メガネをかけてた小さな男の子。はじめて彼に会ったのは、彼が小学5年生で私が中2の時でした・・・

私と彼が出会ったのは、私が中2、彼が小5の時でした
当時の私は学校が終わっても部活には行かず町立の図書館に直行していました
その図書館は建設されたばかりで清潔感があったし
ビデオルームや雑誌コーナーもあったりして、時間つぶしには最適だったんです
別に読書は好きでもなかったので大概の時間は
窓辺にあるソファーを独占して雑誌を読んだり人間観察をしたりしていました
というか「図書館に通う中学生の私って文学少女みたい☆」
「なんか異端でかっこいい☆」とか厨二病こじらせてましたw
まぁそんな感じで人間観察してたら、よく見る顔ぶれってのがあって、その中の一人が彼でした
メガネをかけていて小さめな男の子
身長が低いのでランドセルがとても重そうに見えたのが印象的です
彼はいつも私より先に図書館へ来ていて、閉館時間ぎりぎりまで本を読んでいました
(本って言っても漫画だったり地図帳だったり)
そして私が彼を覚えるようになった大きなきっかけが住んでいるマンションが同じだったからです
私も図書館には閉館時間ぎりぎりまでいたので、帰る時間も帰る場所も彼と同じ
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片方が数十メートル先を歩き片方が先行く相手を追い越さぬよう絶妙なスピードで歩く
そんな暗黙の了解的な雰囲気が出来上がり、お互いなんだか気まずい帰宅時間が続きました
けれどそんな気まずい雰囲気を私が壊しにかかりました
元々人見知りではなかったし、何より夕焼けをバックに一人歩く少年の哀愁に
いたたまれない気持ちになったからです
そう、彼はなんとなく悲壮感を漂わしている小学生でした
なんでか解らないけどかわいそうな気持ちになってきて
私から「一緒に帰ろう」と声をかけました
突然後ろから声をかけられた彼は、変質者を見るような目で私を見ました
「私のこと解るでしょ?よく図書館で会うじゃん」
「あぁ…はい…解ります」
声たけぇwと思ったのを今でも覚えてます
それからは私の独壇場で、気まずさを振り払うかのように喋り続けました
図書館からマンションまでは20分弱
彼はひたすら聞き役にまわり「…あぁ」「そうなんですか…」としか言いませんでした
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なので「何年生?」と聞いてみました
「五年です」と彼が言った瞬間、私は吹き出しました
それから毎回一緒に帰宅するようになると
最初は人見知り炸裂していた彼も私の問いかけ等にはしっかり答えるようになりました
「なんで図書館に来ているの?」
「家にいてもすることがないから」
「友達と遊んだりしないの?」
「別に」
「友達いないの?」
「」
「どwwんwwまwwいww」
「わらうな!」(顔真っ赤)
「良かったね、友達できて。嬉しい?」
「?」(きょとん)
「私が友達になってやってんじゃん」
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「友達と思ってないし!!」(真っ赤)(バタバタ)
まじでこんなガキでした
「ちっちぇw三年くらいかと思ってたww」
そう笑う私に、彼は「うるせぇババァ」と極々小さな声で言い、走り去って行きました
「誰がババァだガキのくせに」
そう言いながらランドセルを捕まえてやりました
離せーと暴れる彼に「馬鹿だなーランドセル脱げば逃げられるのに」と言うと、
彼は言われた通りランドセルから脱皮し走り去って行きました
今度は追いかけず、そのランドセルを持ち帰りました
その晩、彼が悔しそうに私の家にランドセルを取りにきました
「返してほしければババァと言ったことを謝れ」
ニヤニヤしながら言う私を見て、彼は泣きそうになっていました
「それが嫌なら、これから毎回一緒に帰ると誓え」
毎回あんなに哀愁漂わせて帰られたらたまったもんじゃないので、私はそう提案しました
彼はポカンとした顔で「わかった」と言いました
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これが私達の出会いでした
それから私達は「けんご」「ゆうちゃん」と呼び合うようになりました(ちなみに仮名です)
けんごと話をしていくうちに、たまにビックリするくらい大人びたことを言うことに気付きました
というか、同年代の男の子達より断然落ち着いているのだろうなという印象です
感受性も豊かで、人の気持ちにも敏感でした
だけどたまに見せる子供らしさが可愛かった
ムキになって怒ったり、くだらない言い合いをしたり
初めてできた年下の友達に私は夢中になっていました
帰宅途中の夕焼けが私たちをセンチメンタルな気分にさせるのか
お互いのシークレットゾーンに踏み込むことも多々ありました
私の話で言うなら、両親が不仲な事、親友と呼べる人間がいないこと、あとは生理痛が怖いこと等々
彼の話で言うなら、彼は五年の始めに転入してきたこと
転入初日にみんなの前でゲロを吐いてしまったこと、
それから距離を置かれるようになってしまったこと
苛められているわけではないので悲しくはないが寂しい時もあるということ等々
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時にはお互い涙混じりに話すこともあったりして
私は「あぁ青春だ…」と一人噛み締めたものです
それからはいつも一人で座っていた図書館のソファーに彼をお招きしたり
彼の部屋に遊びに行ってゲームをしたりと、同級生とは遊びもせず彼とどんどん仲良くなっていきました
そして私が中三、彼が小六になり受験生の私は塾に通い始めました
すると当然のように彼との時間は減っていきました
でもたまにマンションの前で待ってるんですよね、塾帰りの私を
マンション前に自販機が設置されてたので、それを言い訳にして
そんな時は数十分くらい構ってあげて、
「けんごー!寂しいからって泣くなよー!」とお決まりの捨て台詞を吐いてバイバイしてました
それでも少しでも時間が空けば、彼の自宅に電話をしたり、家に乗り込んだりしていました
やっぱ奴の哀愁がそうさせてたんだよね
でもまぁ塾の甲斐なく、私は推薦で高校合格
そっからはまた図書館へ通い、彼の相手をしていました
「(受験の時)寂しかった?」と聞くと「ちょっとだけ」と答えるようになったり
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ちょっとずつ素直になっていったのも可笑しかったです
そして忘れもしない卒業間近の2月
「高校に行ったら前のようには図書館に通えないかもしれない」
と、彼のベッドに寝転んで私は告げました
「なんで?」と聞く彼に、通学時間が増えること、生活が変わっていくことを説明しました
その時の彼の哀愁度合いも半端じゃなかった…犬みてぇwと思いました
なので携帯を買ってもらうようにアドバイスし「いつでも連絡は取れるから」と諭しました
私は彼の部屋で仮眠を取ることが多々ありました
その日も気持ちよくウトウトと微睡んでいました
「寝たの?」と彼が声をかけてきたのですが、なんとなく寝たふりを決め込んだ私
近付いてくる衣擦れの音、閉じた瞼の中がスッと暗くなった感覚
彼が上から私を見下ろしている気配に気付きました
今ここで「ワァ!!」って飛び起きたらビックリするだろうな、とタイミングを図っていたら
唇に少しカサついた感触が降ってきました
ビックリして目を開くと、彼が眼鏡を外し、ギュッと目をつぶって私にチューしていました
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これはヤバイ!と思った私は再び瞼を閉じ、寝たふりを続行しました
しばらくすると彼は口を離し、大きく深呼吸を繰り返していました
「息止めていたんだな」なんて悠長に思いながらも、
初キスを奪われたショックと突然の彼の行動に戸惑っていました
