華はじっと下を向いて動かない。俺は業を煮やして聞いてみた
「華は・・・心の病なのでしょうか?」
医者は華をじっとみつめながら静かに答える。
「まだはっきりとした事は言えませんが・・・
 そうですね。心の病・・その可能性は非常に高いです」
華の体がビクンと反応した。医者は続ける
「話を聞く限りでは・・・。華さんは愛情に恵まれていないと感じました」
「それがストレスになっています・・・そして」
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「失礼ですが華さんは経済的に非常に苦労をなされていますね?」
華は下を向いて答えない。俺が変わりに「はい」と答える。
医者は難しい顔で話す
「ストレスの捌け口が金銭欲を満たしたい・・・その方向に出ていると思われます」
そうだったのか・・・俺は隣の華を見る。ピクリとも動かない。
髪に隠れてその表情を読み取ることもできない。俺は聞いた。
「その窃盗癖は・・・治りますか・・・?」
医者は俺の目を真っ直ぐに見つめて答えた。
「この病は非常に治りにくいものです」
衝撃的な言葉だった。目の前がクラっとした。
それまで無言だった華がすすり泣く・・・。
医者が立ち上がる。そっと華の横に立ち華の肩をさする・・・。
華の髪に隠れた顔からは涙がポロポロと流れ落ちる・・・。
「でもね。お兄さん・・・華ちゃん。よく聞いて下さいね」
「先ほども言いましたが華ちゃんには愛情という栄養が不足しています」
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「そしてこの病は治りにくいかもしれませんが・・・治らないわけではないのですよ」
華の肩をさすりながら医者は続ける。
「お兄さん。できる限り華ちゃんのそばにいてあげて下さいね」
「そして・・時間を掛けてゆっくり愛情を感じさせてあげれば・・・・」
「華ちゃんの病は治りますよ」
華は泣いている「ぅぅぅ・・・ぅぐ・・・」
その声を聞きながら華のこれまでの境遇を考えた。
どこの世界に愛情に満たされながら、リーマンを1人で襲撃する14歳の女の子がいるのだろうか・・・?
それほど・・・それほど・・・華は愛情に飢えていたのだ。
医者は華の手を握って華にこう伝えた。
「もし・・・お金を盗みたい気持ちになったら、その時はグッと我慢してね!」
「そしてすぐに先生に会いに来てくださいね」
華は涙をポロポロ流しながら「ぅち・・わかった・・・」とだけ答えた。
そして医者は俺の目を見て言った。
「お兄さん。いつも華ちゃんのそばで愛情を注いであげて下さい。それがお薬ですよ」
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恐らく・・・いや間違いなく。この医者は俺が兄貴で無いことを確信しているであろう。
俺は華と手を繋いで病院を出た。すっかり元気が無くなった華・・・。
俺は華が前に言っていたことを思いだした。
「ぅちぁんまり海にぃったことがなぃねん」
俺は華に声を掛けた「海見に行こうか?」
電車に乗って南港に向かった。この広大な場所はいつきても閑散とした雰囲気がある。
いや。きっと人はたくさんいるのだろうが広すぎてそう感じてしまうのだろう。
俺はこの場所が好きだった。華と並んで岸壁に腰かける。
華は泣き疲れたのだろうか、頭を俺の肩に乗せてボーっと海を眺めている。
俺は考えていた、どうやって華に愛情を注げばいいのか・・・を。
そんなことを考えているとそっと華が喋り始めた。
「ぅち・・やっぱり精神病やったんやなぁ・・・」
「・・・・・・・・」俺は言葉に詰まる。
「ぅちの病気は治らへんねんなぁ・・・大人になっても・・・お婆ちゃんになっても・・・」
「そんなことないで!先生も言うてたやろ?治りにくいけど時間掛けたら必ず治るって」
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「ほんまに・・なぉるん・・・かな・・・??」
「治る。絶対治るで!華があの先生に会いたくなったら俺が連れていったるからな!」
「ぅち・・・ぅち・・・自分がこわぃねん・・・」
そう言って華は目に涙を溜める。これは華の特徴の一つかもしれない。
華は滅多なことでは大泣きしない。まずは目に涙を溜めて堪えようとするのだ。
俺はそんな華を見る度にたまらない気持ちになっていた。華の頭をそっとなでてあげる。
「思いっきり泣いてもええで?」
そういうと華はまるで子供みたいにワンワンと大泣きをしたのである。
その日から俺は終始どうすれば華が愛情に満たされるのかを考えた。
あの家ではダメだ。あの母親ではダメだ・・・。
華はまだ14歳。家族や家庭の温もりが必要な年の筈・・・。
俺はある考えに行き着いた。華を俺の実家に連れて行こう。
1度家族の団欒というものを味あわせたらどうだろう?
