ネカフェの店員をしていると個性的な客に遭遇する・・・なかでも【強烈だったキャラTOP5】をご紹介w

【第5位】糖質被害妄想ガイジ
初来店から、異様にどもった喋りかた。
一切こちらと目を合わさない不審な挙動。
身分証明書を求めた時に出してきた精神障.害者手帳で全てを悟った。
話し方は異様にかしこまっているのだが
何故か常に上から目線で店員全員からうざがられていた。
ある日、いきなりカウンターに来るなり
「あああなた達、ぼっ僕の部屋を覗いてるでしょう!」
「かか勝手にそういうことしないでもももらえますか!
 プライバシーのしし侵害ですよ!ほほほ法律違反です!」
もちろん、全く身に覚えがないので知らないと答えた。
「うう嘘をつかないでください!」
「部屋の中においておいた飲み物の位置がささ3センチもずれてるんですよ!」
「しかも、なななにかへっ変な味がするんですよ」
「どどど毒かなにか入られてますよ!」
「絶対にははは入った人がいるはずです!」
言ってることの意味が全く理解できなかったが
一応監視カメラの映像チェックしてみた。
当然の如く誰も部屋の中に入ったりしてなかったのだが。
ワーワー言っていたガイジを無理やり納得させて部屋に戻した。
この時点で、店全員の評価は態度がキモいガイジから害悪へとランクアップした。
以降度々部屋に入ってないか?という言いがかりを中心にもめ事は大なり小なり起こった。
特にひどいものとして
「さささきほどシャワーを利用したのですが
 こここのシャワーなななんか変じゃないですか?」
「なななにかこう……ま!魔薬みたいなものとかはは入ってたりしませんか?」
「ささっきから妙に体が、ヒリヒリすすするんですよね」
意味不明である。
そうして、どんどん皆のヘイトがたまっていく中、決定的なジ件が起こった。
いつものように、カウンターにやってきたガイジ。
「あの、これ他の人に言うとめめめんどくさいことになってしまうので
 あああえて黙っておいてあげますけど」
「ぼぼぼ僕のへへ部屋からビビビデオカメラがなななくなってるんでですよね」
「今返していいいだければ、事をああ荒げるつもりもないんで、
 だ、出してもらえますか?あなた達でしょう?」
ついに人様の事を泥棒扱いし始めた。
いきなり人のことを泥棒扱いしたことに俺と相方は、ブチ切れつつもなんとか理性を保ち
お前の部屋に興味はないし、監視カメラを見ても入ってるやつなどいないということを伝えた。
ガイジはそれでもワーワー言っていたが最終的には部屋に帰って行った。
この一件は従業員内に広がり、もう追い出してもいいんじゃないか?
出禁にしてやろうという意見が多数を占めた。
こんな空気感の中、遂に店長がキレた。
ガイジはまぁ部屋に住んでるホームレスなわけだが
いつからか部屋の中の荷物が異様に増えていた。
部屋の中にはパンパンのボストンバッグが5~6個おいてあり
机や棚、床の上はなにかの錠剤やらゴミやらで溢れている。
そのボストンバッグとゴミをあろうことか通路に置きだしたのだ。
ただでさえ狭い通路がほぼ通行不可能にされていた。
そんなわけで、今すぐ片付けろ!できないなら出て行け!とかなり強い口調で注意したらしい。
俺が出勤した時には片付いていたが
店長からは「もういつでも出禁にしていいよ」との、お言葉を頂いた。
そして俺も勤務を終えて帰ろうと思いガイジの部屋の前を通るとまたもゴミと荷物の山が。
全く懲りていない態度のガイジに怒った俺は扉をかなり強めに叩き
「どういうことだ!今日忠告したことをもう忘れたのか!」と怒鳴った。
すると、扉の隙間から椅子に座りマウスをカチカチクリックしながら
「いい、今かか片付けてるととところなんです!」と答えるガイジ。
余りにもなめた態度に逆に冷静になったてしまった。
「さっさと片付けろ、後1時間以内に片付いてなければ出て行ってもらう」
と吐き捨ててそのまま帰った。
数日後、出勤してみると同僚が「あのガイジ、今日こそ○してやる!」と刹気を振りまいていた。
というのも、店長や俺はガイジに対して大分厳しいあたり方をしていたため
俺たちがいる時間帯にガイジはあまり絡んでこなくなった。
しかし、その分夜勤帯のバイト達に絡むようになったらしく、
夜勤帯のバイト達のストレスは限界を迎えていた。
このガイジは人をイラつかせるだけでなく、
店から貸し出した備品をなくすという実害も発生させていた。
ここに同僚は目をつけた。実はこの同僚昨日伏線をはっていた。
ガイジがプラン更新のためにカウンターに来たところ
「充電器を貸して欲しい」と言ってきたらしい。
しかし、充電器は既に1つ貸しているのだ。聞いてみると失くしてしまったらしい。
しかも、こいつがカードリーダーやら充電器の貸し出し品を失くすのは初めてではない。
激怒した同僚であったが、
「まぁ今回はいい。ただし次に失くした時はプラン更新は認めない」
「即座に出ていってもらうからな!」と、念を押した。
ガイジは「わわわわかりました」と答えたらしい。
これで、やっとあのガイジを追い出せると笑う同僚。
どういうこと?と俺が聞くと。ガイジに貸し出したはずの充電器を見せてきた。
なんと、ガイジは失くしたら出禁という自分の命綱を普通に通路に落としていたのである。
なにも知らずに更新にきたガイジ。
すかさず同僚は「充電器はどうされましたか?」と尋ねる。
慌て出すガイジ、何が入っているのかわからないパンパンのリュックを下ろし
中身をブチまけて探すがない、ゴミまみれの部屋に戻って探すも全く見つからない。
当然である。こっちが持っているのだが。
「おおおおかしいですよ、ぼぼぼ僕は絶対に部屋にももも持っていったははずなんです」
「なななないはずがないんです!あああなた達がまた持っていったんでしょうう!」
「そそそ、そんなに僕を追い出したいんでですか!」
また人様を疑うのかとカチンときたが、まぁ実際そんな感じである。
ここで同僚がヒートアップし始めた。
「そうやってまた人を疑うんですか!追い出したいんですか?じゃないですよ!」
「ルールを守って頂けないから、退店してもらうんです!」
「昨日はっきり言いましたよね!次やったら出禁にするって!」
「大体、貴方の管理がズサンなのを自分達のせいにしないでもらえますか!!」
「ビデオカメラだって、あなたがキッチリ管理していればなくなってないでしょう!」
「そそそれはは、、まぁビデオカメラの件につきましては本当にもも申し訳ないんですがっ
 椅子のああ間に挟まってまして、、ちちちょっとそこは、
 じ自分の勘違いいというかか、め迷惑をかけまして、、」
まさかの勘違いであったことを自白。2人ともブチ切れた。
もういい出て行け!と声を荒げる2人。
「ままま待ってください、おおかしいですよね?
 ささ探せばいいんでしょう?見つかればだだ大丈夫なんでですよね?」
「それがないから、出て行けっていってるんですよ!」
「見つかるって自信がありゃどうぞ探してください、
 けどねプランの更新はお断りです。ここからは延長料金が発生しますよ!」
「うちは延長2時間までしか認めてないんで!
 それ過ぎたら荷物まとめてでてってもらいます!」
「ででも、そそそれはおかしくないですか?」
「自分は、きき今日つつかれてますし、眠らないいいと仕事にささ差し支えるんですよ!」
「それに、こここんな事急にいいいってくるなんて、おおおかしいですよね?」
「だからあ間をとって、後24時間プランでいい一回だけここ更新させてもらえませんか?」
「そそそうしたら僕もささ探せるんで」
この後におよんで、上から目線で自分の都合優先である。
「は?忠告はしっかりしましたし、なによりあなたの疲れやら
 仕事の予定なんて知った事ではないんですよ」
「とにかく探すなら後2時間、延長料金払うのが嫌なら今すぐ出て行ってもらえますか?」
「これ以上はなにも言いません」
ガイジは絶望した顔であわあわ言いながら部屋に戻って行った。
部屋に帰ったガイジの行動を監視カメラでチェック。
部屋の扉は天の岩戸のように固く閉ざされ開かなかった。
しかし何をしているのか直接伺いに行くと光景は一変していた。
部屋の前には荷物が散乱しガイジが通路に正座しながら一心不乱に荷物を漁っていたのだ。
鬼気迫る様子にドン引きしつつも
絶対に見つからないものを必タヒに探している様に2人とも大笑いした。
結局捜索もむなしくガイジの滞在リミットは訪れた。
「ああの、念のために、きき聞きたいんですけど、
 ほほほんとうに、もうこの店には入店ででできないんですか?」
「当店だけでなく、系列店にもご入店はお断りさせていただきます」
「けけけど、ああまりにもとと突然すぎませんか?なな納得がででできてないんですけど?」
「だだだ大体、い今はふ冬なんでですよ」
「ぼぼくこここのまま外に出て、とと泊まるとところもなかくくて、
 のの野垂タヒにすするかもしれないじゃないですか!!!」
ぶっww!!まさかの野垂タヒに発言に2人とも完全にOUTw年末なら尻をしばかれていた。
「なななにを笑ってるんですか!」
「そ、そもそもこーいうお店といいうのは、
 社会のセッセーフティネットのよような役割もあるはずですよね?」
「ホホームレスみたいな人をす救う?みたいな!」
「ねねネットカフェ難民とかよよく言うじゃなないですか!そーいう人達をですねぇ!」
「あのね、私達は慈善団体じゃないんですよ」
「あくまで営利団体なんでね、そういう役割は行政に求めてもらっていいですか?」
「私達としては店に害しか与えない人に出て行ってもらいたいだけなんで、その後のことには興味ないです」
ガイジはもう何も言い返せなくなったのか一転謝罪の姿勢を見せた。
「ほ本当に、ダメですか?わ悪いところがああったなら僕もできる限りななおしますし」
「みみみなさんに不快なおおもいをさせたなら1時間でも2時間でも
 ひっひとりひとり土下座するかか覚悟もあるんで、それでもだっダメですかね?」
「本当にここを追い出されたら行くところがななないですし、出て行きたくななないんです」
そもそも本当に悪いと思ってたらまず土下座するだろう。
土下座する覚悟があるからなんとかしてくれない?という考えからして履き違えている。
「無理ですね。そもそも、もう上から言われてることなんで私らにはなんともできないんですよ」
「いくら謝られようがなにされようが、結局はそちらが約束を守って頂けなかったので」
もうガイジはさっきまでの威勢を失い半泣き状態と化していたが。
急に賢者のように殊勝な態度を取り始めた。
「そそそうですよね、すすすいません。1つ聞きたいんですけど僕ってき嫌われてましたよね?」
「わかってたんです、やややっぱり店員さんの
 ぼぼくに対する態度がななにかぶっきらぼうだなってし」
「陰でめめめんどくさい!って言われてたのもきき聞こえましたし」
自虐モードである。
「まぁ、そりゃあ・・みんなあなたのことは嫌いでしたよ」
「でですよね・・あああの自分はほほんとにひっひとと接するのが苦手なので
 全然みっみなさんにもおっお会いした時にあ挨拶とかでできなかったんですけど」
「ややっぱしした方がよよかったですか?」
いや友達でもあるまいし、そういうのを求めてるわけではないのだが
ここからは人生相談モードに突入するガイジ。
「いや・・そういうことではなくですね・・・」
「ここに、なっ長くいるお客さんととは、そそそういのあるんですかね?」
「せ世間話をしたりだとか、あっ挨拶をしたりだとか、
 じっ自分はそういうのししなかったからダッ駄目だったんでしょうか?」
「いや・・あのですね・・腐ってもこっちは客商売なんで、
 あなたのことは嫌いですけど、それが理由で追い出すわけではないんですよ」
「あくまでルールを守ってもらえなかったから追い出すわけで」
「そそそうなんですか・・・ああっのももしよければ
 これから新しい店に行くとしてううまくややっていける
 アッアドバイス的なものをもらえないでしょうか・・・」
「自分はいったいなにがたっ足りなかったんでしょうか?それをおっ教えてもらいたいです」
某大物Youtuberのように自身を省みるガイジ。
申し訳ないが、そもそも常に挙動不審なところと
身分証明証のコンボで入店当初から正直きつかった。
他店に行ったところで第一印象で同じような目にあうだろう・・
「アドバイスねぇ・・・・」
「じっ自分のどういうところがきっ嫌いでしたか?」
「あぁ・・まずなんでもかんでも人を疑って因縁をつけるところ?」
「ビデオカメラの件なんて、それの最たる例でしょう。
 証拠もないのに人を疑ってばかりいる人のことを快く思いますか?」
「あと、自分のことしか考えないところ」
「なにかというと疲れてるだの寝ないと仕事がどうだの、
 すぐ自分本位な言い訳で逃げようとしますよね」
「全然関係ないじゃないですか、あなたの過失で失くしたものなんだからあなたの責任ですよね?」
「ビデオカメラの時も、早く見つからないと寝る時間がとか
 そもそもあなたに絡まれてる時間こちらも仕事ができないわけですからね」
俺のターン
「あと、言い訳がましいところ?」
「荷物片づけるっていいながら、パソコンいじってて今からやるところだったんです!とか」
「自分は片づけるのが苦手な性格なんで、人より散らかしてしまうんです
 だからもう少し時間をもらわないと、人より時間がかかるんで。とか」
「とにかくなんでも言い訳するでしょ?なんの言い訳にもなってないですけど」
言葉という拳でメンタルをボコボコに殴り散らす。
ガイジ君の嫌いなところをあげるHRがしばし続いた。
もう、心ここにあらずといった表情のガイジであったが最後に一言。
「わわかりました。もももう出ていきます」
「けどささいごに僕のせっ誠意として部屋だけは、
 ききちんと綺麗にしてかか帰りたいので、そそれだけはやらせてください」
「あぁ、別に清掃はこっちの仕事なんで別にいいですよ」
「いいいや、これだけは!せっ誠意見せたいので・・・」
正直、面倒くさいから早く出て行って欲しいのだが・・・
あの部屋の惨状を知っている分、確かにあいつが出て行った後清掃をするのも気が重かった。
「じゃあ、いいですよ」
とりあえずガイジを行かせた後、逐一動向を監視カメラでチェックしていた。
ガイジは真面目に掃除しているように見えたがしかし・・・
途中ガイジがカメラ外に消えた。
どうしたのかと思った次の瞬間あろうことかガイジはモップを持ってきた。