まぁ気付いたら本当に寝てたんですけど、起きて何事もなかったかのように帰宅しました
でも私は次の日から彼を避け始めました
図書館へも通わず、家にかかってきた電話も居留守を使いました
一週間かそこらだったんだけどね
するとある日の夕方、母が「ポストに入ってたんだけど身に覚えある?」と声をかけてけました
ノートを1ページ破った紙が四つ折りされていました
中を開くと「ごめんなさい」と一言だけ
お世辞にも上手とは言えないその字に、見覚えがありました
瞬時に、あの悲壮感溢れる後ろ姿を思い出しました
すごく胸が痛んだのを覚えています
その夜、少し勇気を出して彼の家に電話をしました
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電話に出た彼は相手が私だと解ると黙り込みました
「明日から図書館行くけど、あんたは?」と聞くと「いく」と小さな声で返事をしました
そして次の日、図書館に気まずそうな彼がいました
二人で黙って本を読み、閉館時間になったので帰り始めました
しばらく無言で歩いていました
私はなんて声をかけていいか解らず、また彼の気持ちを知るのも怖くて悩んでいました
すると隣を歩いていたはずの彼が視界から消えたのです
後ろを振り返ると、下を向いて立ち止まっていました
彼の唇がもごもご動いているのに気付きました
咄嗟に私は「気にしてないから!帰るよ!」と彼より先に言葉を発しました
彼からの告白を阻止したかった
何故なら私は中学三年生で、彼は小学六年生だからです
小学生の告白にまともに受け答えする余裕も自信もなかった
目の前の男の子のランドセルが子供の象徴にしか見えなかった
私は彼を弟のように思っていたのです
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この関係が壊れるのも嫌だったし、直接的に彼の気持ちを拒否して彼の傷付く顔も見たくなかった
だから彼に告白させないように私は彼を黙らせました
そして再び並んで歩き出した時「高校で彼氏できたらいいなー」と私は言いました
もちろん心の中では謝り続けました、彼の顔は見れなかった
視界の端っこに映っていた彼はうなだれて「うん」とだけ言い、無言で帰りました
そして二人とも学校を卒業しました
彼の卒業式が終わった後に、私達は久しぶりに顔を合わせました
マンションのロビーで待ち合わせをし、少し気まずさを残しながら図書館へ
一年ちょっと二人で並んで座ったソファーに私達は腰掛けました
「卒業アルバム持って来いって言ったよね?」
私がそう言うと、恨めしげな顔で彼はそれを出しました
「ゆうちゃんも持ってきた?」
目を輝かせて聞いてくる彼はまるで子犬のようで、しょうがないなぁと見せてあげました
そして彼の卒業アルバム、その中の彼は一つも笑っていませんでした
いえ、正確に言えば笑っていたものもあったけど、それは心からのものではなかった
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ページをめくる度に、彼の笑える場所はこのクラスになかったんだと実感しました
目の前で嬉しそうに私のアルバムを眺める彼と、アルバムの中で笑う彼が同一人物だとは思えなかった
そして何気なく見たアルバムの最後のページ
友達から手書きメッセージが貰えるように空白になっているページは真っ白でした
そのページを見ている私に気付いた彼は
「式が終わってすぐ帰っちゃったから、書いてもらう暇がなくて」
と、アルバムに写ってるまんまの笑顔で言いました、貼り付けたような笑い顔
放課後いつも一人で本を読んでいた彼を思い出しました
いつも一人で俯きながら帰っていた彼を思い出しました
お互いの抱えているものを語り合った時「少し寂しい」と言った彼を思い出しました
私はサインペンを取り出し、最後の空白のページに
「よく頑張りました!卒業おめでとう!!」とページいっぱいの大きな字で書きました
何でそんな事をしたのか自分でも解らない、完全に思い付きだったから
ただこのページを埋めてあげなきゃっていう衝動に駆られたんです
でも書いてる最中サインペンがキュッキュッて鳴る音が凄く気持ちよかった
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彼に目を向けると、真顔でその文字を見つめていました
そして「ありがとう、ゆうちゃん」と真っ赤になった目を細めて笑いました
彼に初めて声をかけたあの夕日の帰り道、
私の行動は間違ってなかったのだと心から思いました
「俺もゆうちゃんのアルバムに書いていい?」と彼は言いました
勿論と頷くと「見ないでね」と言い、キュッキュキュッキュと何か書き始めました
そして「家に帰るまで見ちゃだめだよ」と言い残しました
なんとなく、なんて書かれたか予想はついていました
でも「ありがとう」と言って受け取りました
そして毎日のように沢山語り合った帰り道を、もう小学生ではない彼と歩きました
「最初ゆうちゃんのこと苦手だったんだよー」「は!?」
なんて昔話をしながら帰ってきて、アルバムに残された彼のメッセージを読みました
「ゆうちゃんはたまに怖いけどいつもやさしい!大好きです  健吾」
やっぱり、と思いました
でも悪い気なんて全然しなかった、むしろ晴れやかな気持ちになったんです
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なんだか肩の荷が下りたような気がしたんです
告白されるかもしれないっていつも不安だったからかな
いざ伝えられると、なんだかスッキリしました
意味わかんないですよねw
そんな感じで、お互い無事に進学しました
彼はブッカブカの学ランで、私は念願のブレザー
「俺、でかくなるからね」と彼が私に宣言してきたので、
「でかくなるついでにコンタクトにしたら?あか抜けるよ」と言いました
私は何気に気付いていたのです…
彼の眼鏡の裏に隠された両目が、とてもいい形をしていることに!!綺麗な二重で睫毛ふっさふさ!!!
「コンタクトにした方が格好いいよ」私は念を押しました
それから何日かしてですね、彼はサラッとコンタクトにして現れました
しかも自分がコンタクトにした事に一切触れず、いつも通りを装って話しかけてきます
「あ、ゆうちゃん、俺携帯買ったんだよ」(チラチラ)みたいな感じでw
触れてほしそうだったので触れませんでした
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その日の彼はずっとソワソワしてましたw
そして高校に入学してしばらくすると、私に初彼氏ができました
けんごに言うべきか悩んだのですが「もしかしたらけんごにも好きな人できたかも」と軽く考え
図書館の帰り道にけんごに告げました
「へー」と一言でした
でも雰囲気が変わったことに気付いたので、私は一方的にしゃべり続けました
しかもテンパったのか彼氏の話までベラベラする私の浅はかさ
「バスケ部でねー背が高いんだー」とか「この前デートしたー」とか、最低ですよね
でも、これでいいとも思いました
早く私を対象外にしてほしいと思っていたから
「そうなんだ、良かったね」と言ってくれた彼に罪悪感を感じつつもホッとしました
しかし次に会った時、彼はバスケ部に入部していました
「友達に誘われた」と「早くうまくなりたいんだー」と言う彼に「頑張ってね」としか言えませんでした
それから彼も私もお互いの学校生活が忙しくて、
当たり前だけど以前より顔を合わす機会が少なくなりました
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けれどメールはたまに来ていたので、あまり疎遠って感じにはならなかったです
お互い時間が合えばマンションのロビーで話したりしていたし相変わらず仲は良かったです
あ、あと彼は中学で気の合う友達が沢山できたようで、
そっちの心配をすることはなくなりました!よかった!