俺は5人家族で育った。まじめで仕事熱心な父親。料理好きの母親。
よくケンカもしたけど比較的仲の良かった兄貴2人。俺は末っ子だった。
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愛情たっぷりかどうかまでは分からなかったが比較的普通の家庭で育ったとは思う。
しかし・・・。実家に華を連れていくにはそれなりの段取りがある。
そう・・・華のことを家族に伝えなければならない。
華がまだ中学生であること。華の家庭環境。窃盗癖があること。心の病であること。
そして鉄パイプで頭をカチ割られた出会い・・・。
親がこれを聞いて腰を抜かさないか?非常に不安であった。
俺は先に華に聞いてみることにした。
14歳の子供が果たして29歳独身男の実家になど行きたいだろうか?
例の公園で華に聞いてみた。すると・・・
「すごぃ!1の実家にぃけるのん??ぃきたぃ!!絶対ぃきたぃ!!」意外なくらい喜んだ。
「1のぉっちゃんとぉばちゃんに気にぃられるよぅに。。ぉしゃれせなぁかんな!ぅんっ!」
まぁ程々のお洒落にしてくれた方が助かる。
はしゃぐ華を見て決意した。うっしゃ!がんばって親に話してみますかっ!!
その夜、華を送って自宅に帰ると早速実家に電話をした。父親が電話に出る。
「久しぶり~1やけど。元気にしてる??」
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「おお~。1か。元気やぞ!どしたんや?電話なんか珍しい」
「うん・・・。実は次の休み女の子連れてそっち行きたいねん」
親父は少し驚いた様子だったが、それでも嬉しそうに
「分かった母さんに言うとく!ご馳走作ってもらっておく」
俺はこの父親の喜びを今からブチ壊すのか・・・そう思うと少し心が引けた。
「実は親父・・・。その子の事で少し話があるねん」
俺は華の事を包み隠さず父親に話した。
14歳であること。窃盗癖があること。母親や弟のこと。病院に行ったこと。
そして・・・鉄パイプで殴られたこと。全てを矢継ぎ早に話した。
あとは父親の度量に委ねる。父親はさすがに最初のテンションは消えていた。
でも黙って俺の話を最後まで聞いてくれた。そして親父は言った。
「分かった母さんには話しておく。とりあえず1度連れてきなさい」
YESともNOともとれない反応だった。
次の土曜日。俺は華と実家に帰ることにした。
華とは駅で待ち合わせ。お洒落すると張り切っていたが果たしてどんな格好をしてくるのか?
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駅で待っていた華は・・・グレーのワンピースに黒のブーツ。
華のスカート姿は初めて見た。それは小さなお嬢様だった。
俺は華に声を掛ける「そんな服持ってたんや!?」
華は不安そうに俺の顔を見る?