そう、なぜか関係者しか開けてはいけない掃除用具入れを
勝手にあさってモップを持ちだしてきたのだ。俺たちはすぐガイジのもとに向かった。
モップを使って清掃しているガイジに向かって告げる。
「ちょっと、それどこからもってきた?」
「え?あああのそっそうじ用具入れから・・」
「掃除用具入れから。じゃないですよ、何勝手にあさってるんですか?」
続けて同僚
「関係者以外開放禁止ってかいてあるの見えませんでした?」
「それ以前に、あなたが誠意を見せるといって
 勝手に始めた清掃なのに、なんでうちの備品を使うんですか?」
「そそそれは、すいません、すいません」
見たところ部屋のごみはあらかた片付いていたので
もういいから、はやくでていけとモップをガイジからとりあげさっさとレジに来いと告げた。
一足先にレジで待っていた俺たちの前に大量の紙袋、ボストンバッグを持ったガイジが現れた。
正直入店した当初はここまでの重装備ではなかった。
滞在中に増えていったのだろう・・・・
ここで、驚くべきことにガイジはその荷物をレジ前に置き一旦部屋に戻った。
まだ荷物があったのである。
最終的には両手が完全にふさがる量の紙袋と
ボストンバックを抱えた状態でリュックを前後にしょっていた。
「ささ最後に、聞きたいんですけど、自分はほほ本当にみなさん
 ひとりひとりに土下座ととかもして謝りたいとおもってるんですけど・・」
「出禁がかか解除されるとかはないんですかね?」
「なんどもいってますけど、そういう問題じゃないんですよね」
「もう責任者が言ってるので、どうしようもないんです」
「ほほ本当に申し訳ない気持ちがあああるのでここれ自分の連絡先となな名前です」
「ももし店長さんにゆゆ許していただけるのであれば、ど土下座でもなんでもしますので
 れ連絡頂けるようつつたえてもらえますか?」
わかりました。と一応受け取っておいた。
「でででは、お世話にななりました」
これで全部終わったかと一息ついていると同僚がゆっくりと口を開いた。
「では、延長料金3000円になります」
無慈悲な宣告だった。
そう、ガイジがプラン更新しようとレジにきてもめてから更に誠意の清掃を行っている間も
チェックアウト処理はせず完全に延長状態だったのである。
「さっさと払ってください」
ガイジはもうなにも言わずに払った。
ちなみに3000円あれば24時間のプランで入りなおすことができる。
往復せざるを得なかった量の荷物を抱えふらふらと店を出ていくガイジ。
気になって天気をしらべたのだが、出立の時刻は深夜5時
気温は0度で明け方からの降水確率は100%だった。
糖質被害妄想ガイジ編~完~
【第4位】公害怪獣へドラの巻
うちの客層はやはり底辺。特にホームレスの受け皿という側面が強い。
一番が困るのが臭いだ。
正直、バイト内で頻繁にでるワードとして「禁煙なんか臭くね?」がある。
喫煙席はタバコの煙の臭いでなんとかカバーできるのだが、
禁煙斥はそいつの臭いがダイレクトに伝わってしまうため、すぐに臭いを感じてしまうのだ。
一時天災級のホームレスで、俺が黒頭巾と呼んでいた婆さんがいた。
どこまでも陰気そうな雰囲気に腰は完全に曲がっており、
黒いビニール袋を外套代わりにすっぽりと被ってやってくるのだ。
入店した瞬間レジ前の客と俺達を含め全員が激しくえずきだした。
ビルのテナントの中にあるうちの店は
ただでさえ店内の換気がしづらく狭いため臭いがこもりやすい。
そんな所に蓋をあけたシュールストレミングのような奴が入ってきたのだ。
同僚が涙目になりながら追い返したのを覚えている。
へドラもそんなバイオテロモンスターの一人だった。
へドラは最初に来たときは、常に口半開きの池沼感半端ない奴という認識ぐらいしかなかった。
しかし、ある日その認識は一変した。
その時レジ前には相方と俺、入店処理をしているカップルの四人がいた。
その状況でへドラが入店してきたのだが、俺以外の3人の様子が突如おかしくなった。
顔こわばらせ、心なしか鼻声になっている。
違和感を感じつつもへドラの入店処理を終えへドラが視界から消えた瞬間だった。
「おえぇぇぇええ!」
「ゴホッ!! ゴホッ!!」
突然カップルの男が激しくえづきだし、女はせき込みだしたのだ。
同僚はいきなりバックルームに引っ込んだかと思うと
消臭スプレーを1缶なくなるまで使い切った。
俺はこのとき風邪をひいており、完全に鼻がきかなかった上に
マスクをしていたので被害を免れたが、
後で鼻をかみまくって一時的に鼻を通した時、残り香だけでもとんでもない臭いがした。
1時間だけの滞在であったが、へドラのブース周辺はもはや使い物にならなくなり
消毒用アルコールと衣類用のハイターを薄めた液体をありったけ振りまき
部屋中を水浸しにして1日中漬けおきにするという事態に追い込まれた。
この後、毎回というわけではないがへドラは発酵状態で入店してくることがあり
その度にブースを封印する八メになっていた。
そして運命の日。15時頃俺の携帯に着信があった。
その日は18時出勤だったので家にいたのだが
店からの電話ということで少し憂鬱な気分になった。
その日の朝番は女の子2人と若い新入社員の男の3人で受話器からは女の子の声がした。
「もしもし、俺君?今日早く来れたりしない?」
何故か切羽詰まった声だった。
「全然暇だから大丈夫だけど、どしたん?」
「とにかく来れるなら早く来て!こっちで話すから!」
胸に嫌な予感を抱えながら、すぐに俺は店に向かった。
店に到着すると、そこは阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。
まず入店するなり、壮絶な臭気が俺を包んだ。
ひとまず、着替えようと思い更衣室に向かおうとした矢先、通路を見て自分の目を疑った。
うちの店は普通のタイルの床の上に裏がラバーになってる
黒いカーペットをしきつめてるんだが、カーペットが全体的に茶色い。そう、茶色いのだ。
極めつけにそこら中に甘栗が落ちている。
もちろん剥いちゃいました状態で、だ。
なんと通路はう○こまみれにされていた。
そして、更衣室とトイレは同じ方向にあるのだが、
う〇こロードは多少の振れ幅はあるものの力強くトイレへと続いていた。
全く状況が理解できなかった俺はとにかく女の子たちに事情を聞くことにした。
なぜか新入社員はいなかった。
「実は今日・・・・・」
ショックのあまり暗い雰囲気を漂わせながら彼女たちは語り始めた。
何でも昼頃にへドラが入店してきたらしい
この時は特に発酵しておらず、そうでなければ特に特徴のない客なので
ささっとレジから近いブースに入店させたそうだ。
(そもそもへドラは基本的に夜にしか来ないので朝の時間帯のバイトはあまり知らない)
しかし、入店してからすぐジ件は起こった。
「あーーーーーあああああっーーー!!あーーーっ!」
突如、謎の奇声が店内に響き渡ったのだ!
何事かと様子を伺おうとした矢先レジ前に涅槃の表情浮かべたへドラが千鳥足で歩いてきた。
そしていきなり「!"#$%&'()"#!"#$%&'!!!!!!!!!!!」
表現できないような奇声と共に
ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!
放出を始めたらしい。もちろんへドラは普通に服を着た状態での着衣放出である。
これが力強いバナナ型の一本糞であり便座の上であれば問題はなかったのだが
運が悪いことに、ゲリライベントであり野外フェスだった。
「あーーーあああああーーーー」
奇声をあげながら、わずかに理性は残っているのか
トイレへ向かおうとするへドラ、その挙動は幼子のそれに等しく
手をせわしなく動かし体にこすりつけるような挙動をやめなかったため
奴はみるみる糞まみれになっていったらしい。
そして、追い打ちをかけるようにアンコールがかかる。
下痢便のモッシュとダイブのせいでフェスの盛り上がりは継続し
トイレまでの轍を作ることになった。トイレにこもったへドラであったが。
目の前で起きたあまりにも凄惨なジ件に女の子達は動くことができなかったらしい。
そして、20代前半で入った時から中々の使えないオーラを出していた。
入社3か月目の新入社員に、この事態を収拾させるのも荷が重すぎた。
あまりのショックに誰もしゃべれない中、社員が口を開いた。
「あのぉ・・とりあえず、これ か、片づけてもらえます?」
二人とも耳を疑った。
まさかの社員であり、男である彼がこの汚物ロードの処理を女に投げたのである。
正直、この修羅の国のような職場でやっていけるか?
といった感じの頼りなさそうな男だったが、これは情けすぎた。
「なんで、私たちがやらなくちゃいけないんですか!!」
「無理です、無理です!! 社員さんがやってください!!」
まぁ当然の反応である。
しかし、社員は無能な上にその日の16時から会議のため店を出なければならなかった。
とにかく、もう自分たちで処理できるレベルを超えていると判断した彼らは迷わずK察を呼んだらしい。
K察は迅速な動きを見せ、へドラはすぐに確保された。
そして、へドラのブースを捜査したところ
当時話題となっていた脱法ハーブが見つかったらしい。
へドラが急にトリップした原因は脱法ハーブによるものだった。
このへドラ確保の流れから、俺がかけつけるギリギリまで
無能社員は店にいたようだが、結局会議にむかったらしい。
というわけで、汚物ロードを処理する役目は必然的に俺ということになった。
汚染されたカーペットタイルをはがして、
新しいものに取り替える作業はこのうえない苦痛であった。
しかしゲロを素手で処理した後ミートソースパスタを食い始めた俺を見た同僚が
お前は汚物体制S+だなと言った逸話に違わず、淡々とやり抜いた。
こうしてへドラは出禁となった。まぁ本人に伝えたりしたわけではないのだが。
ちなみに件の社員は会議に大遅刻し理由を説明したのだが
なんで、そんな奴入れたんだ馬鹿野郎!!!と理不尽な叱責を受け。
1か月後、急に親が大病を患い介護のため会社を辞めた。
公害怪獣へドラの巻~完~
【第3位】嘘つきハゲタヌキの巻
奴と初めて出会ったのは、
奴がこの店によく来る客だと店員内で認識され始めているころだった。
ちなみにランキングと時系列は一致していないのだが、
この時俺は店に入って3年目であり店内ではベテランという立ち位置になっていた。
そして様々なガイジ達と接してきた結果、常連という存在が嫌いになっていた時期だった。
普通の店と違い、うちの店での「常連」とは居住者つまりホームレスのことを指す。
少なくとも、うちの「常連」は例外なく最底辺である。
事情があってホームレスに…という訳ではなく
だからお前らは最底辺なんだよと思うような輩ばかりが「常連」となっている。
時に話は変わるが働きアリの法則をご存知だろうか?
働きアリの中でも優秀なアリ 普通のアリ サボるアリの比率は2:6:2となる。
優秀なアリだけの集団を作ってもやがてこの比率に従ってサボる者が現れる。
逆にサボるアリばかりを集めても、この比率にしたがって働きだすアリが現れるというものである。
これは驚く程うちの店にも当てはまっているのだ。
うちの店の「常連」の数は5という基準値がある。まずは4人の不動の常連がいる。
これは長年うちに住み着いているホームレス達で特に入れ替わりはない。
そして、残る1人は定期的に入れ替わる。
そう、この5人目の座に収まる者は圧倒的ガイジ率が高く
ほとんどが店ともめ事を起こし来なくなるか、追い出される。
そして座が一定期間空くとどこからともなく新しいガイジが補充され
「常連」の数は常に保たれるのである。
不思議なことに座が埋まるまでの間は1週間などの短期滞在の客が数人増える。
ちなみに今から語るハゲタヌキが退去した後、住み着いたのが糖質ガイジである。
ある日、俺が出勤すると朝番のバイトに親しげに話しかけている男がいた。
メガネをかけ身長は150cm後半、Tシャツに半パンスリッパという軽装で
でっぷりとはみだした腹の贅肉を揺らし、いっちょ前に茶髪に染めているが
つむじを中心に鳥に啄ばまれたかの如く禿げ散らかした40くらいのおっさんであった。
話を聞いてみると最近朝方によく来るようになったおっさんらしく
早番には既に名前が知れているらしい。
俺も少し話しかけられたので、適当に一言二言返しておいた。
それ以降ハゲダヌキはうちに居住し始めた。
といってもまだハゲダヌキの姿を見た事は1回しかなかった。
ある日出勤すると店長と話しているハゲダヌキの姿を見た。
奴は俺のことを認識すると「あ、俺さんおはようございまーす」と挨拶してきた。
親しく話しかけられたこと、なにより誰かが教えたせいで
こいつに名前を呼ばれる八メになったことに大いにイラつきながら「どうも」と一言だけ返した。
カウンターにつくと早番のバイトに
「〇〇さんから差し入れのアイスもらったんですよー俺さんも食べてください」と言われた。
「〇〇ってあの店長と話してたハゲダヌキのこと?」
俺は尋ねた。そうですと早番は答えたが
俺は何が悲しくてガイジからの贈り物を受け取らなければならないのか
意味がわからなかったので「俺はいらないからみんなで食えば?」と答えた。
早番は「なに言ってるんですかハゲダヌキさんすごいいい人ですよ」
「なんでそんなこと言うんですか!」と不満そうに聞き返してきた。
タダより高いものはないのだ、これを普通に受け取って食べていれば
付け入られる隙を作ってしまうことになる。
確かに他の人から見れば親しげに話しかけてきて差し入れまでくれる
気のいいおっちゃんをガイジ扱いしだす俺は相当な捻くれ者に見えるだろう。
しかし、俺には数々のガイジと接してきた経験からわかってしまうのだ。
こいつは間違いなく、この先増長すると
しかも、この手のタイプはただのガイジと比べて狡猾であるため
追い出すまでに相当もめるのだ。俺の中に数々の嫌な記憶が蘇る。
この手の輩は初手から叩き潰さねばならない。
業務上必要な会話以外は一切せず
ビジネスライクであることを全面に押し出した態度で接し付けあがる隙を与えないことが最重要だ。
しかし、この当時の早番は店長を含め中学生の集まりと化していた。
そんな事を1mmも理解できず。
皆ハゲダヌキと仲良くなり店長に至ってはもはや敬語すら使わなくなっていた。
キャバやホスト、サパーやガールバー個人経営の店等ならともかくとして
チェーンの居酒屋やコンビニ等で接客をしていた人ならわかるのではないだろうか?