彼が中二、私が高二になった頃、宣言通り彼はどんどん背が高くなっていきました
声も低くなっていったような…
そんな彼を女の子は放っておかないようで、私といる時に何度も女の子からメールが来ていました
「彼女ー?w」とわざといつも聞きました
「違うよ」どんどん彼の声は冷たくなっていきました
私もその頃には三人目の彼氏がいました
わざとにしても、恋愛系の話はどんどん振りにくくなっていきました
確かこの頃だったんですが、彼氏を家に招待した時のエレベーターの中でけんごと鉢合わせしました
「あ」と言おうとした瞬間、けんごが他人の振りをしたのに気付きました
エレベーターがほんの数階分下る程度の時間を三人で過ごしたわけですが、すごく長い時間に感じました
その日から、けんごからメールがくることは無くなりました
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バッタリ会っても気まずそうに片方の口角を上げるくらいで、
もう二人であの図書館に行くことも無くなりました
寂しさは感じましたが、こんなものだと思っていました
彼が中三、私が高三になりました
たまに見るけんごは、もう昔のけんごじゃありませんでした
あんなに小さかった背も高くなり、あんなに細かった体も筋肉がついて
少し丸顔だったのにシュッとした輪郭になって目鼻立ちもクッキリ
エレベーターの中で彼に会った時、気まずさに堪えきれず
「格好良くなったね」と声をかけました
え?と彼が笑いました
いつものような嘘の笑い方じゃなかったので嬉しかった
笑うと昔のような幼さが垣間見れました
その夜から、彼はまたメールをしてくるようになりました
「本当にかっこいいって思った?(絵文字)」という具合にw
「ゆうちゃんはどんどん綺麗になるね」そんなメールが来たときは少し嬉しかったです
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彼は部活を引退し、The受験生て感じでした
勉強の合間にちょくちょくメールがきました
息抜きと言って、マンションのロビーで会うこともありました
ちなみに私は高校からエスカレーター式の短大に入学予定だったのでそんなに焦ってませんでしたw
そしてその日も息抜きと称してロビーで落ち合いました
勉強疲れがピークだったみたいで、すごく脱力していました
私は「きっと大丈夫だよ」と励ますことしかできません
すると「合格したらご褒美ちょうだい」と彼が言いました
私はつい「中三の言うご褒美なんてエ口い事だろー!だめ!」とチャラけながら答えてしまいました
するとガックリ肩を落とし「違うし…」と力無く彼が呟きました
焦って「ごめんね、冗談だよ!ご褒美何がほしい?」と訪ねると、
彼は一度顔を上げ「あー」「うー」と唸りながらまた俯いてしまいました
とにかく雰囲気を明るくせねば!と思い「言ってみなよ!」と胸を叩いた私に彼は俯いたまま
「受かったらさ、受かったらだけど」
「うん?」
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「抱きしめたい」そう言いました
咄嗟にミスチルの「抱きしめたい」が頭をよぎりましたがw
彼の気持ちがまだ私にあることを自覚しました 
期待を持たすようなことをしてはいけない、それは解っていました
でもそれで受験を頑張れるなら、とも思いました
返答に困っていると「もう無理やりチューしたりしないから」と真っ直ぐな目で彼は言いました
あの日の、あの初チューの事を言っているんだ、と思いました
それを言われると「うん、解った」としか私は言えませんでした
「解った、いいよ」と返事をした時の彼のリアクションは可笑しかったです
え!!!!!!!とロビー全体に響き渡る大声を発し
鳩が豆鉄砲喰らったような顔をしていました
そしてよく解らないけど何度も両手で顔をゴシゴシしていました
「まじかーまじかー」と呟きながらw
「受験がんばりなよ」と声をかけると、頭が取れそうになるくらい何度も頷く彼
「しばらく勉強に専念するから連絡できないけど元気でね」
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と彼からメールが入ったのは、その晩のうちでした
どれもこれもが、素直に可愛いと思いました
彼の良くも悪くも正直過ぎるリアクションに、昔から好感を持っていたのは事実です
だから彼の気持ちがダダ漏れの時も、戸惑うことはあっても悪い気はしませんでした
そして本当に連絡は試験当日までありませんでした
当日の朝「いってきます(絵文字)」とだけメールが入ってきました
そのとき私はマンションのロビーで既に待機していたので、
エレベーターから降りてきた彼に直接「行ってらっしゃい」と声をかけました
相変わらずの鳩豆顔でしたw
「待っててくれたの?」と彼が聞くので「たまたま」と答えておきました
期待を持たしてはいけないので・・・すると彼は、
「朝から会えるなんて今日はツイてるみたいだから試験も上手くいく気がする」
そう言って意気揚々と会場へ向かって行きました
合格発表の日、彼からのメールで私は目を覚ましました
「今日会える?」
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合否結果は直接伝えたいようだったので、私はドキドキしながら約束の時間を待ちました
「抱きしめたい」云々よりも、彼が無事に合格できたのか、それだけが本当に気掛かりでした
そして待ち合わせの時間、マンションのロビーで私は彼を待ちました
とてもドキドキしていました
でもエレベーターから彼が降りてきた瞬間、すぐに合否結果が解りました
彼から放出されているオーラが全てを物語っていたから
私は心からの「おめでとう」を彼に伝えることができました
彼は涙目の私を見て、はにかみながら「よっしゃー」とガッツポーズしてました
「あ、ギューしてくるかな」と一瞬緊張しましたが、
その日彼が私に触れることはありませんでした
話題にも出てこなかったので、忘れたのかな?と思っていました
そして私は無事に高校を卒業し、彼も中学を卒業しました
三人目の彼氏とは三学期が始まってすぐの頃に別れていました
でも私の青春時代を捧げた(大袈裟ですかねw)その人のことを、私はしばらく引きずっていました
初めて本気で人を好きになったような気がしてたから
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その人と別れたこと、今までで一番その人が好きだったこと、けんごには伝えてはいませんでした
そして少し長めの春休み、私はけんごの部屋に呼び出されました
ついにこの日がきた、と少し怖い気持ちになっていました
「もう無理やりチューしたりしないよ」
その彼の言葉を信じていなかったのかもしれません
そしてどのように拒めばいいのかも解らなかった
けれど約束は約束です、私は彼の部屋に訪れました
玄関先に出てきた彼も緊張しているようでした
お互い意識してギクシャクしていたように思います
彼の部屋に通され、しばらくは談笑していました
昔から沈黙は苦手だったけれど、この日の沈黙の間が一番私を焦らせました
話がとぎれる度にキョドキョドしていました
そして「約束さ、覚えてくれてる?」と、彼が少し声を震わせて問いかけてきました
勇気を出して言葉にしたのだろうから、真摯に向き合わなければ、そう思いました
「うん、大丈夫、任せろ」
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私がそう答えると、彼は一つ大きく深呼吸をし、ゆっくり立ち上がりました
私も釣られて立ち上がります
彼が照れ臭そうに「では」と言い、控え目に両腕を広げました
私は「では」が少し可笑しくて、不思議と落ち着いて彼の胸へ歩み寄ることができました
彼に近付きながら、こんなに胸が広かったんだと不思議な気持ちになったのを覚えています
彼に招かれた両手の中で、私は直立不動で彼の一挙一動を待っていました
しかし何のアクションもありません
ん?と彼を見上げると、ビクッと震えた彼と目が合いました
至近距離でこんな風に見上げるのは初めてで、彼の顔が羞恥の色に染まっていた事よりも
「大きな男の人になったんだなぁ」という事に気を取られました
何気なしに「しないの?」と聞くと同時に、ゆるりと彼の両腕で体を締め付けられました
「ごめんね、心臓の音まじうるさいけど、ごめんね」
私の耳元でそう言った彼の心音は、確かに大きく動いていました
それはもう私に伝染する程
ちょうど彼の左胸に頬を寄せる感じで抱きしめられていたので、彼の胸の音がダイレクトに伝わります
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なんだかとても大変なことをしているような錯覚に陥って、
もはやこの心音が私のものなのか彼のものなのか解らなくなっていました
ゆるめに抱きしめられていたけれど、最後にぎゅーーーーーって強く抱きしめられ、彼は私を離しました
そして私に背を向けると、大きな深呼吸を何度も繰り返していました
あの時と同じだ、と思いました
幼い彼が私にキスをしたあの時
その時も彼は何度も大きな深呼吸をしてた
今も昔も私に触れる時は息を止めてしまう彼に、私は胸が弾むような感情を抱きました
初めて、彼を「愛しい」と思いました
「どどどどどうでした?大丈夫でした?満足ですか?あはははは」
どうも私は焦ると喋り倒す習性があるようでwつい雰囲気をぶち壊しにかかりました