「変かなぁ~ぅち・・??」
俺は首を振って答える
「めっちゃ可愛いよ。今までの華の中で1番可愛いわ」
その言葉で華のテンションは上がりまくった。
「ほんまぁ~♪めっちゃぅれしぃわぁ♪♪」
「やっぱり1のぉっちゃんとぉばちゃんにぁぅんやからマジメなカッコせなぁかんと思ったねん~」
そう言って恥ずかしそうにハニカム華は本当に可愛かった。
俺の実家までは電車で2時間。途中2度の乗り換えがある。華は終始ご機嫌だった。
「1とこんなに電車乗ったことなぃなぁ~!なんか旅行みたぃで楽しぃなぁ♪」
しかし実家の駅が近づくにつれさすがの華も緊張してきたようだ。
「ぅわ・・・。めっちゃ緊張するぅ」
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「1のぉっちゃんとぉばちゃん、ぅちのこと気に入ってくれるかなぁ~」
子供の華にとって今回の件は婚約者の紹介だと認識しているのだろうか??
そんな華が可愛かったのでまぁ良い。
とうとう実家に到着した。家の玄関を開けようとしたら華に止められた。
「1・・・ちょっと待って。心の準備する・・・」
そう言って深呼吸する華。俺は華の心の準備が出来るまで待った。
「ぇぇで。心の準備・・・できた」
さて・・・。両親が華を見てどんな反応をするのか??それは俺にも分からない。
いざっ!!実家の玄関を開けた!!
「ただいま~帰ったで~」
俺は玄関でそう言った。靴を脱ぐ俺。
華はカチカチになってまるで人形のように動かない。相当緊張している様子だ・・・。
奥から母親の声がする「おかえり~」そう言いながら母親が走ってきた。
華は俺の母親を見て必タヒに挨拶をしようとした。
もしかして家で練習をしていたかもしれない・・・・。
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「ぅち・・ぅち・・華です」
華はやっとこさそう言った。これが華なりの最大限丁寧な挨拶なのだ。
ちなみに華の敬語「です」はこの時初めて聞いた。
俺の母親はそんな華を見てニコッっと微笑むと
「華ちゃんいらっしゃい。さぁどうぞ上がってね」
そういって華の荷物を持ってあげた。リビングに入ると母親は紅茶を出してくれた。
そして母親が華に話掛ける。
「華ちゃん小さくて可愛いね~」
華はなんと答えていいのか分からずモジモジしている。
そんな華を見て母親は話続ける。
「おばちゃん男しか子供おれんかったから華ちゃんみたいな女の子が欲しかったんよ」
華は「ほ・・・ほんまですか・・??」と言いながらも顔を真っ赤にしている。
そういえば父親がいない「親父は?今日休みやろ?」母親に聞いてみる
「なんか休日出勤らしいわ。6時には帰るみたいやで」
ふ~ん。そうなのか。
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父親と母親。対面を一気に済ませられなかった華を少し気の毒に思った。
華はまた緊張しなければならないのだ。
それにしても・・・こんなに緊張している華を見るのは初めてだ。
俺の頭を鉄パイプで割った華。それがまるで借りてきた猫状態。
今日のタメに一生懸命お洒落してワンピースを着て張り切っていた華が
今は恥ずかしそうに下を向いてモジモジしている。なんかそんな華がとても可愛く思えた。
「あ~。そやそや。おばちゃんなぁ。華ちゃんのタメにケーキ焼いておいたんよ。食べてくれる??」
緊張する華に母親が言った。
華は驚いた顔で母親の顔を見つめた。
「ぇ・・ケーキ・・・??ぅちのために・・??」
「そうそうちょっと待っててなぁ」
そう言って母親は台所に消える。
「ぅちのためにかぁ・・。」
華が嬉しそうにそう呟いたのを聞き逃さなかった。
母親がケーキを持ってきた。俺には特別珍しいものではない。
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しかし華は目をキラキラさせてそのケーキを見つめる。
「ケーキってほんまに家で作れるんゃ~」
母親が切り分けたケーキを食べる華
「ぉぃしぃ。ぉばちゃんのケーキはコンビニのヤツより全然ぉぃしぃ」
まぁ。華なりの褒め言葉なのだろう。
きっと華の母親は親は子供にケーキなど焼いたことは無いのだろう。