あくまで接客だからしているだけの丁寧な対応に
本気で仲良くなった。常連客として扱ってもらっている。と勘違いする客がいるということを。
俺の予想通りハゲダヌキは増長しはじめた。
まず、店員にしつこく付きまとい話しかけてくるといった迷惑行為が始まった。
恐らく奴は、ここの店員は皆自分の名前を知っているし
名物常連として認められているとでも思ったのだろう。
特に用事もないのにカウンタの横に陣取り
ひどい時には1時間以上話しかけてくるというようなこともあった。
最初は、フレンドリーな自分を演出したかったのか店員の話を聞くことに専念していた。
しかし、途中からはどうでもいい自分語りにシフトしていき
最終的には仕事をしなければいけない俺達を引き留めてまで自分語りを行う始末であった。
これがハゲダヌキ居住から、1ヵ月程経過した時の状態である。
更にハゲダヌキの増長を助長したのが早番の無能たちである。
店長はもはやハゲダヌキに対し友達のような感覚で接していた。
俺たちは客が開放厳禁の非常階段の奥で仕事終わりタバコを吸うのだが
こともあろうに店長は、わざわざハゲダヌキをそこに招きいれ
仕事上がりにずっと喋っているようになった。
そして早番のバイト達もそれに倣いお友達感覚で仕事上がりのお喋りに興じていた。
しかし、別の時間帯の人間はまともな人ばかりなので
すぐにハゲダヌキに対する不信感を持った。
特に夕勤は俺以外全員女の子であったため尚更だった。
俺が休憩などでレジを離れて女の子が一人でレジにいる時を見計らってハゲダヌキは現れ
レジの横でずっと話しかけているのである。
休憩から帰ってきた俺が溜まりに溜まった清掃の数を見て
あれ?一気に退店ラッシュでも来た?と尋ねると
実はさっきまでずっとハゲダヌキに粘着されてて・・・・・とこぼすと全てに合点がいった。
またある日、女の子が清掃にいった後50分程戻ってこないことがあった。
その時は入店のラッシュがあり忙しかったのでスルーしていたが
帰ってきた女の子に事情を聞くと
「ハゲダヌキが清掃先までついてきて・・・ずっと話しかけてくるんです・・・」
なんとハゲダヌキは清掃中の女の子の清掃を妨害し、50分程
「ねぇ今度一緒に飲みにいかない?」と口説き続けていたのである。
話を聞くと、この子だけにとどまらずバイト先の全女子が
二人で飲みに行こうと長時間しつこく誘われ続けていたことが判明した。
もちろん、話しかけるのは女のみならず男に対してもだ。男に対する場合は必然自分語りになる。
ハゲの自分語りの情報を統合していくと
自分は友達と一緒に起業した会社の会社員で司法書士の資格を持っている。
会社は遠方にあるが出張中で今こちらに滞在している。月収は120万程もらっている。
気に入ったバイトに対してはうちの会社に就職しないか?
初任給は30万ぐらい残業?そんなのないよ俺達が嫌いだからさ。
な ぜ こ う も 嘘 を 並 べ た て ら れ る の か
月収120万円もらっている人間がまさかの漫喫住まい
しかもプラン更新の際に特に領収書を求めてくることもない。
先ほどから朝番と仲がいいと多々記述しているが、
夕方になるまでずっとストロングを飲みながらレジの横で喋っているらしい。
夕勤の俺たちの時間になると仕事があるからと言ってブースに戻る。
外出することもあるが、コンビニに行く程度。
なんの仕事をしているというのだろうか?
少なくともPCだけでできるような仕事なら出張とはなんだったのか?
と何故、誰から見てもわかるような嘘を堂々とつけるのかがわからない。
ますますハゲの増長は続いた。
ある日俺が店長からの電話をうけ、やっておいて欲しいことがあると頼まれた。
俺は「はいわかりました○○を○○すればいいんですね?」と復唱した。
その時である、レジ横にいたハゲが口を開いた。
「なに?店長?代わってよ」
なんでわざわざ関係のないお前に電話を代わらなければいけないのか。
そう思いつつも俺は受話器をハゲに手渡した。
「あー店長?なにまた面倒事俺くんに押し付けようとしてたの?」
「うん・・うん・・・いやーそういうことよりさ
 俺は○○を○○に変えたりさ料金の設定をこうしたり新しく○○を設置したリさ」
「そういう新しい事をどんどん取り入れていかないとさ店の利益ってあがらないと思うんだよね」
「だからさ、俺が今言ったことさ、一回検討してみようよ」
「草案まとめてくれれば俺がチェックするからさ」
いらだちに身が震えた。
一体何様のつもりなのだろうか、経営者を気取るのはよそでやってもらいたい。
しかも、これが最底辺のホームレスから発せられた言葉というのがどうにも我慢ならなかった。
ハゲが居住しはじめてから4か月ほど、ハゲはもはや店の一員として振舞うようになってきた。
ある日シャワールームの清掃に行こうと思った時である。
シャワーはレジから離れておりハゲの粘着をかわすにはいい手段の一つであった。
しかし、ハゲはいきなり俺の手からシャワー清掃用の道具を奪い取った。
「何するんですか?」
俺は苛立ちながら言った。
するとハゲは
「いやいーよ、いーよ俺がやってくるからさ俺君はレジにいなよ」
「いや、そういうことじゃなくてですね、それは俺らの仕事なんで」
「いーからいーから、俺がやりたいだけだからさ、任せて任せて」
執拗に食い下がってくるハゲがめんどくさかったので、とりあえず清掃に行かせることにした。
まぁ後で、しっかり清掃しなおしたが。
また、初めて利用するお客さんがドリンクサーバーや
貸出品の利用の仕方がわからなくて困っていたらしい。
俺が清掃から帰ってくるとハゲが
「こっちがドリンクサーバーで無料です」
「シャワーとトイレがあっちで貸出品のサービスを利用するときはこうしてください」
「そのブースはそっちの奥になりますねー」
何故か勝手に客を誘導していた。
後でそのお客さんに「あの方は店員さんなんですか?」と聞かれたが、当店とは一切関係のない方です。
「店員のふりをしてなにかおかしな行動をされた場合は我々にすぐお申し付けください」と伝えた。
滞在も半年を超えた頃。
ますます増長していくハゲからロックオンされてしまった人がいる、社員のAさんである。
Aさんはこの時期に入社した若い新入社員でバイトを含め店内でも一番歳下ではあるが
温厚篤実を体現したような好青年であった。
だがそれ故にハゲのターゲットになってしまった。
前述した通り、朝のバイト達はハゲに対して友達感覚で接し
それ以外のバイトは最低限の対応はするが基本的には無愛想な態度を貫くという状況だった。
そんな中ハゲに対して常に礼儀正しくしっかりとした対応を崩さない
Aさんはハゲからすればとても好印象な人物だったのであろう。
店長達とハゲの仕事終わりの雑談会にAさんは必ず呼ばれるようになった。
Aさんはバイトに対しても腰が低くきっちり敬語を使って話してくれるような人だった。
中学生のようなバイト達と上司である店長。
頭のおかしいハゲに囲まれて話す八メになっても
しっかりと周りをたてることができる人物だったのである。
Aさんがうちの職場に来て以降
ハゲはAさんのことを妙に気に入ったのか常に話しかけたり
「うちの会社にこないか?今度2人で飲みにいこう」などことあるごとに絡んでいた。
しかし、流石のAさんも聖人ではなく、やはり人間なのである。
彼は基本的に社員の仕事を学ぶため店長と同じ時間に入ることが多かったが
初めて俺と一緒のシフトに入る日があったので
ハゲのことをどう思っているのか聞いてみた。
話を聞いてみるとAさんは随分悩んでいた。。
もちろんAさんは真っ当な人間なので、ハゲが異常な人間だという認識はあった。
しかし、無能な朝番達は常にハゲを良い人扱いし
店長に至っては少しでもハゲの悪口を言うと
「店の利益に貢献してくれてるんだからもっとしっかり接客しろ!」と説教を始める始末。
Aさんは「自分の考え方が間違っているんでしょうか?」と問いかけてきた。
俺は必タヒに「正直朝に入ってる連中にまともな奴はいませんよ」
「他の時間帯の奴は全員あのハゲをガイジ認定してますし
 1秒でも早く出て行って欲しいと思ってます」
「Aさんの考え方は全然間違ってないですよ」とAさんに語った。
Aさんは安堵の表情を浮かべ
「ですよね、正直あの環境にいるとこの人達の反応が普通で
 自分が凄く捻くれた考えをしてるだけなんじゃないかと不安だったんです」
と、のまれかけていた心を取り戻した。
しかし、そんな安穏とした時間も束の間であった。
俺が休憩していた時。突然レジの方から怒鳴り声が聞こえた。
何事かと思い、レジ前に向かうとAさんに対してハゲが怒鳴り散らしていた。
「てめぇ、ふざけてんじゃねよ!俺がどれほど、この店に貢献してんのかわかってんのか!」
「それを粗末に扱いやがってよ!!てめぇ1人ぐらい俺の力でいつでも潰せるからな!!」
Aさんは殊勝な態度で謝っていた。
普通にキレているだけなら、100歩ゆずってグッと我慢できたが
一番俺の琴線に触れてくる一言があった。
「俺の力でいつでも潰せるからな」の部分である。
この手の虚言癖のあるガイジは何故か自分が最底辺という事実から目を背け
自分を高尚な人間だと思い込み権力者であるという
妄想をふりかざしてくるパターンが非常に多い。
過去にこのタイプのガイジと接した経験の多い俺はこのタイプのガイジが一番嫌いである。
無理矢理2人の間に割り込み
「すいません、Aさんちょっと報告書の書き方について
 聞きたい事がありまして、これ見ていただきたいんですけど」
と無理矢理バックルームに引っ張り込んだ。
すぐに、ハゲのところに戻り
「すいませんAさんじゃないとできない仕事があったんでちょっとやってもらってます」
「話は自分が聞くんで、なにかありましたか?」
「いや、俺君には関係ないからさ……Aに話があるんだよ……」
常に低姿勢で謙虚なAさんと違い、俺はハゲに対して常に無愛想で
業務に関係のないことであれば話しかけられても
聞こえていないふりをして無視したりすることも多かった。
そんな態度からかハゲは話しかけてこなくなり、ちゃんと喋るのは随分と久しぶりだった。
「いえ、自分もこの時間に入ってる身ですし今更知らない間柄でもないでしょう?」
「Aさんでなくとも自分が話を聞きますよ」
「いや……もういいよ……」
そう呟くと、ハゲは自分の部屋に帰って行った。
ハゲを追い返した俺はAさんに事情を聞くことにした。
Aさん曰く俺が休憩中、いつものようにハゲがレジの横から話しかけて来たらしい。
Aさんはいつも通り真面目にハゲの自分語りを聞いていると
レジにあったPCの調子が悪くなりフリーズしてしまったらしいのだ。
再起動してみても中々立ち上がらず、どうしたものかと思っていたところ。
「どれどれ?俺に見せてみてよ」と言いながらハゲがレジの中に入ってきたのだ。
Aさんは流石に「すいません、ちょっとレジの中には入らないでください」と注意した。
「え、なんで?いいじゃんちょっとくらい?」
ハゲは本当に注意されたのが不思議そうな表情で聞き返してきたらしい。
「いえ流石にレジの中は店員以外の人は入らないでください」とAさんは再度注意した。
するとハゲの態度が豹変した。
「なんでそういうこというの?その態度おかしくない?こっちは常連なんだからさ」
「いえ、常連さんだからとかではなくてですね。
 基本的に店員以外は入れないので入らないでください」
とAさんが三度の注意をしたところ上述の展開に発展したというのだ。
あまりの頭のおかしさに俺は閉口した。
もう1秒でも早く追い出したかったが面倒なのが店長だ。
俺が勝手に追い出しましたとなると確実になにかの形で不機嫌をぶつけてくる。
手堅いところでいうとシフトを削ってくるなどだ。
追い出すためには店長を説得することも
セットで行わなければならないことを考えると俺はとても気が重くなった。
しかし説得するのは難しいという現実があった。
前述した通り店長とバイト、ハゲは仕事終わりに雑談会をするのだが、
この頃にはそれがエスカレートしハゲの買ってきた酒を飲みながらの宴会と化してきていた。
店長とハゲがプライベートで飲みにいったという話があったりなかったりで
あの店長のことである「いいお客さんだろ?なんで、そういう事が言えるんだ?」の一言で
俺の抗議も一蹴される未来しかみえなかった。
しかし、そんな俺の心配は杞憂に終わることとなる。
数日後俺が出勤してみると、店長とバイトがなにやらぶーたれている。
話を聞いてみた所、なんとハゲにキレられたというのだ。