彼は両手で顔を覆い「ウン、イヤ、ウン、ウン、えっと、うん」と繰り返しました
「なに」と焦って聞き返すと「ゆうちゃん小さいね」と
相変わらず両手で顔を覆いながら答えました
「やかましい!けんごが大きくなったんだよ!ばか」
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と、つい喧口華腰になってしまう私に
「可愛くてやばい」
彼がそんな反則的な言葉を呟いた時、
なんだかいてもたってもいられなくて彼に背を向けてしまいました
だってどんな顔すればいいのか解らない
もう何がなんだか解らない
ただただ、震えるほどにドキドキしていました
一瞬衣擦れの音が聞こえ、咄嗟に後方を意識した時には、再び私は彼の胸の中に収まっていました
後ろから私の肩を両腕で抱きかかえて、私の髪に顔を埋める彼
彼の呼吸が私の髪を通り抜け、私の首に触れました
初めての息遣いにゾクゾクしました
でも不愉快なそれではなかった、嫌でも彼を意識してしまうそれでした
そして彼は何度も何度も繰り返しました、「好き」と
言葉の回数の分だけ、彼の腕の力も強くなります
もう泣きそうになるくらい、どうすればいいか解らなかった
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でも息が上がるほどドキドキしていました
「ゆうちゃん好きだよ」「ゆうちゃん好きだよ」「ゆうちゃんごめんね」「ゆうちゃん好き」
何度も何度も、絞り出すように吐き出す彼に、私は逃げ出したくなりました、と言うか逃げました
「任務完了!」とかなんとか可愛げのない事を言って彼を振り解き
「じゃあね!また!」と顔も見ずに走って帰りました
震えるほどにドキドキしたのは初めてで、家に帰ってもしばらく動揺し続けていました
あんな去り方をしてしまったことを彼に詫びなければならないのに
一人置いてきぼりにされて、彼はきっと不安でしょうがないだろうから
でもメールの一つさえ私はできなかった
なんて送ればいいか解らなかったし、今は自分の気持ちを整理したかった、少し時間が欲しかった
でも、その日の夜更け、彼からメールがきました
そのメールを開くのすら躊躇してしまった私
しばらくしてやっと開いたメールには、こう綴ってありました
「キモかったよねごめんね」
「ゆうちゃんの彼氏にも悪いことした、本当にごめん」
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「もう俺ゆうちゃんのことちゃんと諦めるから大丈夫だよ、今までごめんね」
絵文字の一つもないそのメールに、彼を深く深く傷つけてしまった事
いえ、何年もかけて傷つけ抜いていた事を改めて実感しました
「諦めるから」
彼のその言葉に当時ひどく動揺したのを覚えています
確かに私は自分の気持ちが解らなかった
けれど今日あんなにドキドキした
今日初めて彼を愛しいと思った
そんな感情を知った矢先に、彼から離れていってしまうなんて、私は傷ついていました
こんな自分勝手なことあってはならないけれど、
今まで彼をずっと傷つけていたのは私だけど、ひどい喪失感に打ちのめされていました
考えるのを放棄するように、私は彼のメールを無視しました
これでまた一つ新たに傷つけてしまったと、初めて彼を思って泣きました
春休み中に彼とバッタリ会うことはありませんでした
勿論連絡も取っていませんでした
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けれど、あの日から一度も彼を意識しない日はありませんでした
寝ても覚めても彼のことばかりでした
けれどそれは傷つけた罪悪感に過ぎないと結論付けることしかできませんでした
今更彼に好意を持つなんて、そんなのあってはならないことだと思っていたから
新学期が始まり、私は元彼とまた連絡を取り始めていました
きっかけは元彼からのメールだったけれど、私にはありがたかった
早くけんごのことを頭の中から排除したかったからです
元彼は、昔のような誠実な人ではなくなっていました
私が元彼を引きずっていた期間があると知ると、体を求めてくるようになりました
一度本気で好きになった人だし、振られた事でずっと心の中で引っ掛かっていた人だから
私は元彼を受け入れました
あわよくばまたこの人と復縁できないだろうか、とも考えていました
全ては、けんごのことを考えたくないからです
元彼と会う度に感じる虚無感には気付いてない振りをしていました、最悪です
そんな中身のない日々が初夏まで続きました
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学校生活や、元彼との不誠実な関係には慣れました
けれどけんごがいない生活にはいつまでも慣れませんでした
会いたい、と思うことすらありました
もはや元彼の存在理由が何だったのか、自分でも忘れていました
一度だけ、自宅付近で彼を見かけました
自転車に乗った彼が、私を追い抜いて行ったのです
走り去っていく彼の後ろ姿しか見えなかったですが、
ふいに香った懐かしい彼の匂いや、初めて見た高校の制服姿に胸がひどく痛みました
私を追い越すとき、彼も後ろ姿の私に気付いてくれただろうか
気付きながらも、するりと追い抜いて行ったのだろうか
説明しようのない感情が私を襲いました
寂しさ、もどかしさ、切なさ、自分への嫌悪感
その場に倒れ込みたい衝動を必タヒに抑えて、歩みを進めました
薄着になり日が高くなり始めた頃、ついに彼と鉢合わせました
ロビーでオートロックを解除している時、後ろから現れたのが彼でした
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心臓が止まるかと思うほどの衝撃でした
片方の口角を上げて、彼は複雑そうに私を見ました
「ひさしぶり」
本当に久しぶりな彼の声に、胸がドキドキと高鳴り、チクチクと痛みました
「ひさしぶりだね」かすれた声しかでませんでした
せめてもっと可愛い声を出せたら良かった
「学校慣れた?」そう尋ねながら、彼が横に並んで歩いてくれています
ただそれだけの事があまりにも懐かしく、あまりにも嬉しく思いました
昔はこれが当たり前だったんだよな、と胸が締め付けられる思いでした
当たり障りのない近況報告をし合い、二人でエレベーターに乗り込みました
私は馬鹿みたいに一人でずっとドキドキしていました
「ゆうちゃん、俺彼女できたよ」
彼が私から目を逸らし、控え目な笑みを浮かべてそう言いました
言葉が出なかった…喉元が一気に締めつけられて、息が止まるかと思いました
そんな私が上手に笑顔を作れるわけもなく
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ただ「そうなんだ」と発するだけで精一杯でした
そんな時にエレベーターが私の階に到着
逃げ出したい衝動から、私はそそくさと出て行こうとしました
「なんでおめでとうとか言ってくんないの?」
彼が[開く]のボタンを押しながら言いました
「何そのリアクション」
「ゆうちゃんはホッとするとこじゃん」
「なんでお祝いしてくんないの?」
堰を切ったように、彼は吐露し続けました
彼の怒りを含んだ声を聞いたのは初めてでした
けれど怖いとかいう感情はなくて、ただただショックで呆然としていました
しばらくの沈黙の後「ごめん、行って」と彼が静かな声で私を促しました
言われたままに、ノロノロとエレベーターから降りることしかできない私
エレベーターが閉まった時、ガラスの向こうの彼と目が合いました、犬みたいだと思いました
こんな時に相応しくない感想かもしれないけど
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昔、哀愁を背負っていた彼をそう例えていた時のように、犬みたいだと思いました
エレベーターが事務的に上昇していったけれど、私の胸は少し綻んでしまいました
鼻の奥はツンとしていたけれど、唇を噛みしめなければ泣いてしまっていたけれど
彼の犬みたいな瞳を思い出して、少し微笑ましい気持ちになったのです
ほんのりと胸が暖まったところで、一呼吸おいて冷静になれました
祝福しなければ、と思いました
でないと、彼が自分の幸せを、自分の新しい恋を手放しで喜べないだろうと思ったからです
ずっと好きだった私に「幸せになってね」と言われれば、彼は私から解放されるのだろう
彼がさっき言っていた「なんでおめでとうとか言ってくんないの?」は、
きっとそういう意味を含んでいるのだろう
「さっきは何も言えなくてごめんね、おめでとう!幸せになってね!」
「寂しくて、つい言いそびれちゃったけど本当にけんごの幸せを祈ってるよ」
私は彼へこんなメールを送りました
いわゆる強がりだけど、私の方がお姉さんなんだから、これくらいどうって事ない
私が彼氏できたって言ったら、けんごは「良かったね」と言ってくれた
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私に怒りをぶつけることなく黙って話を聞いてくれた
いつも私のために強がってくれた、折れてくれた、譲ってくれた、我慢してくれた
今度は私の番だと思いました
けんごのことはとても好きだけど、笑って送り出してあげなければ
けれど彼からの返事は意外なものでした
「寂しかったってどういう事?」
ただその一文だけでした
この返事は予想だにしてなかったので、少し戸惑いました
でも最初で最後に、少しだけ素直になってみました