そんな華が少し可愛そうに思える。
14歳の女の子といえば母親と台所に立って料理を覚えたり
お菓子を作ったりするものじゃないのか?(よく分からないが)
母親は華の反応に気をよくし
「華ちゃん。お皿貸してみて。もう1個いれたげるから」
華も少し緊張が解けたのか「ぅん♪ぁりがとぅ!ぉばちゃん」などと言っている。
ケーキを食べ終わると俺は自室に華を連れていった。
さすがにリビングで母親とずっといたら華も疲れるであろう。
俺の部屋は高校まで使用していた当時のままであった。
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両親が独身の俺のため「いつ戻ってもいいように」と時々掃除をしてくれている。
リビングを出る時母親が華に
「おばちゃんおいしい晩ご飯作るからね!食べていってね」と声を掛ける。
「ぅん♪ぉばちゃんぁりがとぅ」
華はちゃんとお礼が言える子なのだ。敬語は使えないけれど・・・。
「1のぉばちゃん優しぃなぁ♪」
「ぅちのことちぃさくて可愛いってぃぅてくれたで♪ぅれしぃなぁ~♪」
華はご機嫌の様子だ。
俺のスーファミを発見して嬉しそうに「FーZERO」をやっている。
さて・・・母親は当然父親から聞いていただろう。
華の素性を、それでもあのもてなしを華にした。
それは母親が少なくとも華の素性に対し嫌悪感を抱くことがなかった証だ。
俺は自分の母親の器のでかさに感謝した。あとは・・・。父親だな。
父親は役所勤めで少々堅物なところがある。
一言で言えば「マジメ」なのだ。
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その父親が華にどういう態度で接するのか??これは俺にも未知であった。
夜6時。部屋で華と桃鉄をしていると1階から物音がした。
「ただいま~」父親の声だ!帰ってきた!
すっかりリラックスしていた華の表情も引き締まる。再び緊張した様子だ。
俺と華はリビングへと向かった。華が俺の後を付いてくる。
リビングに入ると父親はネクタイを緩めていた。
俺は父親に「おかえり」と声を掛ける。
父親は俺に気づき「おお1!ただいま~」と返事をする。
そして父親の目線は俺の後ろにいた華を捕らえる。
さて・・・。華はうまく自己紹介できるのか?
「ぅち・・ぅち・・華です・・」
母親の時と同じ挨拶だった。しかも今回の声は消え入りそうな声。
やはり父親がいない華には男親はさらに緊張すのであろうか?
父親は華をジッっと見つめて口を開いた。
「こんばんわ。華ちゃん。よく来てくれたねぇ~」
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親父・・・華もホッっと緊張が解けた顔をする。
父親は「小さくて可愛いなぁ~。華ちゃんは」と母親と同じことを言っている。
恥ずかしそうにする華・・・。
父親は「1と華ちゃん15分後に隣の洋間においで」と言った。
はて・・なんだろう??15分後洋間に行くと着替えた父親がいた。
そして「華ちゃん。そこに座り」と華をソファーに座らせると
嬉しそうにマカダミアンナッツの箱を出してきた。
父親は「もうすぐ晩ご飯やからなぁ。母さんに見つかるとうるさいからここでチョコ食べ」と言って華に勧めた。
華はチョコを一個摘むと口に入れた。
「ぅち。こんなおいしいチョコレートはじめて食べたわぁ」
確かにマカダミアンナッツは旨い!親父はそんな華を嬉しそうに見つめながら
「そうか。おいしいか?いっぱい食べてええんやで」と華に勧める。
父親・・・そして母親・・・この2人が華に接す態度。
なぜ偏見を持たないのだろう?普通は偏見の目で華を見るだろう・・・当然と思う。
しかし父親も母親もできる限る華もてなそうとしてくれている。
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両親は女の子が欲しかったとこぼしていた事がある。
俺を産むとき正直女の子を期待していたそうだ。
だが残念?ながら俺が産まれ両親はとうとう女の子の親になる事ができなかった。
そんな両親にとって華は「もし女の子がいればこんな事がしてみたかった」と思わせる存在なのだろうか?
それとも・・・自分の息子が連れてきた彼女を必タヒに理解しようとしているのだろうか?