いつものようにカウンターで仲良くハゲとお喋りしていたところ
ハゲがシャワーを使いたいと言いだしたらしいのだ。
この頃、朝の連中はハゲとなぁなぁの関係になっていたので許されるとでも思ったのだろう
面倒くさかったのか、ちゃんと清掃をする前にハゲにシャワーを使わせたのだ。
至極当然の話なのだが帰ってきたハゲは激怒していたらしい。
「シャワールーム凄ぇ汚れてたんだけどどういうこと?」
最初ハゲが怒っていると気づかなかった店長は
「あぁーマジっすか!すいませんー」と、とりあえず程度の謝罪をしたらしい。
その直後「マジっすかじゃねぇよ!!こっちは客だぞ!!」
「どうしてくれるんだよ?とんでもなく今不愉快な気分になったんだけど?どうするんだよ!」
怒鳴られて初めて、あ、こいつキレてるんだと認識した。
店長とバイトは必タヒに謝り始めた。
しかし、怒りがエスカレートするハゲは「どうするんだよ!」としか言わなくなり
「清掃を徹底して、これからはこのようなミスのないように…」
「そうじゃねぇだろ!どうするんだよ!」
となにを言ってもこの有様で撤退するまで1時間は怒っていたらしい。
まぁ、それは別にハゲじゃなくても怒るだろとは感じたのだが。
2人はぶーたれながら
「マジあいつ意味ワカンねぇ、しつこいわー」
「どうしろつったって、謝ってるし
 これからは気をつけますって言ってるんだからどうしようねぇだろ」
と延々愚痴をこぼしていた。いやお前らの友達だろそんな悪口言うなよと思った。
これ以降、店長にいたっては露骨にハゲを避けるようになった。
話しかけられても仕事をしてる振りをして取り合わなかったり
急に仕事の事で電話をかけ出したり。仕事終わりの飲み会も開催されなくなった。
一回喧口華したら、もう友達ではないのである。
あまりのガキっぷりにドン引きしたがこれは僥倖であった。
奴を追い出すための光が見えてきたのである。
その後また、Aさんとシフトが被った時ハゲの動向について聞いてみた。
すると驚愕の事実が飛び出してきた。
Aさんが怒鳴られた次の日に出勤するとハゲがいきなり
二ヤっとした表情を浮かべハグしてきたのである。
そして、昨日はごめんなと謝罪の言葉を述べ始めたかと思うと突然号泣し始めた。
「ごめ""ん"""な"'ぁあ"あ"あ"あ"ぢょっと、おでもあの日ぃ気がだっででぇええ」狂っている。
その後もしきりに、みんなと仲良くなりたかっただけなのに冷たい態度をとられたのが嫌だった。
仲良くなったと思ってたのに、あんな事を言われたのでショックを受けた。
と意味不明な供述を続けながら号泣したらしい。
この2つのジ件を経てようやく店員全員がハゲをガイジ認定した。
以前のように親しく話すこともなくなり全員が事務的な対応以上の事をしなくなっていった。
しかし、Aさんだけは根がとても良い人なので、
話しかけられた時にもそっけない態度を取ったりせず
できる限り以前と同じ様に接してあげていた。
それとは逆にハゲは増々狂っていった。まず、酒の量が増え始めた。
毎日外に出るたびコンビニでストロング缶を4本程買い込んでは飲んでいるのだ。
そして、酔っ払っているのか奇行が増え始めた。
まず手始めに通路に痰を吐くのだ。
それも1度ならず何度も痰を吐いている姿が目撃された。
更にある日「でかい声で歌を歌ってるやつがいてうるさい」とお客さん数人から苦情が来た。
俺は嫌な予感がしながらもハゲのブース付近に行くと
その一帯にハゲの歌声が響き渡っていた。
頭にきた俺は激しくドアをノックし「すいませーん」と何度も声をかけた。
数度の呼びかけでハゲは顔を見せた。
「あの、歌を歌うのやめてもらっていいですか?」
「いい時間なんで寝ている方もいますし苦情も来てるんですよ、部屋では静かにしてください」
するとハゲはキョトンとした顔で驚きを隠せない声色でこう言った。
「え、なに?俺歌ってた?気づかなかったーごめんごめん」
寒気が走った。本格的に狂っている。
呆れて言葉もない俺は「とにかく、静かにしてください」
「今後も苦情が続く様なら出て行ってもらうしかなくなるので」と告げレジに戻った。
これらの件に限らず、大なり小なりハゲは奇行を起こした。
またもレジに入ってこようとした事もあった。
その都度基本的には社員であるAさんが注意するのだが
「てめぇ、また俺に文句か!!!何様だ!!!! 」
「文句ではなくてですね、〇〇されるのは迷惑ですのでやめていただけますか?」
Aさんはあくまで穏やかな声色である。
「してねぇーよ!!言いがかりもいい加減にしろ!」
「大体よぉ!!俺はお前の事嫌いなんだよ!!顔をも見たくねぇわ!!」
「出て行けよ!!その顔がもう無理なんだよ!!!気持ち悪いなてめぇ!!」
出て行くのはお前の方である。
とにかく、注意するたびAさんは何を言われても
あくまで態度を崩さず迷惑行 為だけを注意して帰ってくる。
そして、次の日にはハゲが鼻水を垂らしながら号泣して謝ってくる。この繰り返しであった。
注意するという形でもまともに関わってくれるのは、もはやAさんしかいなかったのである。
Aさんは日に日にやつれていった。
「出勤するのが憂鬱です」とこぼしたこともあった。俺は見ていられなかった。
そんな頃ハゲはしきりに、うちの系列店について尋ねてくることが増えてきた。
なぜなら、そこはかなり攻めた料金設定をしており、
24時間のパックがうちより500円安かったのである。
ちなみにハゲは自称月収120万貰っている男である。
店長が早く出て行って欲しかったのか、うちより系列店の方が安いよと教えたらしい。
その日から、じゃあここも今月までだね。
来月からはそこに行くことにするからと出て行く雰囲気を醸し出し始めた。
この頃もうハゲは8ヵ月程滞在していたが未だに出張という設定は保持しており、
でも系列店の方にいっちゃうと仕事上は少し不便になるなぁとこぼしていた。
なぜ、この期に及んでまで嘘をつくのであろうか・・・
しかし、ようやく出て行ってくれるという朗報から店内では安堵の空気が漂っていた。
しかし、穏便に全てが終わるかと思った矢先
最後にとんでもないジ件を起こすのである。
運命の日は俺とAさんの二人で勤務であった。
Aさんは終電の関係上、俺よりも少し早く帰る。
俺は夜勤の引継ぎが来るまで、一人回しというシフトだった。
時間がきたAさんは、レジを後にし着替えに行った。
そして、帰ろうとしたところハゲに捕まったらしい。
酔っているのか、またAさんに絡みだしたハゲ。
Aさんはいつものように穏やかに対処していたが、この日に限ってハゲの怒りは収まらなかった。
「もういい!!!こんな店に一秒でもいたくねぇよ!!!出ていくからな!!!」
出て行ってくれるのは非常にありがたいことなので、そうですかとAさんは答えた。
しかし次の瞬間ハゲは驚くべき言葉を返してきた。
「なにぼさっとしてんだよ!!!!てめぇも来るんだよ!!!俺は場所わかんねぇんだから!!!!」
驚きの発言であった。
しかし、Aさんは系列店にさえ送り込めば
ただ出ていくよりも確実にここに戻ってくることはなくなるだろう。
この一回我慢すれば・・との考えで、送っていくことにしたのである。
何故か店の外に出ていくAさんとハゲを見て何事かと思ったが、流石に店を無人にすることはできず。
その場に留まった。
駅についたハゲとAさんであったが、もはや系列店までの終電はなくなっていた。
更に怒り出すハゲ「てめぇ!!!どうしてくれるんだよ!!!!」
「お前がトロトロしてるせいで、俺が行く場所がねぇじゃねぇかよ!!!!」
「使えねーな!!!! ほらタクシー代だせよ!!責任とれ!!責任!!!!!」
ここで、普段温厚なAさんもブチ切れた。
今までの恨みを全てぶち込んだ怨嗟の声をありったハゲに叩き込んだのである。
お前がいかに店員から嫌われていたか!
お前のような底辺がなぜまともな人間であるかのような嘘をつくのか!
お前のような人間が生きていること自体が社会の害だ!
いままで耐えてきた分を吐き出すようにハゲの事を1時間以上罵ったらしい。
ハゲはいままで従順だと思っていた人間からの思わぬ反撃に言葉を失い。
最後の威勢から「うるせー!!!なっ・・ナグるぞ!!!」と失笑ものの返答で返してきたらしい。
「殴ってみろよ、そしたらすぐそこの交番にすぐ突き出してやる」
「そうすれば今日寝る場所には困んねーぞ!」
と、トドメをさすと、ハゲは狂ったように
「うわあああああああああああああ」
と雄叫びを上げながら暗い夜の帳の中へ消えていった。
誰にもしばられたくなかったのだろう・・・・
帰ってきたAさんから全ての事情を聞いた俺は「お疲れさまでした」と長い長い苦労を労い
当然終電をなくしていたAさんと一緒に飲みに行った。
後日、系列店の店長などとも話したが、その様な客は来ていないそうだ。
ホームレスというのは生活には耐えられても、その孤独に耐えられない者もいる。
うちにいる不動のホームレス四天王もこのハゲ程ではないがやたらと話しかけてくる。
時にはドリンクサーバー前や喫煙スペースにいる他の客に話しかけたりすることもある。
恐らく全員が日雇いの仕事などで定職についておらず
外にでれば人に使い倒されるような職場環境でばかり働いているのだろう。
しかし、帰ってくれば敬語つかい下から接してくれる店員たちがいる。
そのギャップから自分は偉いと、こいつらと仲がいいから話しているという錯覚が起きるのだろう。
もちろん、我々は友達ではない。
あくまで、仕事だから話しかけられても笑顔で返し敬語を使っているだけである。
恐らく、孤独に苛まれると人はこのわかりきった関係をも
自分に都合のいいように解釈してしまうのだろう。
後で考えると、ろくに友達もおらず嘘で虚勢をはってまで
人にかまってもらおうとするハゲも哀れな人間であったと思った。
しかしもう二度と出会いたくない客である。
嘘つきハゲタヌキの巻~完~
【第2位】匿名の彼女の巻
バイトも2年目に入った頃だった。前からちょこちょこ利用してくれている。
白髪交じりの40~50代ぐらいの小柄なおじさんがいた。
いつもひょこひょこ歩いており、ぼそぼそっとした声で喋る。
気の弱そうで冴えないおじさんだった。
ある日、このおじさんが急に女を連れて二人でやってきた。
まず驚いたのが女の見た目である。おそらく20代後半から30代前半ぐらい。
金髪の髪に少し焼いているのか黒い肌
ノースリーブのニットにショーパンという派手な格好だったのである。
少し若作りしている感はあるが、あびる優感のただよう女であった。
一応この女の名前は、るなとしておきます。
正直、どうした?と感じた。
このおじさんと目の前の派手な女が接点を持つ理由が想像できなかった。
同伴かなにかかと思ったが、同伴でこんな所にくるだろうか?と思っていると
「ねぇハカセ!るな、おなか減ったんだけどー!ってか映画みたい!!
 いつまでいんのー?もう飽きたー!どっかいこー!」
ちょっと理解した気がする。アホの子だったのだ。
あとコンプレッサー内蔵されていない系の子なのかとにかくうるさい。
ハカセと言われたおじさんは「わかったから、ちょっと待ってね・・・・」と言いながら
ペアシートを指定し二人分の料金を支払った。
するとるなちゃんがドリンクサーバーの前で騒いでいた。
「えーーーー!これ全部飲めんのーーーー!!マジやばーーーい」
「るなこれとこれ飲みたいからハカセ持ってきてー
 ってかどこどこ?るなどこ行けばいい?ってかジュースジュース!」
正直、そこまで若くはないと思うんだが落ち着きない奴だなとこの時は思った。
ただ入店してから気づいたのだが
るなちゃんはブースの中でも声を落とすということを知らないのだ。
「でねでねーーー!!!○○ちゃんがーーー!!!
 ってか携帯充電したいんだけどーーー!!ハカセお腹すいたー!!!」
見事なまでに話したいことに一貫性がない。
会話はまる聞こえなわけだがハカセは「そうだね・・・」
「へぇー・・・・」以外の単語を発していなかった。
この二人は一緒にいてなにが楽しいのだろう?
そう思いつつも、流石に迷惑極まりないので部屋に向かい
「申し訳ありませんがもう少し小さな声で喋っていただけますか?」と注意した。
「えーーー!!ごめーーーんってか、そんな喋ってたっけーーー!!!」
「ほら、ハカセも謝んなきゃじゃん!!」
いや、ハカセはいつも聞き取れないぐらい声小さいよ
お前だよと思いながら部屋を去ろうとすると
「でねーーーーー!!!!マジウケるんだけど!!!」
こいつ話聞いてたのか?