「けんごに彼女ができちゃって寂しかった、自分勝手でごめんね」
こんなメールを送った私は、きっと女の敵ですね
私が彼女だったらイラッとしますもん
でも最後だから送ってしまったのです
「なにそれ(笑)ゆうちゃんにも彼氏いるじゃん」
彼からのそのメールで、確かに元彼と別れた事を伝えていなかったのを思い出しました
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「別れたよ」
そう送った返事は、
「でも最近ゆうちゃんとあの人が一緒にいるとこ見たよ」でした
この返事が来たときには頭が真っ白になりました
セフレといるところを見られたわけだから
一番見られたくない相手に見られていたなんて自分の浅はかさを恥じました
どこまで説明すればいいか解らず、散々悩みました
セフレ扱いされてるだなんて、言えるわけなかった
それに私ばっかりがヒガイ者なわけじゃない
寂しいときに彼を利用したのは私だ
かと言って、ただの友達だと嘘をつくのも気が引けて
「寂しいときに一緒にいてもらったんだ」そう送りました
またも彼からのメールは予想外のものでした
「今から会える?」
彼からの唐突な誘いに戸惑ったけれど、
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何か吹っ切れたような気もしていたので、うんと答えました
そしてロビーで待ち合わせ
切なさもあったけれど、久しぶりのシチュエーションを少し喜んでいました
エレベーターが開く音がして、さっき振りのけんごがそこには居ました
どんな顔をすればいいか解らなかったけど、
けんごの顔がさっきより幾分穏やかで私の頬も少し緩みました
「少し散歩しようか」
彼の提案で、久しぶりに図書館までの道のりを歩きました
急に会おうと言い出した彼には、きっと何か話したいことがあるんだと思いました
そしてそれはきっと彼女の事だろうと予想もついていました
笑ってお祝いしなくちゃ、と思いました
さっきできなかったのだから、次こそは、と
「もうあの人に会うのやめてほしい」
彼が唐突にそう言いました
「あの人って、元彼?」
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「そう」
まさかこんな話だとは思いもしてなかったので、かなり驚きました
しかも彼のその言い方に、私と元彼の不誠実な関係を
読まれてるんじゃないかという不安も生まれました
「なんで?」
ずばり言い当てられるのかもしれないと思いつつも、そう尋ねました
「寂しい時は俺を呼んでほしいから」
「ゆうちゃんが俺に彼女できて寂しいって思ったのは
 恋愛の意味でじゃないかもしれないけど…」
「でも、ゆうちゃんが寂しいって思うなら、俺はもう彼女は作らない」
「今の彼女には悪いけど、俺、ゆうちゃんの気持ちに全部応えたいって思った」
「きもい?俺きもいよなー」
彼はそう言いながらも、満面の笑みを見せてくれました
私はというと、胸がいっぱいで、みるみる涙が目に溜まっていってるのが解りました
私は本当に自分勝手な人間なので、嬉しかったのです
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こんなの、彼女さんに悪い、けんごにも悪い、解っていても本当に嬉しかった
同時に、彼に抱きしめられたあの日から続いた地獄のような日々が思い出されて
まさかこんな日が来るなんてって夢みたいに思えて
「けんご、私けんごのこと好きになっちゃってた」
思わず、号泣しながらそう告げてしまったのです
「えっ」またあの鳩豆顔で彼が驚きました
「好きって恋愛のやつ!?」
「うん」
「まじか!!!」
よっしゃーーーーーーーーーと、嘘みたいに漫画みたいに
両方の拳を突き上げる16歳が愛しくて愛しくて堪らなかった
なんだかホロホロ涙が止まらなくて、そんな私を見て彼は
「え?あれ?どうしたの?でも俺嬉しいし、あれ?」
とアタフタし出すし、それはとてもカオスな状況でしたw
少し落ち着いた頃、
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「いつから?いつから好きになった?」
見えないけど尻尾をぶんぶん振りながら彼は聞きました
「抱きしめられた日から」と答えると、
「そっかーーーー!!!…あれ?でも割と最近だね」と一喜一憂する彼
私の気持ちもパンッパンッになってて、もうパンク寸前で
一度好きだと伝えると何度も伝えたくなって
「かわいい」「すき」「かわいい」と何度も繰り返しました
顔を真っ赤にしてキャッキャッと喜ぶ彼を見ていて、何だか本当に嬉しかったです
そして図ったかのように、私たちが出会った図書館の前で、あの春振りに抱き締められました
「ゆうちゃん、長かったよ」
彼が私の耳元でそう呟き、その声が少し震えていて、小学生だった彼を思い出しました
なんだかあの眼鏡の少年が堪らなく愛しく思えて、ふと上を見上げると
半ベソかいてる愛しい高校生がいて「かがめ!」と言ってチューしたったです
唇を離して「三年振りだ」と冷やかすように笑うと、バツが悪そうに彼はハニカんでいました
二人で浮き足立って、手を繋いで帰りました
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「俺達、彼氏彼女?」
「いや、飼い主とペット」
「」
「けんごは柴犬」
幸せってこういう事か、と痛感した帰り道でした
そして、けんごは彼女さんと別れてくれました
本当に申し訳ないことをした、と落ち込んでいるけんごを見て、私も申し訳なくて苦しかったです
けれどけんごが「でも俺嬉しい気持ちの方が強いから」そう言って、手を握ってくれました
「俺がんばるからね」
こうして私達のお付き合いは始まりました、彼が16歳、私が19歳でした
私は近所のコンビニで週3,4程バイトを始めました
終業時刻に彼が迎えにきてくれるのが習慣になり
遠回りを沢山して帰るのが私達のデートでした
「神聖な職場だから!」
と、肌寒い季節がやってきても彼はコンビニの中で待つことなく
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少し離れたガードレールに座っていつも私を待っていました
私が出てきたら嬉しそうに立ち上がってくれる姿が可愛かった
近所なのにいつも少しお洒落をしてる姿が可愛かった
週末バイト休みだよと伝えると、「遊べる?」と喜んでくれるのが可愛かった
でも私はそんな愛しい彼のことを、陰で裏切り続けていました
私はまだ19の小娘でした
私の周りだけかもしれませんが、このくらいの年頃の女の子は
「年上の男性」「社会人」と付き合うのがステータスになっていたように思います
特に私達は女子校上がりの女子大生だった為、
周りに同級生の男子がおらず、どんどん夢見がちになっていました
「今の彼氏は社会人」
「年上の彼氏はなんでも買ってくれる」
「やっぱり付き合うなら年上だよね」
繰り広げられる友人達のガールズトークに、私は笑顔で賛同するのです
「年上の彼氏が欲しい」と言う友人には「欲しいね」と返し、
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「ゆう彼氏いないの?」と言う友人には「いないよ」と返しました
今となってはなんてくだらない思想なのだろうと思えるけれど、
当時私の生きる世界で「高校一年生と付き合っている」なんて、とても言えなかった
昔から彼の年齢を気にし続けてきた私には尚更でした
「友達にゆうちゃんのこと自慢してるんだ」
とハニカむ彼に、私はいつも後ろめたい気持ちでいっぱいでした
彼の学校行事に誘われても、私は首を縦に振りませんでした
けれどこんな私に罰が当たりました
その日は珍しく街中でデートをすることになっていました
お互い先に別件の用事があったから、街中で待ち合わすことになりました
私が先に到着し「ゆうちゃん」と声をかけられ振り返ると、
そこには制服姿の彼がいました、少し戸惑ってしまいました
けれど溢れんばかりの笑顔を向ける彼に、この戸惑いを悟られるわけにはいきませんでした
「(休日だけど)今日学校だったの?」と何食わぬ顔で聞きました
「昨日までに提出しなきゃだったプリントを出しに行ってたんだ」
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確か彼はそんな風に答えたと思います
「じゃぁ何しようか」と目を輝かせる制服姿の男の子
そうだ、彼には何の罪もないのに、
こんなに屈託無い笑顔を向けてくれているのに、私はなんて事を気にしているんだ
そう自分に言い聞かせ、嬉しそうに前を歩く彼について行きました
美味しそうにご飯を食べたり、何をするにも楽しそうだったり、
そんな彼に癒されながらも私は、人の目を気にしていました
自意識過剰もいいところです
世間から見たら、制服姿の男の子と
どこからどう見ても化粧覚えたての女の子が一緒にいることなんて
何の違和感もないのに本当に馬鹿げています
「プリクラ撮りたい!」
そう彼が言いだした時、少し躊躇した自分がいました
けれど私も二人が一緒に写ったプリクラが欲しかったから「いいね」と快諾しました
初めて二人で撮るプリクラに私達はハシャいでいました
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カメラの前で抱き締められたり、
落書きに「大好き」と書かれたり素直にどれもこれもが嬉しかった