答えは解らないが自分の親の器の大きさはヒシヒシと感じることができた。
4人で夕食を囲んだ。サラスパにから揚げ、コロッケにグラタン、味噌汁にご飯。
母親も気合を入れてたのだうが洋食ばっかりである。
母親なりに中学生の好みを考慮したのか?
「ぅわ~♪めっちゃぉいしそぅ」
「華ちゃんいっぱい食べてね」
母はそう言って華の小皿にから揚げとコロッケを乗せてあげる。
俺と父親は久しぶりの晩酌だ。
「華。先食べや!」
俺がそういと華はコロッケを一口かじって「しまった!!」と言う顔をした。
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コロッケを小皿に戻し一旦箸を置くと、
恥ずかしそうに「・・・ぃただき・・・ます・・・」と言った。
華の家庭ではきっと「いただきます」なんて言葉は使わないのであろう・・・。
それを見た母親は「はい!どうぞっ!」と笑顔を見せた。
華は全てのおかずを食べる度に「ぉぃしぃ。ぉぃしぃ」と言った。
そんな華を見て俺の両親も目を細めていた。夕食が終わって実家を出る。
玄関先まで見送ってくれた両親は「華ちゃん。またいつでも遊びにきてな!」そう声を掛けた。
華は精一杯の感謝の気持ちを込めて
「ぉっちゃん・・・ぉばちゃん・・・。ぁりがとぉ!!」と言った。
両親はニコニコして俺と華を見送ってくれた。
帰りの電車・・・華は興奮が冷めやらない様子だ。
「1のぉばちゃんのケーキぉぃしかったなぁ~。ぉっちゃんも優しかったなぁ~」と嬉しそうに話した。
そのうち余程疲れていたのか俺の肩に頭を乗せ眠る体勢に入る。
華は呟く「ぁんなに優しいぉ父さんとぉ母さん・・・華も欲しかったわ・・・」
「華も1もの家にぅまれたかったわ・・・」
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そう言って華は眠った。翌日の夜父親から電話が掛かってきた。
「昨日はありがとう。華も喜んでやわ」
「そうか。ちゃんと華ちゃん送ってあげたか?」
「うん。送った」
「そうか・・・」
沈黙が流れる・・・。
「親父・・・華はどうやった?」
俺は聞いてみた。聞かねばならない事だった。
「・・・・・・・・・うん」
父親は慎重に言葉を選んでいる様子だった。
「可愛くて、素直で、いい子やと・・・思う」
父親はそう答えた。しかし・・・。歯切れが悪いのは丸解りである。
「思うけど・・・なに?」
俺は聞いてみた。
「華ちゃんはええ子や・・・。しかしお前に華ちゃんの人生を背負えるか?」
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そうか・・・親父は華を1人の人間をして認識しようとしている。
息子の彼女として迎え入れる覚悟をしようとしている。
しかし・・・しかし。父親が気にしているのは他でもない。その息子の覚悟なのだ。
「お前にその覚悟・・・あるんか?」
俺は・・・俺は・・・恐らく覚悟をしていたと思う。この時には・・・。
「覚悟はしてる・・・」俺はそう答えた。
華の事を・・・心から愛していた。
父親は「そうか分かった。今度また華ちゃんと遊びに来なさい」
そう言って電話を切った。
俺は心の中で「親父ありがとう・・・」そう呟いた。
【最終章 俺と華】
俺と華はその後も順調に付き合いを続けた。
俺の実家にもその後何度か遊びに行った。華の要望だった。
「ぅち1の実家にぁそびにぃきたぃ!ぉっちゃんとぉばちゃんに会いたぃ!」
実家の両親はいつも華を温かく迎え入れてくれた。
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回を重ねる毎に自分の娘が来たように喜んでくれた。
華との日常は特別な変化はない。
会える時は公園で話して、その帰り道に定食屋でご飯を食べた。
電話は毎日した。華は毎日報告する。
「今日も人のぉ金とってなぃよ」
まぁ当然の行為なんだけどね。華にしてみれば毎日毎日が積み重ねなのだろう。
毎日毎日俺に報告をすることで積み重ねたい「何か」があるのだろう。
それでも2~3回は華から「ぁの病院ぃきたぃねん・・・」と言ってくることがあった。
恐らくストレスが極限に達した時、あの女医に話をしたくなるのだろう。
俺はその度に華を病院に連れていった。医者はいつも親身に話を聞いてくれた。
華もそれにより安心感を得ていたに違いない。
華に鉄パイプで殴られてから1年が経った・・・華は中学3年になっていた。
俺は会社を辞める決意をしていた。
もう俺の居場所は会社になく給料を貰うため惰性で出勤していた。
そんな生活はもう終わりにしよう。会社を辞めよう!!