その後何度注意しても、るなちゃんが静かになることはなかった。
その一件以降るなちゃんは度々来店してくるようになった。
ただし基本的にはハカセと2人であり、1人で来ることはなかった。
最初の方こそ、るなちゃんはハカセと来店し同じ部屋に入っていたが
次第に何故か別々のブースに入っていくようになった。もちろん金はハカセが払っている。
時期を同じくして、1人の男がよく来店するようになってきた。
パンチパーマにタンクトップ、身長160前半ぐらいで少し強面の男だった。
態度が非常に悪く常にオラついており正直苦手な客だった。
ある日のことである。
今日は珍しくるなちゃんとハカセは一緒のブースに入っていたのだが
全く別のブースからるなちゃんのバ力でかい声が聞こえる。
「もうキョウちゃんマジウケるーーーー!!!」
何故か、るなちゃんは上述のいかつい男キョウちゃんのブースにいた。
どういうことかわからなかった。
来店してきた時はもちろんハカセとるなちゃんの二人だけだった。
その後にキョウちゃんは1人で入店してきて、まったく別の喫煙席に入った。
そもそも知り合いなのか?そこすらもよくわからないまま
とにかく、また注意である。
キョウちゃんに多少オラつかれイラっとしながらも、るなちゃんに聞いてみた。
「お客様ペアブースでご来店でしたよね?なんでこちらのブース使ってらっしゃるんですか?」
「え、るなキョウちゃんと話したいからーーー!!ハカセはもういいいや」
「じゃあ、こっちのブースに移動ってことで大丈夫ですか?」
「うーーーん いいと思う。よくわかんないけど、るなキョウちゃんと話してるからーー」
といってもキョウちゃんの部屋は1人用なので、2人で入ると流石に狭い。
ほんとにいいのか、そもそもこいつらの関係はなんなんだと思いながらハカセの部屋に向かった。
俺はハカセにるなちゃんが席移動したいと言っているとだけ伝えた。
ハカセはいつもの通り覇気のない声で「そうですか・・・・」とだけ答えた。
その後、ハカセは一人で帰っていったが帰り際1000円札を出してくると
「一緒に入っていた子なんですけど・・・延長がでると思うので
 これでプランを更新しておいてください・・・・」と力なく言った。
お前は本当にそれでいいのか・・・・
ちなみにキョウちゃんとるなちゃんは2人で帰っていった。
それ以降も何故かハカセとるなちゃんが2人で来店しては来るが2人とも別々の部屋に入り
結局後から来たキョウちゃんの部屋に移動しているというパターンが増え始めた。
もちろん入店時のお金はすべてハカセが払っていたのだが。
3人のこの奇妙な関係はしばらく続いた。だがある日を境に異変が起こり始めた。
「もーーマジありえないんだけどーーー!!!!」
「うるさいんだよ!!クソ女!!」
ただでさえうるさかった2人がよく喧口華するようになったのである。
とは言っても喧口華しつつ、また一緒の部屋にいるのだが。
確信に近いものはあったが、恐らくるなちゃんは売りで日銭を稼いで生きている女である。
過去何人かそういう人がいたことがある。
それにるなちゃんは見た目もまぁまぁ悪くはない
だが、いかんせん頭が悪すぎるという欠陥があった。
恐らくキョウちゃんも見た目だけで近くにいたのだろうが、
長くいるにつれてこの頭の悪さに耐え切れなくなったのだろう、
しだいに二人の関係はぎくしゃくしていった。
この頃になると、ややこしいことに3人の関係は逆行していった。
るなちゃんとハカセはまた2人で同じ部屋に入るようになり
キョウちゃんは1人で過ごすようになってきた。
こいつらの関係がますます読めなくなってきた頃遂にジ件は起こった。
その日、珍しくるなちゃんとキョウちゃんが同じ部屋に入っていた。
ただ、この日は先にキョウちゃんが来ており
るなちゃんが来たのはだいぶ後になってからだった。
いつものようにうるさくしゃべっている二人。
毎回注意する八メになるのだが、
俺はその都度キョウちゃんのオラついた態度にイライラしていた。
そして、キョウちゃんがレジにやってきた。
るなちゃんとのおしゃべりに時間を忘れたのか1時間ほど延長を出していた。
といっても、1000円もかからない金額である。
「延長料金発生していますので支払ってください」と俺は言った。
その一言にキョウちゃんは、まさかの返答を返した。
「あ、今金ねぇわ・・・」まぁ別段驚くことではない
うちの店で働いていると、200円や300円を支払えず。
降ろして来いと言っても、そもそも銀行にお金がないというパターンも少なくないからだ。
ただ、お金が払えないにも関わらずオラつくキョウちゃんの態度が癪に障った。
「おう、今金ねぇからよ、ちょっと待っとけ」
「後輩に連絡して、後から払うからよ、また来るわ」
正気かこいつ、金払えないのになんでそう上から目線なのか・・これがDQNの怖いところである。
ちなみにこういう時の対応はマニュアルなどがあるわけではないので
人それぞれだが、俺は理由なく一旦外に出すということは絶対に認めていない。
何故なら、後から払います、後日また支払いにきますといった客が戻ってくる確率は0%だからである。
かつては甘い顔見せ、そうですかそれでしたら期日にまでに来ていただければいいので
と仏の顔を見せた俺がその心を何度踏みにじられたか。もはや数えるのも憂鬱だ。
本当に財布の中にないだけというパターンの人も
外にでるときは財布や携帯の一切合切をあずけ
キャッシュカードだけを持って出て行ってもらうようにしている。
本当に支払う気があるなら、これを拒否する理由がないからだ。
出ていこうとするキョウちゃんに対し
「いや、お金払ってもらえないなら外に出ないでください」
俺は静かにそう告げた。
「あぁ?だから今ねぇつってんだろ?取りに行かなきゃ払うもんも払えねぇだろうが」
「でしたら、携帯と財布をこちらに預けてもらえますか?」
「あぁ!? 何様だお前!!なんでそんなことしなきゃならねえんだよ!払うつってんだろうが!!」
「あなたがここに戻ってくるという保証がないからです」
「ここに預ける前に携帯でお知り合いと落ち合う場所を決めて合流なされば済む話でしょう?」
「てめぇ、、客を疑ってんのか?払うつってんだろうが!!!なめてんじゃねぞ コラァ!!」
「疑っているか?当たり前でしょう」
「延長料金についてはご入店時に説明してますし
 それを承知の上で延長して、お金が払えないとおっしゃる方をどう信用しろと?」
「とにかく出て行きたいなら、携帯と財布。嫌なら今すぐ払ってください」
チッと舌打ちしながら、キョウちゃんは誰かに電話をかけ始めた。
とりあえず、ここからは出て行かずレジ前で後輩を待つ様だ。
しかし、30分経っても40分経っても誰も現れない。キョウちゃんはイライラし始めた。
同様に俺は先程からのキョウちゃんの態度のせいで彼の2倍はイライラしていた。
その苛立ちからか俺はレジ前で待っているキョウちゃんを煽っていた。
「まだ、お知り合いの方来られないんですかー?」
「ほんとに来られるんですかー?」
「来られない場合はK察呼ぶことになっちゃいますけどー?」
うるせぇ!!とキョウちゃんに怒鳴られながらも
こちらもイラついているため反抗心で何回か煽った。。
ちなみに、よく脅しでK察呼びますよといったり
所持金不足の客がK察呼ばれるんですか?と怯えたりするが
基本K察は呼んだところでなにもしてくれない。民事不介入なのでの一言で
なにかしらの刑事ジ件に発展していない限りはそそくさ帰っていってしまう。
つまり金銭トラブルが発生した際、
そいつが本当に金を払えなかった場合は泣き寝入りするしかないのだ。
そんなやりとりを続けているとゴリゴリの体にタンクトップ
ニット帽を被り肩から見えている刺青を隠さないスタイルの男と
パーカーを着た小柄な男の2人がやってきた。刺青男が口を開いた。
「〇〇さん!どーしたんすか?」
正直この時点で大分ビビっていた。
まぁキョウちゃんとパーカーの方はいいとして、刺青男の厳つさが半端ではなかった。
このスレ内でよくウシジマくんという名前が出てくるが、肉蝮そのものであった。
「いや、悪いんだけどよちょっと今手持ちがねぇから金貸してくれ」
「さっきからこいつが払え払えってうるさくてよ!」
「マジっすか!まぁ別にイイっすけど
 ってか、さっきからこの店員めっちゃキレてるじゃないっすかww」
何故かパーカーに煽られた。
確かに、その時俺はカウンターに片手をつきながら
キョウちゃんにメンチを切っている状態だった。
ただ、刺青男の厳つさにビビり、とりあえず冷静になることにした。
「とりあえず、貸しますよどんくらいっすか?」
「5千ぐらい頼むわ」
ちなみに延長は1000円ぐらいである。
「えっ、そんなかかるんすか?」
パーカーが少し不満げな声をあげた。
「いや、まぁ、るなちゃんの分も出しとかないとさ……」
この日、ハカセはおらず後から来た、るなちゃんの分はキョウちゃんが払って入店させていた。
こいつらはこのまま帰る雰囲気だったので
るなちゃんのプランを更新しておかないと延長がでるとキョウちゃんは考えたのだろう。
しかし、刺青男がそれに反論した。
「えーっもういいじゃないすか!!あんな頭のイッてる女ほっときましょうよー!」
そこそこ語気を荒くして言い放った刺青男。
どうやら、るなちゃんにはうんざりしているようだ。
「でもよぉ……」パーカーも刺青に続いた。
「そーっすよ!!あんな奴の面倒みる必要ないじゃないすか!!もう行きましょ行きましょ!」
キョウちゃんは割り切れてはいない様子であったが自分の延長を払い
るなちゃんが延長した時にと1000円だけこちらに預けて帰って行った。
そして、これを最後にキョウちゃんの姿を見ることはなくなった。
さて、キョウちゃんもハカセも不在で、るなちゃんが店内にいるという珍しい状況になった。
まぁとはいってもるなちゃんもいい歳の大人である。
喋る相手もいなくなれば、静かに過ごして帰っていくだろうと思った。
しかし、これは大きな間違いであった。
キョウちゃんが帰った後そこそこの時間が経っていた。
るなちゃんの延長料金も2000円を超えていた。
うちは一応延長が2000円を超えるようなら一度確認のために声をかけるというルールがある。
俺はるなちゃんに退店するかプラン更新するかを問うため、るなちゃんのブースへ向かった。
「すいません、延長料金が2000円を超えてらっしゃるので
 お支払い頂くか、プラン更新していただきたいんですが」
「えーーどういうことーーーわかんないーーキョウちゃんは?」
相変わらずうるさい。
「お連れ様はもう帰られましたよ、どうしますかもう出られますか?まだいますか?」
この頃になると、るなちゃんへの接し方は5才児に対するそれになってきていた。
「え、キョウちゃんいないのーー、じゃあ、るなも帰るーーー」
「わかりました。じゃあご延長が2000円になります。
 お連れ様が1000円おいて行かれたので1000円分だけお願いしますね。」
「え?キョウちゃんが最初はらったよーー?」
「いえ、最初に払った分の時間から延長されてるから延長料金がでてるんですよ」
「え?だってお金払ったじゃん最初にーーキョウちゃんがー」
「ですから、それは最初の時間の料金ですので・・・」
「えーだってお金払ったもん・・・」
「それとは別です。3時間って書いてあるでしょ?」
「で今22時じゃないですか入ったのが16時だから3時間は延長です」
「しらないーーーーだって、るなの分は最初に払ったもんーー」イザナミだ。
この時、キョウちゃんがるなちゃんを切り捨てた理由を痛感した。
完全にトチ狂っているのである。
このイカれたやり取りを繰り返すたびに俺のイライラは蓄積し
もはや暴言を吐く一歩手前の状況に陥っていた。
「だから、1000円!1000円でいいんでね!とりあえず1000円払ってください!それでいいんで!!」
「えーーだからぁーー」
「だからもクソもなくて!!とりあえず払え!!財布は!?」
「持ってるんなら今すぐ出してください!!!」
次第に声を荒げ始めた俺に気付いたのか社員がレジから駆け付けた。
俺はあらましを説明し始めた。。と次の瞬間ありえない光景を目にした。
「でさーなんか払え払えてマジうるさくてーーどーしたらいいー?