二人で浮かれながらシートが出てくるのを待っていたとき
ふと目を向けた先の光景に私は絶句しました
大学の同級生二人が、笑顔でこちらを見ていました
「やっぱりゆうじゃん!」
同級生二人が駆け寄ってきます
「友達?」彼が私に問います
「初めましてー、ゆうと同じ講義取ってます○○です」
同級生はそう言いながら、彼のことを値踏みするような目で見ます
「え、もしかして、ゆうの彼氏?」
同級生の一人が声を弾ませ尋ねます
「あ、えーっと、はい」彼が嬉しそうに答えます
「えーーー!!!」同級生二人が騒ぎます
私一人、下手くそな笑顔を貼り付けて、
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早くこの場を切り抜けなきゃと、ただただ焦っていました
お願いだからこれ以上話を振らないで、そう同級生二人へ強く思いました
勿論そんな私の願いなんか知る由もなく、彼女達は楽しそうに
「もー!ゆうずっと彼氏いないって言ってたじゃーん」と言いました
私は彼の顔を見れませんでした
同級生達はまだ続けます
「え、制服だよねー?○○高だー!」
「ねぇねぇ何年生?」
聞かれてしまった、と思いました
それはこの瞬間一番触れられたくないワードだったのです
「高三です」
彼がそう答えたとき、心臓を強く強く殴られたようでした
「じゃぁ一個しか変わらないねー」
そう騒ぐ同級生達の声が遥か遠くに聞こえました
嘘をつかせてしまいました、何も悪くない彼に、嘘を
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「じゃぁゆう!また来週!」
同級生達は満足げに帰っていきました
私はけんごの顔を見ることができませんでした
知られてしまった、私がけんごの存在を隠していたことを知られてしまった
頭の中でグルグルと言い訳を考えていました
「ゆうちゃん行こうか」
彼の声が優しくて、いたたまれなくなりました
謝らなきゃ、そう思い口を開いた瞬間、
彼は出口へスタスタと歩いていってしまいました
小走りで追い掛け、やっと彼の横に並べた時に「ごめんね」と声をかけました
彼はスタスタ歩きながら、ううんと首を振りました、口元に笑顔を浮かべて
そんな顔をさせてしまった自分が本当に情けなくて何度謝っても足りないと思いました
「でも」
彼が歩みを進めながら、前だけを見ながら、口を開きました
「本当に18なら良かった」
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悔しそうに顔を歪める彼を見て、言葉を失いました
何か言わなきゃ、そんなことないよって言わなきゃ
でも今更何か言っても、全部が嘘臭くなってしまう
言葉を探しながら、彼の歩幅について行きました
そんな私に気付いた彼は、私に歩調を合わせ、
「恥ずかしい思いさせてごめんね」
まるで自分が悪いみたいな顔で、私に謝りました
泣いてしまうんじゃないかと思いました
それくらい苦しそうな顔をしていました、でも私は何も言えませんでした
「先帰っていい?」彼は私を見ずにそう言い「気をつけて帰るんだよ」と付け加えました
そしてスタスタと歩いていきました
彼の背中を見送り、私はふらふらと周辺にあったベンチに座り込みました
「恥ずかしい思いさせてごめんね」
彼の言葉がグルグルと頭を巡っていました
そうです、それが全ての原因です、私は彼を恥じていたのです
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彼と付き合っている事が人に知られるのは、恥ずかしい事だと思っていたのです
何が恥ずかしいか、それは彼が高校一年生だということでした
でもそれはけんごのせいではない
そうです、けんごは何も悪くないのです
むしろ彼は、とても優しいのに、とても暖かいのに、とても私を好いてくれているのに
私は彼が3つ年下というだけで、彼がまだ高校生というだけで彼の人間性を全てないがしろにしたのです
彼という人間を否定したのです
恥ずべきは自分自身のモラルの低下でした
私はまた自分本位に彼を傷つけたのです
彼を本気で思いやることなく、ただ自分のことだけしか考えていなかった
それがこうして結果となって表れました
彼の後ろ姿を思い出しました
いつもこういう時は、小学生だった彼の後ろ姿を思い出します
そして今日の彼の後ろ姿
彼の傷ついた後ろ姿を放っておけないと思いました
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傷つけたのは私だけど、会いたいと思いました
会いたくない、別れたい、嫌いになった
そんな風に言われるかもしれないけど、彼に会いたいと思いました
謝りたいと思いました、気持ちの全てを話したいと思いました
こんな考えも自分勝手な考えに変わりないのだけど、
私は「会いに行ってもいい?」と彼にメールをしました
「今日?」と返ってきたメールに「今日」と返しました
しばらくして「解った」と返信がきて、すごく安堵したのを覚えています
私はその足で彼の家に向かいました
「玄関開いてるから入ってきて」という彼のメールに従い
彼の部屋ノブをドキドキしながら回しました
そこには、ドアに背を向け、ベッドに寝転んでいる彼が居ました
制服がシワクチャに投げ捨てられていました
私はベッドの前に座り込み「けんご」と声をかけました
「うん」彼が小さな声で返事をしてくれました
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「けんごにね、話したいことがある。いい?」と尋ねると、彼はしばらく黙り込みました
「聞いてほしいんだけど、だめかな?」
そう再び声をかけると、けんごはガバッと上半身を起こしました
「ゆうちゃん待って、俺に先に話させて」
私の方を向かない彼のその申し出に、私は別れの言葉を覚悟しました
「俺ね、全然気付いてなかった」
「普通に考えたら、3つも年下の彼氏なんか恥ずかしいに決まってる」
「ゆうちゃん達からしたら全然ガキだよね」
「俺馬鹿だからそんなの全然気づかなくて、ゆうちゃんを学園祭に誘っちゃったり
 ゆうちゃんの友達に彼氏だって言っちゃったり」
「嫌だったよね、ごめんね」
彼から出てくる言葉は、全て自分を責めるものでした
私は首をブンブン横に振りながら聞いていたけれど、
彼はそれに触れず、更に言葉を続けました
「あのね、友達には俺のこと話さなくていいし、
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 何なら今日みたいに俺の年齢嘘ついてもいいから」
「って言うか、俺もう制服で一緒に歩いたりしないから」
「だから俺がハタチになるの、一緒に待ってくれない?」
彼の言葉の真意が掴めなくて、ただ素直に「え?」と聞き返しました
「あのね、俺がハタチになったら、ゆうちゃんは23になるよね」
「俺が30になったら、ゆうちゃんは33になるよね」
「俺たちがもう少し大人になったら、3つの歳の差なんて
 今みたいに言葉にしてもそんなに気にならなくなると思うんだよ」
「だから、3つの歳の差を恥ずかしいと思わなくなる歳まで、とりあえず一緒にいてほしい」
「それまで、周りには俺の存在隠してていいから」
この時の感情を言葉にするのはとても難しいので
率直に言うと、とてもけんごを好きだと思いました
こんな事を思い付けるけんごを、こんな風に私のことを思ってくれるけんごを
間違いなくこの瞬間、私はけんごに二度目の恋をしたと思います
だけどそんなけんごに惚れ惚れしてる場合じゃありません
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けんごの間違いを正さなければ、そして自分の気持ちを伝えなければ
「なんでけんごが謝ったり自分を責めるようなこと言うの」
「けんごが年下なのは、けんごのせいじゃないでしょ」
「どれもこれも、歳の差を恥じた私が悪いんだよ」
「こんなに素敵な彼氏が居るのに胸を張れなかった自分が、何より一番恥ずかしいよ」
「本当にごめんね、ハタチまでとか言わないでよ」
「別にけんごがハタチにならなくたって、私、今からでもみんなにけんごを自慢したいよ」
「私の彼氏は16歳なのに、私より全然大人なんだよって」
「私の彼氏はすっごく可愛くてかっこいいんだよーって、16歳のけんごを自慢するよ」
「だから、年齢なんか気にしないで、ずっと一緒にいようよ」
恥ずかしながら、最後はもう泣きながらの訴えでした
でも彼も泣いていました、久しぶりに、いや初めて彼のこんな涙を見ました
しばらく二人でグシグシ泣いていました
私が返事を促すように手を握ると、うんうんと頷いてくれました
そして私は一つ提案をしました
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「本当の恋人同士になろう」と
そうすれば今みたいな不安は全部吹き飛んで、自分達の関係に自信が持てるはずだからと
そう言うなり私は上着を脱ぎました
やっと言葉の意味を理解したらしい彼は、目を見開いてイヤイヤしました
「駄目だよゆうちゃん」
「なんで?」
「いや、親帰ってくるし!」
「気になるならウチでもいいよ」
「いや、違う、そういうことじゃなくて!!!」
アワアワと騒ぐ彼の意味が分かりませんでした
正直言うと、喜んでくれるんじゃないかと思っていたのに
「いや、だって、俺、ゆうちゃんのこと昔から知ってるじゃん」
「なんか昔からゆうちゃんは俺の中でキラキラしてて」(?)