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ある休日の昼下がり、俺と華は河川敷を歩いていた。
ポカポカして非常に気持ちのいい天気だ。華と会うのは夜が多い。
俺は華に昼間の草の匂いや風を感じさせてあげたかった。
2人で手を繋いでブラブラと歩く・・・遠くで草野球をする声が聞こえてくる。
俺と華は川べりに腰を下ろした。華は俺の肩に頭をもたげてきた。
華はこの体勢が好きだ。1番安心するそうだ。
華は川を見ながらポツリと言った。
「なぁ~。華はちゃんとがんばってるぅ??」
華は時々こういう質問をする。自分の頑張りを他人に確認することで安心しているのだ。
「頑張ってんで」
2人でボーッと川を眺める。華が俺の手をギュっと握り締めてきた。
「1・・・。ぉねがぃがぁんねん・・・」
「なにお願いって??」
華はゆくっりとこう切り出した。
「ぅちなぁ。もぅ絶対人のぉ金とれへんよぉ・・・」
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「だからなぁ・・・1」
「ぅちが・・・ぁと1年。中学卒業まで頑張ったら・・・」
華はさらに手を強く握り締めてきた。
「ぅちと一緒に住んでほしぃねん・・」
今までの華との出来事を思い出す・・・。
USJで金を盗られたこと・・・華の母親のこと・・・吉村のジ件・・・。
華がシンナーでラリッたこと・・・。そして・・・。
2人の出会いは俺が華に鉄パイプで殴られたこと・・・。
それら全てのことを踏まえて俺は言った。
「ええよ。俺と一緒に住もう!!」
華は目を閉じて静かに呟いた・・・。
「ぁりがとう・・・。ぅれしぃで・・・。1・・・。」
【エピローグ 俺と華のいま】
俺がこのスレを建てたのが昨日の夜中でした。
俺はその時ネットで仕事を探していました。
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俺の隣では・・・華がスヤスヤと寝息を立てていました。
華はこの春、中学を無事卒業し俺の家にやってきました。
そして現在は介護福祉の学校に通っています。
(奨学金制度を利用。俺も少しは「助け」しました)
華は毎日忙しそうにバイトと学校に精を出しています。
華はあれ以降人様の金銭をとることは一切していません。
(お前に全て把握できるかよ!というツッコミが来ると思うので
 あえて僕の知る限りは・・・としておきます)
出会った時より少し大人になった華の寝顔・・・。
もし僕と華のこの奇妙な出会いを皆さんに伝えたら・・・。
果たしてどんな反応が返ってくるのだろう??
想像も出来ないくらいに煽りが少なく、とても驚いているのが現在の感想です。
俺と華はこの先どうなるのか??全く解りません。
華はもうすぐ16歳。色々な出会いもあると思います。
そして様々な楽しみも見つけると思います。
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そんな時果たして僕の側にいてくれるのか?
こればっかりはどうにも解りません。
でも今は毎日楽しく過ごしていければいいかな?そんな感じです。
そして早く就職してバリバリ働きたいと思っています。
こんな長いスレになるとは僕自身想像していませんでした。
応援して付き合ってくれた皆さんお疲れさまでした。
そしてありがとう。これで俺と華のお話は終了です。