 えーーーでもぉーーーねぇどうしたらいいかなー?」
俺が必タヒに事情説明している横でなんと、るなちゃんは友達に電話をかけ始めたのだ。
この野郎~~~と思いながら今にも食って掛からんとする俺の姿を見た社員は
「落ち着け俺が対応するから、まず一服でもして冷静になれ」と落ち着いた声で諭した。
とりあえず、社員に従い少し冷静になることにした。
一服から戻ってまずレジに向かうと社員が戻っていた。
聞くと、あれ以降、るなちゃんはずっと通話しており、埒があかないのでとりあえず放置したらしい。
俺はもう一度るなちゃんのもとへ向かった。
すると、もう通話は終わっていたようだったので再び話を再開した。
「お電話終わりましたか?とりあえず先程から言ってますけど延長は1000円です」
「払っていただければこっちもここまでがみがみ言ううこともないんで」
「えーだから払ったっていってるじゃんーーー」
「ですからぁ!・・・」
と言っている最中の俺を尻目にまた、るなちゃんは携帯をとりだすと
「あーーーもしもし、いまさぁーーー」
もはや我慢の限界だった。俺は「携帯での通話をやめろ!」と強く怒鳴った。
「今はこっちが話をしてんでしょうが!!あんたの友達は関係ないから!!」
「延長1000円、それ払うだけでいいんだよ、どうすんの?なぁ!!」
「だってぇーー」
「だってもくそもないでしょうが、こっちはあんたのおかげで迷惑被ってるんだ!!」
「さっさと払えってのが何回言ったら理解できるんですか!!」
すると今までうるさかった、るなちゃんが急にしおらしくなり
「うぅううう なにぃぃぃ、もうわかんなーーい、るなどうずればいいのぉぉぉぉ」
るなちゃんは子供の様に、その場で泣き出してしまった。
ちなみに文章では流れ的に省いたが話す→いきなり電話しだすのループは5回以上繰り返されている。
その度るなちゃんの通話が終わるのを待った。また面倒くさいことになったなと俺は思った。
様子を見に来た社員も惨状をみて露骨に面倒くさそうな顔した。
このままでは以前に増して話ができないので
とりあえず2人で、るなちゃんをなだめることにした。
「あのね、泣かれたところで、なにも変わらないんですよ」
「もう一度言いますけど、お連れの方が払ってくれた額より多く延長されてるんですね」
「これを払っていただかないと、これ以上は滞在できないんですよ」
「でぼぉ、いぐどこないじぃぃぃさいじょにおがねぇはらっだぁぁぁ」
泣きながら語る、るなちゃん。
「だから、それとは別になんですよ、とりあえず、お金は持ってないんですか?」
「もっでなぃぃぃだっでキョウぢゃんがさいじょにはらっだもぉぉぉん」
またその話か・・・頭が痛くなってきた。
おもむろに、るなちゃんはカバンの中身を出し始めた。
流石に俺らが勝手に中身を確認する訳にはいかないので
全てというわけではないが、カバンの中には服や化粧品など
最低限の生活用品しか入っておらず財布は見当たらなかった。
この子ほんとにお金持ってないんだ・・・・・俺たちは、そう理解した。
となると、先程も話した通りK察を呼んだところでなにもしてくれないし
るなちゃんから取ろうにも持っていないものはどうしようもない。
これは泣き寝入りのパターンか・・ともうあきらめて
とりあえず、追い出そうということで結論がでた。
ずっどグズッている、るなちゃんに
「もうお金はいいです。けど払えないんだったら
 出て行ってもらうしかないんで早く出て行ってください」と告げた。
「えぇぇぇぇいぐどごないぃぃぃなんでぇぇぇおがねぇはらっだぁぁ」困った。
これが男などであれば、ブチ切れながら追い出せるのだが
相手はマジキチとはいえ泣いている女である。
無理矢理腕をひいて外に放り投げるわけにもいかなかった。
どうしたものかと悩んでいると、そこに救世主が現れた。そう、ハカセである。
このタイミングでよくぞ来てくれた!!と俺たちは喜んだ。
もう全てハカセに任せようと決心した俺たちは
るなちゃんが延長を払えないこと、しかし行く所がないこと
出て行ってもらわなければならないがグズッていることを話した。
ハカセはいつも通り聞き取れない程弱々しい声で
「わかりました・・・いくらですか・・・・」と聞いてきた。
ハカセは、るなちゃんの延長料金を払いプラン更新の料金もまとめて払った。
なんとか一段落した。「一応心配だったので延長には気を付けてくださいね」とハカセに念を押した。
しばらくすると、また、るなちゃんのうるさい声で
「ああぁぁあハガゼぇぇぇ どうじよーーー」
「お金は払っておいたから・・・もう少しいてもいいらしいよ・・・・」
「ほんどぉぉお ありがどぉぉぉぉ」という会話が聞こえた。少し心が温まった。
もちろんありますが、漫画コーナーだけの利用なら提示はいりません。
喫煙席は見た目的に怪しいなと思ったら求める程度です。
るなちゃんはたしか身分証明書になるものを持っていなかったと思います。
これ以降、元鞘?というべきなのか、るなちゃんとハカセが再び2人で来店することが増えた。
俺はもう一周回った考えで、この子を大人だと思うからダメなのであって
小さい子供だと思って接することにしようと決めてからは
るなちゃんに対して特に腹がたつこともなくなり、なんなら少し仲良くなっていった。
クリスマスの日、るなちゃんとハカセがやってきた。
るなちゃんは元々金髪で肩まで届くか、ぐらいの髪の長さだったのだが
スーサイドスクワットのハーレクインのようなツインテールにサンタのコスプレをしていた。
「どうーー?どうーーー?かわいくなーーーい?」
「へぇーコスプレかぁ、かわいいかわいい」
完全に俺は子供に対する感覚で話しかけるようになっていた。
「そーでしょーーー実はこれすごいんだよーーーー ほらッーー!!」
いきなり、るなちゃんのツインテールがもげた。
まさかの着脱式ツインテールにびびっていると
ツインテール自体にカーラーのようなものがついていた。
これを地毛に挟み込みこんでつけてたのか・・・・
「すごいっしょーーー!ドンキでかった!!(ドヤァ)」
「ちょっとおもしろいね、これ。」などといいながら
るなちゃんの後頭部にツインテールをつけて遊んだりした。
ハカセはほほえましそうな顔でそれを見ていた。
ただやはり、るなちゃんはうるさい。
部屋に入るたび、声がひびくので
るなちゃんうるさいよ静かにして!っと注意しにいくことは度々であった。
そんな状態が、しばらく続いていたころ。ついにハカセも愛想をつかしだした。
なにやらブースで話しているとき、ぼそぼそと文句ばかり言うようになってきたのだ。
ペアブースに一緒に入ることもなくなり、また別々のブースに入るようになった。
ある日夜勤の連中があまりにも注意に聞く耳もたず
うるさい、るなちゃんに痺れを切らし
ハカセに「お連れ様の話し声をなんとかして頂けませんか」と頼んだ。
ハカセは諦めたような顔をしながらボソッと
「すいません、あの人本当に頭がおかしいんですよ」とこぼした。
この日以降、ハカセとるなちゃんは来店して来なくなった。
それから、1か月程過ぎたころの夕方、いきなり、るなちゃんが1人で店に来た。
そしてレジに来るなり開口一番「キョウちゃんは?」と聞いてきた。
え?ハカセじゃなくて?と思った。とりあえず
「キョウちゃんなんて、あの日以来一回も来てないよ
 どしたん?るなちゃんお金持ってないんだから1人じゃ入れてあげないよ」と俺は返した。
「うそ!うそ!いつもこの時間にいるって言ってたもん、キョウちゃんは!?いないの?」
だからいないと言っている、そもそも本当にキョウちゃんはあの日以来一度も来ていない。
そして確かに、この時間によく来ていたが、それは過去の話だ。
そんなやりとりをしていると1人の男が慌てて入店してきた。
うちの店の真隣にはエスニック料理の店がある。インドだかネパールだかの店だ。
そこの従業員は休憩中などにうちを利用してくれるのでよく知っている間柄である。
そのネパール人が入ってきたのだ。
そしてなにやら、困った顔で、るなちゃんを見つめている。まさか・・・・と思った。
正直、従業員のネパール人達は最低限しか日本語がわからない
特に日本語が不自由な、るなちゃんの言っていることなど理解不能だろう。
俺は従業員に対して「どうされたんですか?」と尋ねた。
「ソノヒト オカネ ナイ・・ ココイケバ 八ラエル イッタ」
どうやら食い逃げした挙句、何故かキョウちゃんを頼ってここまで来たようだ。
とりあえず、この二人にいつまでもレジ前にいてもらうわけにはいかないので、るなちゃんに話しかけた。
「るなちゃんさぁ、またお金持ってないのに店入ったの?」
「駄目だよ、あのねお金がないと、どんな店も利用できないんだよ?」
「なんでぇ、るなお金持ってないよー 払えないんだけど」
「本当に1円も持ってないの?だったらタダの食い逃げだよ、お金もないのに、なんで店入ったの?」
「えーーわかんないーーーキョウちゃんはーー?」
「だから、キョウちゃんは、もういないってば・・・・」
これ以上は埒があかないし、多分本当にお金も持ってないだろう。
ネパール人も困った顔で佇んでいるので、もう最後の手段ということでうちでK察を呼んであげた。
とりあえず、ネパール人のために俺が事情を代わりに説明し
グズッている、るなちゃんにお金がないならどうしようもないよと告げ追い出した。
恐らく、食い逃げというのも微妙なもので、
K察を呼んだところで、なにができるのかはわからなかった。
しかし食い逃げうんぬんより、この哀れな女を保護してやって欲しいと切に思った。
それからだいぶ時間がたった。
るなちゃんは往年の名選手として記憶には残っていたが、あれ以来一度も姿を見せず
バイトもごっそり入れ替わったので存在を知っている者も一握りになった。
ある日、ノースリーブの背中がざっくり空いた露出度の高い服を来た女が入り口に来た。
女はガリガリにやせ細った手足をしており、化粧っ気はなく血色の悪そうな顔色をしていた。
「いらっしゃいませ」と俺は声をかけた。
すると、その女はこう言ったのだ「キョウちゃんは?」
俺はハッとした。
「お前・・・・るなちゃんか・・・・?」
あまりにも変わり果てていた。
かつてのるなちゃんは若作りしている感は残るものの
イケイケのギャルといった見た目で、そこそこ綺麗だった。
しかし、目の前の女はただ、みずぼらしい、そう形容されてしかる容姿であった。
「あれ?なんで、るなの名前知ってるの?キョウちゃんは?」
以前の、るなちゃんとは打って変わって覇気のない、か細い声だった。
そこそこ接していた事はあったのに俺の事も覚えていない様子である。
加えて、ハカセではなくここでも何故かキョウちゃんなのである。
「キョウちゃんなんて、もうずっと見てないよ、もうここに来ることもないと思う」
俺はそう伝えた。
「なにそれ・・・いみわかんない・・・」
か細い声でボソッと呟いた、るなちゃんはそのまま店を後にした。
これ以降は本当にるなちゃんを一度も見かけたことはない。
売りで日銭を稼ぎ、滞在を繰り返す女性はいる。
そういう女性たちは、、必ずシャワーを浴びた直後に外出し
明け方帰ってきて夜になるとまた出かけるのだ。
「助け」…といえば学生が小遣い稼ぎにやるものだというイメージを持っている人が多いと思う。
しかし、ネカフェ難民の中には、
その日を生きていくためにこういう稼ぎ方をする人たちが多く存在する。
それは日雇いの仕事などをするよりは遥かに割がいいのかもしれないが安定した収入源にはなりえない。
こういった女性は所持金不足を出すパターンが度々ある。
るなちゃんもそんな女性の中の一人だったのであろう。
一応ランキングにいれて話を書いたが。
書いてる途中に懐かしくなり、不思議とまた会いたいなぁと思える唯一の人物でした。
匿名の彼女の巻~完~
【第1位】狂気の師弟愛の巻
この頃、店長が変わり新体制として動き出したばかりだった。
新店長はとてもいい人であったが、まだ会社に入りたての人だったので
どこかトラブルは避けたいという心持ちが見られた。
そんな中奴らは現れたのだが、最初から違和感満載の2人であった。
まず片方は身長160cm程の体躯に汚らしい髭を蓄え白髪混じりの髪を角刈りに整えていた。
見た目からして40代半ば程であろうか、
突き出た出っ歯が相まってドブネズミのような風貌の男であった。
一方、もう片方の男は身長150cm後半の小柄な体系で柄本時生にそっくりであった。
恐らく年齢は20代前半だと思うのだが、中学生と言われれば納得できるし
30代前半と言われても納得できるような顔立ちであった。
恐らく全身から発している、こいつ使えなさそうだなぁ・・・
という雰囲気がそう錯覚させるのだろうか、
とにかく見た目に反して幼い印象を受けるそんな小男であった。
おっさんの方はべらんめぇ口調の江戸っ子で、2人で入りてぇんだと告げてきた。
2人で同じ部屋に入るのか・・こいつらどういう関係性.?と疑問に思った。
途中おっさんは若いほうに、おう、おめぇはどうする?などと問いかけていたが
若いほうは「ぁ・・・・・・」となにか喋っているのだが、
あまりに小さい声でぼそぼそと喋るため何を言っているのか全く聞き取れなかった。
いつものことなのか、おっさんは、
「いつもいってんだろうが!もっとはっきりしゃべれ!」と怒っていた。
これがやつらとのファーストコンタクトだった。
これ以降2人はよく来店してくるようになった。
来店してくる時間は大体21時を過ぎてからで
朝の6時頃には出ていくというのがいつものパターンだった。
そして、数か月を経た後ハゲと一緒のパターンで住み着くようになり始めた。
底辺は自分と対等以下に話ができる者に飢えているので
馴れ馴れしく話しかけてくる奴は地雷
底辺は自分をとにかく自分を大きく見せたいので
明らかにつじつまの合わない嘘でも堂々と吐ける
という事を教えてくれたのが、このおっさんである。
こいつから学び取ったことを教訓にしていた結果
第三位のジ件の時、俺はハゲを早々にガイジ認定し関わらないようにすることができ