「だから未だに俺ゆうちゃんを抱きしめるだけでも凄い緊張するのに」
「俺こんなだから、多分ゆうちゃんと最後までなんてできないよ」
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顔を真っ赤にし、眉毛を八の字にして騒いでいる彼
「何その言い方、じゃぁ他の子とするわけ?」
しびれを切らしてこんな言い方をすると、
「いや、そういうわけじゃないけど、でも、ごめん、今日は無理」
彼は涙目でそう答えました
元彼とだいぶ勝手が違うので戸惑いました
でも二人の関係に何かしら自信をつけたかった私は、
「じゃぁそれとは別にもう一つ、本当の恋人同士しかしてはいけない行為がある」と第二候補を上げました
まぁベロチューだったんですけど、彼はそれすら嫌がりました
「まだ歯磨いてないし」とかなんとか言って騒ぎます
「じゃぁいいよ」
これでも一応恥を忍んで提案していた私は、ふて腐れて見せました
まぁ本当に恥ずかしかったんですが
「じゃぁ言うけど」彼はそんな私を見て口を開きました
「情けないけど俺、そういうの全部初めてなんだよ」
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「だから多分上手にできないし」
「ゆうちゃんは彼氏としてただろうけどさ…」
最後の言葉につい「ごめん…」と反応してしまいました
しばらく重い沈黙が続き、けんごが「あーもーやだ」と声を上げました
「ゆうちゃん元彼とそんなことしてたんだよね、いや、そうだろうなとは思ってたけど」
唇を尖らせて彼は憤慨していました
そうだ、私はお古なんだ、と思いました…私も初めてなら良かった
私も全部の初めてをけんごと共に経験していきたかった
なんだか神聖なものを前にして、自分はすごく汚れていると、
相応しくないのだと、自分の気持ちが沈んでいくのが解りました
私のそんな様子を見て、けんごは「ごめんね、ヤキモチだから」と申し訳なさげな声を出しました
気を使わせないような態度を取ったつもりでしたが、けんごは何かを感じ取ったようで
「ゆゆゆうちゃん、やっぱりチューしていい?」
くぐもった声でそう言いました
「いいの?」と私は聞きました
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それは「私でいいの?」という意味を含んだものでした
「したくなったっ」と目尻を下げて笑う彼を、大好きだなぁと思いました
きっと、無理してるだろうな、と思ったから
確かに彼のそれは不器用で不慣れなものだったけれど、
「ちゅーってこんなにいいものなんだ…」と呆けながら呟く彼が馬鹿馬鹿しくて愛しかったです
それからしばらく段階を踏んで、その歳のバレンタインに一線を越えました
お気づきでしょうが、生々しい描写は避けております申し訳ないです
ただ事後に二人で感動して泣いたことだけお伝えしておきます(耳打ち)
「俺が18になったら結婚する?」と雰囲気に呑まれて言っちゃう子供の彼に、
「ううん、それから4年待ってる」と告げました
「子供の頃けんごに沢山待っててもらったから、次は私の番だよ」と
彼には大学へ行ってもらって、就職に就いてもらわねば、と思ったのでw
そんな感じで私達の交際は順調に続いておりました
特筆すべき大きな喧口華もありませんでした
彼との思い出を少し語るとするならば、
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彼が高3の体育祭「応援団長になったから見にきて」と誘われて、
初めて彼の高校行事に参加しました
頑張る彼を見ていて誇らしかったけど、少し恥ずかしかったのを覚えていますw
演目が終わり、彼に声を掛けようとしましたが、
彼の周りは後輩女子でいっぱいで気が引けました
そんななか「ゆうちゃん」と声をかけてきたけんご
後輩女子の視線は一斉にこちらに向きました
「年上じゃん、あれ」と、jkに「あれ」扱いされたことを今でも鮮明に記憶しています
そして彼の高校の卒業式も出席しました
校庭に出てきた彼が一目散にこちらへやってきて、制服のボタンをくれました
嬉しかったけど、少女漫画のヒロインになったようで赤面しました
しかもその光景を彼の同級生達がキャーキャーはやし立てて
タヒぬほど恥ずかしかったのを覚えています
あとは彼が大学生になり、19の歳に一人暮らしを始めたので
半同棲を経て、今一緒に暮らしています
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ちなみに私は短大を卒業して、接客業に励んでおります
それで長くなりましたが、やっと 本題です
先週の金曜日の話です
「ゆうちゃん…」
居間のソファーに腰掛けてテレビを観ている私に、けんごが声を掛けてきました
その声は今にも消え入りそうなか細いもので、より一層私の神経を逆撫でました
「なに?」私はテレビから目を逸らさず、できる限りの冷たい声で答えます
先週始めから私はずっとこんな調子でけんごに接していました
「話したいことがあるんだけど、いい…?」
彼の「話したいこと」の内容は、すでに察しがついていました
先週いっぱい続いた彼の目に余る不自然な言動を前にして
察しのつかない人間がいるでしょうか?それ程に彼はあからさまだったのです
「…あのね、俺、多分浮キしました」
えぇえぇ、そうでしょうね
鳴る回数が増えたメールの着信音も、私の前で出ることが無くなった電話も
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私が寝たのを見計らって外に電話しに行くさまも、全てそれを物語っていましたよ
「そんなのとっくに知ってますけど?」と、
つい即答しそうになったのをグッと飲み込み、私は問います
「多分って何?」
自分でも驚くほど淡々とした声が出ました
この一週間、心の準備に要する時間は
それはもう有り余るほどにあったのですから、当然っちゃ当然ですが
「それは、いや、あの」
ソファーにふんぞり返るように座った私の前で、彼は居心地悪そうに立っていました
「座って」私の指示に、彼は軍人のような機敏な動きで三角座りしました
「相手は誰」もはや語尾を上げて疑問系にするのすら面倒でした
「ゼミの女の子の…友達」誰だよ、と思いました
「どんな流れで」私は声のトーンを一定に保ち尋ねます
「ゼミの飲み会にその子も来て…なんかずっと俺の隣にいて…」
いちいち私の反応を待って話す彼に苛立ちを覚えたので、敢えて相槌を入れないようにしました
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「前から俺のこといいって思ってたとか言われて」
「二次会のカラオケにもついてきて、なんか最後までいて」
「でもその子最後潰れてて…、解散ってなった時、
 その子は俺が何とかしろってみんなに言われて」
「家まで送ってあげたら、鍵が見あたらないって言い出して」
「俺が鍵見つけてあげて、鍵開けてあげたら、フラフラって玄関に座り込んじゃって」
もうこの時点で、それなんて漫画?状態でした
「完全狙ってんじゃんその女、ホイホイ乗せられて馬鹿じゃないの?」
思わず飛び出しそうになったその言葉達もグッと飲み込んで「続けて」とジェスチャーしました
「体支えてあげて、その子んち入って、座らせてあげようとしたら抱きつかれて」
はいはいテンプレテンプレ
「チューされて」
そろそろ胸糞悪くなってきました
「そのままベットに連れてかれて」
「もういい」私は制しました