店内で唯一ハゲからの直接的被害を受けなかった。
しかし、この時点では長いバイト生活の中で
俺がまだ出会ったことのないタイプのガイジであった。
まぁバイトに入っている頻度の問題もあるが、俺はこいつらの接客をすることが多かった。
2人で入った後、若いほうは全く姿を見せないのだが
おっさんの方はカウンターに来て店員に話しかけてくるようになってきた。
俺は元々の性格もあるが、あまり馴れ馴れしく話しかけられる事が嫌いだったので
そうですか。そうなんですね。など語尾を。で終わらせ
基本的には話を広げないような対応をするのが常だった。しかし、同僚は違った。
この同僚、俺より長く働いており、マジキチと出会った回数は多いはずなのに
根が善良なためかガイジ達の自分語りを真面目に聞いてあげてしまうという悪癖があった。
内容はというと最初こそ兄ちゃんたちは若いのによく働いていて感心するよといった
下町の親父テイストなものだったが、段々とどうでもいい自分語りに移行していった。
こちらに対して興味がある。
といった体から自分の話を聞かせたいだけにシフトしていくのは
この手のガイジの基本パターンである。
おっさんが語った内容は次のようなものだった。
俺はラーメン屋を複数経営しており、何十人もの従業員を抱えている。
上に立つ人間になると人を使うということがどれだけ難しいか、よくわかる。
月収は60万程で近くに家を3件ほど所有している。
今は仕事が忙しく家にも帰れない状況なので職場に近い、この店に寝泊まりしている。
ということだった。
まぁ、この時はなんで、そんな嘘をつくんだろう?ぐらいの感想であった。
そして、一番気になっていた若者との関係である。
これはジ件終了後になっても、いまいちはっきりしなかったのだが
本人曰く、ある男と飲み屋か何かで知り合いになった。
大層仲良くなり、その人から「あなたの人柄を見込んで話がある」と言われたそうだ。
実は男には息子がいた。これがまた出来の悪い息子で、
もう成人しているのだが、もの覚えが悪く社会性の全くないおかげで、
どんな仕事に就いても直ぐクビにされてしまう。
もし私がタヒんだら1人で生きていくことなど到底できないだろう。
だから、あなたの所で働かせて息子の性.を叩き直してほしいのです。と男は語ったらしい。
おっさんは「わかりました。うちの従業員としてビシバシしごいて真っ当な人間に更生させますよ」
と快く引き受けたそうだ。
ここからは、おっさんのことを彦龍。若者の方を丁稚と表記する。
こうした経緯から丁稚は彦龍に引き取られ彦龍の店で働きだしたらしい。
しかし、この丁稚上述した通り、つかえないを絵に描いたような男で
帰ってくると毎回ブースで、周りの迷惑になるほどでかい声で、
「だからいつも言ってんだろぉが!おまえはぁ!!」と
仕事のことで彦龍にマジ切れされる。
たまにレジに来ても「ぁぁの・・・あwせrftg」と声が小さい、
ぼそぼそ喋るのコンボで全く何を言っているのかわからない。
コンビニにお使いに行かされるも、なにも買ってこないで帰ってきて、
また怒鳴られるといったように見ているだけで不安になるような男であった。
そんな男を任された彦龍に同情を感じた同僚が
大変ですね声をかけると彦龍は何故かどや顔で
「いや、そうはいっても、俺はあいつを
 立派にするっていって責任もって親御さんから預かってんだ」
「そりゃ怒鳴ることも多いけどよ、それだってあいつに
 まともになって欲しいっていう愛深きゆえの叱咤なわけよ」
「だからよ俺ぁあいつのことを家族だと思ってるし、
 自立できるまではしっかり見守ってやりてぇなと思ってんだ」と語った。
ドヤ顔なのは癪に障ったが、あの丁稚をまともに更生させるのは
並大抵のことではないだろう、その部分にだけは俺も少し同情した。
しかし、彦龍は愛深きゆえに愛を捨てることになるのである。
こう語った彦龍であったが、次第にその狂気が表面化していくこととなる。
まず丁稚に対して怒鳴ることが圧倒的に増えた。
本当に大声で怒鳴るため俺たちがお静かにとなだめに行くことも、しょっちゅうであった。
そして、怒鳴った後はなぜかにこやかになり
まぁ、俺もお前のことを思ってこういうことを言ってんだからなと語り急に優しさを見せる。
完全にDV男のそれである。
ちなみにハゲや彦龍、がしゃどくろ等は完全にこのタイプのキチであり
ブチ切れた後は何故か馴れ馴れしく謝ってくるという特徴がある。
このような状態がしばらく続いた後、事態は更に悪化する。
ある日、いつものように2人が帰ってきたのだが、そこには大きな違和感があった。
丁稚の左頬が赤く腫れていたのだ。そう明らかに殴られた跡である。
この日以降、ブースからは彦龍の怒鳴り声に
バキッ!という効果音が追加されるようになった。
彦龍は丁稚の事を殴りつけるようになったのである。
それはブース内にとどまらず、通路などで殴っているのを見かけるようにもなった。
そういう時は、他のお客様のご迷惑になりますのでと注意はするのだが
「これは俺とこいつの問題だからよぉ口挟まねぇでくれ」と一蹴されてしまう。
丁稚は日を追うごとに頬を腫らし、目には青痣を作る痛々しい姿に変わっていった。
この時期、彦龍はイラついた態度で俺達に接してくることが増えた。
しかし、何故か店長にだけは気持ち悪いくらいフレンドリーな対応を崩さなかった。
ある日のことである。
彦龍がいつもの如く丁稚を殴った後、イラついた態度でレジ前に来た。
俺はガイジ相手には、かなり冷たい態度をとると今まで書いてきたが
あくまでそれはルールを破った奴や業務に関係ない雑談などで粘られた時である。
あくまで通常時は愛想がとても良いとはいわずともそれなりの対応をしている。
彦龍が物販のラーメンを買おうとしたので、
ありがとうございまーすとレジを打った、その時である。
「あのよぉ、兄ちゃんはまだ若けぇし
 俺もそういう何も知らねぇ時期があったから何も言わねえけどよ」
「目上に対する態度ってのは大事だからな?」
「次にまた言わせることがねぇよにしろよ、今回はいいけどな」
……………………………は?
こいつに文句を言われた意味が本当にわからなかった。
確かに俺はガイジと接する時不機嫌な声になったり、
メンチをきてしまったりすることはあるが
この時に至っては至極真当な対応をしたはずだ。
恐らくは丁稚に対するイライラを解消するための八つ当たりだろう。
俺のイライラも相当なものになった。
そんなイザコザから彦龍への憎しみが蓄積していた頃、衝撃のジ件が起こった。
丁稚が行方不明になったのである。その日俺は夜勤として出勤した。
その時はまだ2人とも店内に滞在していた。
そして、そのまま先に休憩をとることにし、終わって戻ってきた時のことである。
彦龍が1人部屋に移動しており、丁稚の姿が見えない。
どうしたことかと思い同僚に尋ねてみた。どうやら彦龍が丁稚を追い出したらしい。
その一部始終を同僚は目撃し、更に彦龍から話も聞いた。
ここで丁稚もまたトチ狂った人間であることが明らかになる。
まず2人が入店したり、飯を買う時は基本的に彦龍が金を払っていた。
これは彦龍が丁稚の保護者なので当然だと考えていたのだが
彦龍は丁稚に月5万円ぐらいの金は渡しており、
ネカフェ暮らし程度なら自分の金である程度まかなえるはずなのである。
では、何故彦龍が丁稚の分まで金の世話をしていたのか。
それは丁稚に月5万円程渡しても次の日には全部無くしているからだというのだ。
そして、その原因というのがパチ〇コであった。とんだクズである。
そういうことが続いた結果丁稚には金を持たせなくなったらしい。
話を戻す。この日の昼頃、彦龍は丁稚に、どういう事情かは忘れたが
とにかく10万円程を預けて「俺は先にネカフェに戻るから後から持って来い」と言いつけたらしい。
そして、深夜店に戻ってきた丁稚であったが、なんと10万円は持っていなかった。
理由を聞くと、落としてしまった・・・としか答えない丁稚。
しかし、如何に無能な丁稚と言えども、
10万円という大金を預けられて不用意に落とすはずがない。
これに怒り狂った彦龍、不敗の帝王の拳がその威を奮った。
打ち込まれる拳打の嵐、そうまでされてやっと丁稚は自白した。
そう、預けられた金を全てスロットに突っ込んでいたのである。
ここでほとほと愛想が尽きたのだろう。
「てめぇのことなんぞ、面倒見る価値もねぇ!どこへなりとも消え失せろ!」
と丁稚に告げたのである。
丁稚は傷だらけの顔のまま無言で店を出て行った・・・・
ちなみに、この頃の丁稚はいつも焦点の合っていない眼球で
射刹すような視線を彦龍に送るようになっていた。
その眼差しは端から見ていて、
いつ彦龍を刺し刹しても不思議ではない狂気を漂わせていた。
出ていく際の丁稚はそれと全く同じ眼をしていたのである。
同僚はナイフでも持って戻ってくるのではないかと心底恐怖したらしい。
同僚は、とりあえず彦龍に、このまま出て行かせていいんですか?と聞いたらしい。
彦龍は
「一応目をかけてやってたが甘やかしすぎたのかもしれねぇ、
 もういい、あいつも1人で生きてくってことを知らなきゃなんねぇ」
「俺がなんでもかんでもやってやってくれるのが当たり前だと思われたら、
 かないやしねぇからな。これからあいつの好きなように生きていきゃいい」と答えた。
帝王はあっさりと愛を捨てた。
まぁ丁稚の方も温もりを覚えたことはなかっただろうが…
そして丁稚が出て行った後、すぐに彦龍が通路で電話をかけ始めたらしい。
「いや、だからね、お宅の息子さんのせいでですね……
 それは……勘弁してくださいよ……ですからね……そっちの責任なんですから!……」
話し相手は丁稚の親のようだった。
この時点で予想は確信に変わりつつあった。
まず彦龍は確実に底辺の人間である。
ラーメン屋を複数経営し月収60万などと語っていたがあきらかに嘘である。
昔ラーメン屋でバイトしていた時の事でも脚色して話しているのだろう。
そして自分1人が生きていくのに精一杯な底辺が
足手まといとなる丁稚の世話を見ることにメリットなどない。
それならば何故丁稚を引き取ったのだろうか?
それは恐らく丁稚の親から丁稚の面倒を見るという名目で金を受け取っていたのだと思われる。
そして、それをピンハネし自分で使っていたのだ。こう考えると辻褄が合う。
丁稚を出汁に生活保護を受けていたようなものである。
同僚が電話の会話内容を聞いていると、彦龍は
「丁稚に預けていた金を失くされた」
「あんたの息子がやったことだから、あんたが払ってくれ」
というような内容だったらしい。
しかし、彦龍の声色を聞くに拒否されているようだった。
そんな出来事から数時間後
この日のバイトも終わり店の外に出ると
道路の縁石に腰掛けうなだれている丁稚がいた。
俺が休憩から戻ったのが深夜3時だとしてバイト終わりが朝9時
俺が休憩から戻る前に丁稚は出て行っているので、
最低でも6時間は外でうなだれていたことになる。
その表情は暗く、全ての希望を奪われた絶望の表情であった。
悲惨だな・・・・と思いながらも俺は特に声などかけたりせず帰宅した。
そして、それ以降現在に至るまで、丁稚は行方不明のままである。
これ以降彦龍の生活は困窮を極めていくこととなる。
もう一度言うが彦龍は月収60万円、
複数のラーメン店を営んでいるという設定である。
彦龍は今まで24時間のプランで更新を続けていたが、
手持ちの金がなくなったのか12時間のパックで小刻みにプランを変更し始めた。
そして、そんなある日の事である。夕方に出勤してすぐの事であった。
何故か苛立ちを隠さない彦龍がレジにやってきた。
そこで、彦龍は驚きの一言を口にするのである。
「あのよぉ、タバコなんだけどよぉ、いまちょっと手持ちがないから
 ツケで売ってくれねぇか、店長とは話つけてるからよぉ」
・・・・・は?
認められるわけがないし、大体店長がそんなことを許可する訳がない。
身元すらはっきりとしていないホームレスが
何故ツケを容認されると思っているのだろうか、ひどい思い上がりである。
「なにをおっしゃられてるのか、よくわからないんですが」
「ツケは一切認められませんので、申し訳ございません。
 そもそも店長がそのような不正を容認するとも思えませんので」と俺は答えた。
次の瞬間、彦龍は豹変し激怒した。
「てめええええ!!!! なんだ、その態度はよぉ!!!!!それが客にとる態度か!!!!!!」
こちらも大分イラついたが、平静を装い、こう答えた。
「何にそこまで腹を立ててらっしゃるのか、よくわかりませんが
 態度は別にしてツケは認められませんよ、当たり前じゃないですか」
「てめぇ!!!ガキだからって今まで甘やかしてやってたけどよ!!」
「大人の怖さってもんを見せられねぇと気が済まねぇみたいだな!!!」
「とりあえず、店長に電話しろ!!!てめぇなんざ
 俺が言ってやれば一発でその首落としてやれるからよ!!!」
毎回思うのだが、何故そこまで自分が偉いと錯覚できるのであろうか。
「お断りします。店長は今日休みです」
「休みだぁ?なんの関係があんだよ!!!俺が呼べっつってんだよ!!!
 常連の俺がな!!!断るもクソもねぇだろ!!」
「いえ、あのですね。うちは24時間営業かもしれないですけど、
 店長は人間なんで24時間営業じゃないんですよ。普通に考えればわかりませんか?」
「業務的に自分の責任ではどうしようもないトラブルがあれば呼び出しもしますが
 あなたの言ってる程度の事で、休みの人間にわざわざ電話をかけるほど私は図々しい人間ではないので」
すると急に喚き散らしていた彦龍が少し大人しくなった。
「あぁーてめぇは最後までそういう態度をとるわけか・・・・」
「わかった、もう俺を完全に怒らせちまったな」
「どうなっても知らねぇからな。お前に社会的制裁を加えてやるよ」
そう言うと、彦龍はおもむろに携帯を取り出し、どこかに電話をし始めた。
「あぁ・・・俺だけどよ・・・今どこにいる・・・?