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「なんであんた達のプレイの行程まで聞かなきゃいけないの」
「いやプレイもなにも・・・」
「ヤッたんでしょーが」
「いや最後までは」
「証拠は?ヤッてない証拠」
「…その子に聞いてもらえれば…」
「無理に決まってんだろ本気で言ってんの」
「そうだね…ごめん」
「なんでよ」
「え?」
「もしそれが本当なら、なんで最後までやんなかったの?」
「え、いや、あの」
「なんでよ」
「萎えた…から」
「なんでよ」
▼ 次のページへ ▼
「え」 
「なんで萎えんのよ」
「ずっと最中にゆうちゃんの顔がチラついてて…」
ィィィィイラッッッとしました
「で、彼女の事忘れてとか言われて…その瞬間バーンってゆうちゃんの存在が大きくなって…なんか萎えt」
「あんたの不能を私のせいみたいな言い方しないでよ!!!!」
一貫して保っていた声のトーンが大幅に上昇しました
「いや、そういうつもりじゃ…」
こんな時にまで子犬のような目で私を見る彼に、沸点が最大値まで跳ね上がり
もう!!!!と何故かクッションに一喝しました
部屋の中に私の荒ぶる呼吸音だけが響いていました
彼は怯えながらも視線を私から外しませんでした
「それで?」私は息を整えながら続けました
「私にその告白をしたと言うことは、私と別れようと思ってるの?」
彼はぶんぶんと首を振りました
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「そうじゃなくて、最近ゆうちゃんの機嫌が悪かったからバレてるんだろうなって思ってた」
「それで、もうバレてるのに張本人が素知らぬ顔して謝罪しないってのは…最低だなって思ったんだ」
彼は真っ直ぐな目で私にそう言いました
「ゆうちゃんごめんなさい」
「一時の気の迷いとは言え、一番大事にしなきゃいけない人を裏切ってしまった」
「凄く凄く傷付けたと思うから、許してほしいなんて言えない」
「ゆうちゃんが別れたいって言うなら、俺は従わないといけない、ゆうちゃんが決めてほしい」
私は彼に問いました
「その子のこと、好きなの?私と別れたら、その子に行くの?」
この時ばかりは情けない声が出たと思います
「それはないよ」
「こんな時に言うのもアレだけど、今回のことで、
 俺やっぱりゆうちゃんじゃないと駄目なんだって実感した」
「…何言っても浮キ男の下手な言い訳にしか聞こえないだろうけど」
それに、と彼が付け加えました
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「多分俺今振られても、またゆうちゃんに告っちゃうと思う」
「自分でも、なんでこんなに一人の人間に執着できるのか謎だけど、」
「ゆうちゃんはもう…なんか俺の人生、みたいな」
ほだされまい、と思いました
いくら目の前に座った男が十年来の付き合いであろうと
彼の目や仕草や滲み出ている雰囲気が、全く嘘の色をしてないことに気付いている自分がいようと
あっさり「もういいよ」「けんごの気持ち、嬉しいから」なんて、
やすやすと許してあげるわけにはいかないのです
私には言わねばならぬことがありました
「私が今から言うことは、もう金輪際二度と言いたくないことだから」
「一度しか言わないから、よく聞いて」
けんごが背筋を伸ばし、頷きました
「あのね、けんごが私以外の女に目を向けてしまうのはしょうがないことだと思うの」
「それはごくごく自然なこと、だってけんごは私しか女を知らないじゃん」
「遊びたい盛りの男の子を、私がずっと独り占めしてしまってる」
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「だから君がよその魅力的な女の子に目がいくのは、男としてしょうがないこと」
「でも、解ってても、それが私の目に付くのは嫌なの」
「もう何年も付き合ってるのに、余裕でヤキモチ妬けちゃうの、いい気がしないの」
「だから、やるなら、1ミリも私に気付かれないよう、上手くやんなさい」
「今回のあんたは最悪だったよ、バレッバレの上に、おずおずと白状しちゃってさ」
「オドオドするくらいなら最初からするな!やってしまったなら徹底的に隠せ!」
息継ぎなしでまくし立てたので、最後はハァハァ言ってました
そして目の前には、唇を真一文字に結び、私をジッと見てるけんご
「すごいね、ゆうちゃんは」
彼が視線を床に落として言いました
「俺がゆうちゃんだったら、そんなこと言えないよ」
「やるなら上手くやれ、なんて、多分俺だったら…どうなるんだろう」
「想像もつかないけど、今のゆうちゃんみたいなことは言えない」 
少し黙り込んだあと、
「いやはや、惚れ直しました」
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目尻の下がった苦笑いで彼がそう言ったとき
私も大概頭が沸いているんでしょうね、悪い気がしませんでした
「あのね、私多分けんごのことを根っから信用してるんだよ」
「小さな頃から私だけに愛情を注いでくれたんだもん、そりゃ嫌でも信用しちゃうよ」
「だから、体の浮キはあっても、心の浮キはないって信じてるの」
「絶対に私のとこに帰ってきてくれるって信じてるから、こんな風に言えるんだよ」
牽制にも似たそれを、私はできる限りの優しい声で言いました
彼は相変わらず唇を噛みしめ、うんうんと頷きました
「もう絶対しないって思えるけど、もし万が一億が一しちゃっても絶対ゆうちゃんとこに帰ってくる!」
犬が忠誠心を見せ付けるように、彼は言いました
全てを言い終えたら私もクールダウンしてきて
「ま、そういうわけだから、次からは気をつけるように」
「次また私にバレるようだったら、刺すから、その間女を」
私史上最大の冷えた声で言えたと思います
ゴクリ・・・と鳴らんばかりの顔でこちらを見てた彼が印象的でした
▼ 次のページへ ▼
さぁスッキリしたところで
「一週間私に触らないで、よその女の乳揉んだ手で私に触らないで、ソファーで寝てください」
そう言い放った私に彼は絶句しました
だってそれはしょうがない、本当に嫌なんですもん
彼はその日からソファーで睡眠を取ってます
そして、なんでこんなスレを立てたのか
彼の浮キ騒動で、無意識に昔の彼を反芻する時間が増えたからです
下手くそに浮キを隠す彼に苛々しながら、
昔の彼はこうだったな、ああだったな、と振り返る時間が増えました
いざ事が解決しても、一人眠るベットの中でなかなか昔話から抜け出せない自分がいました
思い出せば思い出す程、幼い二人がなんだか微笑ましくなってきて、
文字に起こして形に残そうって思ったのです
みなさんにはそれに付き合ってもらう形になりまして、本当に感謝してます
長々と書いてる最中、私自身も昔の彼に癒されていました
あぁ彼のこんなところは変わってないなーとか、私ってものすごく幸せ者なんじゃね?とか
▼ 次のページへ ▼
色んな感情が込み上げてきて、とても実のある一週間になりました
なんだか彼に優しくなれたりしてw
ちなみに彼には「ネットにあんたのこと書いてるw」とだけ伝えました
のろけてるの?と喜ぶ彼に、初体験のこと書いたったwと心の中でニマニマしてました
そのうちバレるかなーと内心ドキドキしてます
これからも二人でずっと一緒にいられるかな、いられたらいいですね
私にはもうけんご以外の選択肢はないし、なんてプレッシャーかけてみたりw
ということで、どんどん文章が雑になっていきましたが、
私の自己満足に長い間お付き合いいただき
本当に本当にありがとうございました!!