 おぉ、、じゃあ○○駅まで来てくれ着いたらまた電話くれよ・・・・」
そして次の瞬間またも俺の琴線に触れる一言を吐いてきた。
「今うちの店で使ってる顧問弁護士を呼んだからよ。まぁ、その人のお前のことは任せるわ」
俺は絶句した。
底辺は何故ここまで権力に固執し、自分を大きく見せたがるのか・・・・
本当に弁護士がきたとして何を話すことがあるのだろうか・・・・
せいぜい、ツケを強要しようとした部分が脅迫にあたるのではないかと
こちらが逆に攻める立場になるのだと思うのだが・・・・
「お客様の意図がまったくわからないのですが・・・・」
「とにかく、ツケは無理ですので。
 嘘だとは思いますが店長に後日連絡して確認はとっておきます」
「その上で改めて店長からお話を聞いてください
 店員の私より店長の言葉の方がお客様もご納得頂けるでしょうし」
と答えると彦龍は肩を揺らしながら部屋に帰っていった 。
その日のバイトの時間が終わっても弁護士が訪ねてくることはなかった。
先の一件以降、彦龍は店長に対し度々ツケでタバコを催促したり
週末料金適用期間であるにも関わらず
自分だけ平日料金にしろ等と無茶な要求を繰り返し
金がないことを隠さなくなってきていた。
何度も言うが月収60万円、複数のラーメン屋を経営し、家を3件持っている男である。
店長は上述したが、まだ入りたての中途社員で
前職がサービス業だったこともあるのか
常連や店にお金を落としてくれる人には甘くしようという考えがあった。
しかし、それは間違いである。
俺の様々な経験から、この店での常連客に対する正しい扱い方は「生かさず刹さず」なのである。
常連だからと甘い部分を見せると、たちまちつけあがられ増長されてしまうからだ。
先の一件も店長に話してみると、
どうやら「本当に今回だけですからね!」と念を押した後
店長が一回だけタバコを彦龍に渡してしまった事に起因していた。
俺は店長に、ツケの強要や店員への暴言などの実害を生んでいる彦龍を追い出そうと提案した。
しかし、店長は
「次に何か決定的な事があれば、そうしていいけど・・・・」
「今はちょっと我慢してもらっていいかな・・・・」と答えた。
モヤモヤしたものを胸に感じつつも、
店長がそう言うのであれば仕方がない、と納得しておいた。
しかし、その決定的な出来事はすぐに訪れるのである。
その日俺は夜勤での出勤であった。
そして、明け方の5時くらいであろうか
彦龍がかなりの延長を出していることに気が付いた。
そうこうしている内に彦龍がレジにやってきた。
「ご延長3000円になりますね」と俺は告げた。
すると、彦龍はこう答えた。
「ちょっと、今払えねぇからよ・・後で払うってことにしてくれねぇか?」
「後で絶対払うからよ、とりあえず、24時間のプランで更新しといてくれ」
いつもなら、ブチ切れるところであるが俺はこの時、内心ガッツポーズした。
ようやく、こいつを合法的に追い出せる!と。
嬉しさをかみしめながら、淡々と答えた。
「いえ、なんども言っているように、
 お金頂けないと無理なんでとりあえず、延長分はありますか?」
「それさえ支払っていただいた後出て行ってもらえるなら何の文句もありませんので」
「いや、あんたの言い分もわかるよ?だけどな
 今、お金がないからこうやって頼み込んでるんだよ」
「今まで俺はぁこの店をずっと使い続けてきたわけだし
 そこにぁ信頼関係ってもんがあるだろ?」
「この分は後でしっかり払うって言ってんだから黙って、やってくれよ」
信頼関係?なにを言っているのだろうかこいつは
というか金が払えない分際で何故上から目線なのか・・・
「いえ、店を使い続けていたとか関係ありますか?」
「お金が払えないんでしょう?でしたら、もうご利用頂くことはできません」
「それだけの話です。前にも言った通りツケは認めていませんので。
 しかし、ご延長だけはしっかり払ってもらいますよ」
「これはもう発生してしまっているものなので」
「もういい!!!てめぇじゃ話にならねぇからよ!!店長呼べ!!店長!!!」
「あのですね、今、朝の6時ですよ」
「こんな時間に電話をかけるなんて常識知らずもいいところでしょう?」
「少し考えればわかって頂けると思うのですが」
「うるせぇよ!!!てめぇみたいな下っ端じゃ
 話にならねぇって言ってんだよ!いいから電話しろ!!」
こいつのいいなりになる気はサラサラなかったが
あまりにもしつこかったのと、店長のお墨付きをもらって
こいつを追い出せるかもという考えから俺は店長に電話することにした。
幸いにも、その日の朝番は店長だったので
眠そうな声をさせながらも店長はすぐ電話に出てくれた。
俺は事情をかいつまんで説明し、彦龍に電話を代わった。
彦龍は電話を代わった直後、何故か俺の態度の悪さを非難する内容しか喋っていなかった。
しかし、店長がまともにとりあわなかったのか、
その後は、とにかくこの場はツケで滞在させろという懇願に変わっていった。
もちろん最初は拒否し続けていた様だが、
朝の眠気と彦龍のしつこさにうんざりしたのか
会話はいつ払うことができるのか?今回だけだからという方向にシフトしていた。
俺は電話の成り行きを見守りながら内心マジか!?と思った。
ここで、この屑を甘やかしたら碌な事にならないという確信があったからだ。
しかし、俺の内心とは裏腹に、彦龍との会話が終わった店長と話すと
「今回だけは全部ツケにしといて、まぁ最悪俺が払うからという」返答が返ってきた。
金の問題ではなく、屑を甘やかし例外を認めた事実が大問題なのである。
しかも、この時延長とプランの更新代を含めるとレジは1万円程マイナスになっていた。
まぁ、店長が認めたことなので、この場をツケにするというのは認めよう。
しかし、このクズを何の首輪もつけずに外へ出すのだけはタヒんでも阻止しなければと思った。
店長からも一応逃げないように身元のわかるものは押さえておいてとの指示があった。
電話を切った後、俺は彦龍に告げた。
「この場をツケにするのは、店長も許可した通り認めましょう」
「しかし、あなたは今、店に借金をしている状態です」
「身分証明書は預からせてもらいますし、
 すぐに連絡のつく携帯電話の番号を教えてもらいます」
彦龍は何を勘違いしているのか反論してきた。
「あ?もう店長と話はついてんだろ!なんで、そんなことしなきゃならねぇんだよ!」
「25日には返すって話で終わったんだよ!!てめぇに蒸し返される筋合いはねぇ!」
「あのですね。先程もいいましたがあなたは今債務者な訳です」
「どこの世界に担保も保証人もなしで金を貸してくれる金融屋がありますか?」
「たかだか携帯の番号と身分証明書です。返す気があるのなら何の問題もないでしょう?」
「それが無理ならK察の方に引き渡すしかないです。
 無い袖は振れないと思いますが無理ならそうするしかないので」
前にも書いたと思うが、K察は呼んだところで頼りにならないし
クズからしてみればさほど脅威ではない。
しかし彦龍はK察というワードにビビる人間だった。
「こんなことでK察か!?お前頭おかしいんじゃねぇのか?」
「ですから、それは最終手段です」
「そもそも勘違いしてらっしゃるようですか
 今こちらがツケという形にしていること自体あなたに大分譲歩してるんですよ?」
「なんなら今すぐK察呼んでもいいわけです。金払わないんですから」
彦龍の顔色は少し焦りの色を見せはじめた。
もちろんK察など何の役にも立たないが
精神的優位に立てるのであれば、この脅しは使っていくべきであると思った。
「身分証明書は……持ってねぇんだよ………」
はぁ?
「嘘つかないでもらえますか?」
「あなた会員証持ってらっしゃいますから
 その時に身分証明書の提示してらっしゃいますよね?」
「身分証明書なしでパソコン使われてたなら、それは問題ですよ」
逆転裁判のように矛盾を指摘する俺。
「違う……落としたんだよ……今は持ってねぇんだ……」
嘘に嘘を重ねる彦龍。
しかし、ここで荷物を無理やり調べるなどと輩じみたことも出来ない。
俺はイライラを積もらせながら、2つ目の要求をした。
「じゃあ、携帯の番号を教えてください」
これにも彦龍は衝撃の答えを返してきた。
「携帯も、持ってねぇよ……」
ここで堪忍袋の緒が切れた。
「あなたねぇ、さっきからなめてんの?」
「携帯で電話してるとこなんて、俺ら何回でも見てるんですよ」
「なんでそうやってしょうもない嘘つくんですか?」
「正直こっちはハナからあんたみたいな人が
 律儀に金返すなんて思ってないからK察呼んでもいいんですよ?」
うろたえる彦龍。
「ちげぇよ……こ、これは仕事用の携帯だから、こっちにかけてこられると困るんだよ!」
「あのね、まだ自分の立場わかりませんか?」
「今、金払ってもらってないこっちが一番迷惑してるわけです。
 あなたの都合はいいから教えてもらえます?ついでに本名も」
「なんで教えなきゃいけねぇんだよ!」
「だからあなたが金を払うって保証がないからでしょ!
 嫌なら今払え!払えますか?無理なら番号かいてください、ホラ」
彦龍は散々渋っていたが、諦めたように電話番号を書き始めた。
しかし、ここで油断してはいけない事を俺は知っている。
すぐさま書かれた番号に店の電話から発信した。
すると俺の読み通り、彦龍の携帯はならなかった。
「どういうこと?また嘘ついたんですか?」
「ち、ちげぇよ!ちょっと間違えただけだよ!!」
図星を突かれ、うろたえる彦龍。
2度目に書いた番号に発信すると今度はきっちりと彦龍の携帯が鳴った。
クズは息を吐くように嘘をつく。
どのような状況でもこいつらの一挙手一投足を信じてはならない。
そして、彦龍の名前は大原博之(仮)というらしかった。
「電話と名前はまぁこれでいいとして、身分を保証するものが何もないのは問題ですね」
「職場の連絡先と名前も書いてください、嘘ついても直ぐに調べられますよ」
「職場は関係ねぇだろうが!!俺個人の問題だ!!!
25日までに払うから待てってのがわかんねぇのか!!」
この後に及んでまだ、この態度の悪さである。俺はとことんイラついた。
「あなたさっきから何回嘘つきました?」
「25日に払う?あなたみたいな嘘つきの話を何の根拠があって信じられるの?」
「身元が保証できないとそのままトンズラこかれた時どうしようもないですから」
「それで身分証明書持ってないんだったら
 職場に電話して身元はっきりさせるのが一番早いでしょうが!」
「そうかよ!!!俺の身元がわかりゃいいんだろ!!じゃあ俺が今から職場に電話するからよ」
「そこの人間に確認してもらえばいいだろうが!ちょっと待ってろ!今連絡してやるからよ!」
「あ?いや何であなたが自分で電話するんですか、
 第三者がかけて確認しないとなんの意味も………」
俺の制止を聞かず彦龍は勝手に電話をかけ始めた。
それで筋が通ると思っているのが頭の悪さを本当にあらわしている。
そしてまた、彦龍は醜態を晒した。
彦龍は俺の前で電話し始めたのだが、その内容は酷いものだった。
職場の人間が誰かでたようなのだが
「あ、もしもし平沼ですけども、実は……えぇ……ですから……
 だから……俺が言ったとーりに答えてくれればいいだけで……」
「違う違う……そうじゃなくて!……とにかく、この職場にいますよって……
 それだけ言ってくれればいいんでね…他はいいから俺の言ったことだけ……!」
ここまで頭が悪いのか……俺は絶句した。
そもそも彦龍が電話をかけている相手が果たして職場の人間かすらもこちらにはわからない。
しかも、俺の目の前で堂々とアリバイ工作をしているのである。
ほらよと彦龍から受話器を手渡された俺は、耳に当てることもせず通話を切った。
「てめぇ!!なにやってんだ!!てめぇが電話しろって言ったんだろうが!!!」
「あ?さっきの茶番に意味があるとほんとに思ってるんですか?
 いいから職場の名前と連絡先をかいてください。確認はこっちがとるんでね」
「ふざけんじゃねぇぞ!!!!じゃあもういいよ、そこのカメラでもなんでもいいから俺の顔取れよ」
「それで俺が帰ってこなかったら、それ持ってK察行きゃいいだろうが!!」
また突拍子もないことを言い出した。
散々書いたがあくまでK察は民事不介入である。
この手の業態の延長料金というシステムがまた問題をややこしくしており
料金自体は一応前払いで払っているので、サギとしての立件も難しいのだ。
ちなみに、対策として延長込みで後払いにしている店もあるが、
それこそ払えないといったトラブルは前払いの店より多いと思う。そしてK察も暇ではない。
こんなしょーもない小悪党を捕まえるために本気で捜査するとは思えない。
不毛な言い争いを続けていると店長がやってきた。
文章では省いた部分も含め、実に3時間程、俺達は言い争っていたのだ。
いい加減面倒くさくなっていた俺は店長に後のことを任せて、帰ることにした。
それから2日後に出勤した時話を聞くと
店長は粘り強く交渉し、払えなかった場合以外は連絡しないとの条件付きで
彦龍の働いているとされるラーメン屋の名前と連絡先を聞けたらしい。
だが、その日以降出かけてくると言ったきり彦龍は戻ってこなかった。
そして約束の25日、彦龍からはなんの連絡もなかった。
その日たまたま店長と一緒のシフトに入っていた俺は
とりあえず彦龍の職場に電話をかけることにした。
電話に出た男に尋ねた。
「すいませんが、そちらに大原博之さんという方は勤めてらっしゃいますか?」
「いやぁー知らないねぇ大原博之? 平沼博之じゃなくて?それならいるけど」
俺は脳裏に衝撃が走った。彦龍は自身の名前を大原博之と名乗った。
しかし、職場に電話をかけている時「もしもし平沼ですが」と言ったことを思い出したのだ。
つまり、名前までも嘘をついてやがった。俺は更に続けた。
「あ、すいません多分その人だと思います。今いらっしゃいますかね?」
「いやぁー、ここ最近現場に顔出さなくなったから、わからんね」
現場?土方かなにかの職場なのか?と咄嗟に推測した。
「そうですか……今どこにいらっしゃるかわかる方とかは…?」
「俺も特に親しくしてたわけじゃないからなぁ」
「そうですか…お手数をおかけしました。ありがとうございます」
そう言って俺は電話を切った。
そして、すぐに彦龍が職場として書き残して行ったラーメン屋の店名をGoogleで検索した。
しかし、そこに載っていた電話番号と今電話した番号は全く違うものであった。
一応、そのラーメン屋にも電話をかけてみたが、
その様な人物は知らないとの返答が返ってきた。
もちろん、彦龍本人の携帯には再三かけたが出る様子がない。
これで、このクズを辿るための糸は全て切れてしまった。
俺はもう腸が煮えくりかえる思いであったが。一番のヒガイ者は店長である。
何故なら1万円はその後店長が立て替えていたので、
言い換えれば1万円持ち逃げされたようなものだからである。
店長も流石に焦り、最後の希望である彦龍の会員カードに
登録してあるであろう情報にかける事にした。しかし、衝撃の事実が明らかになる。
本社に掛け合い、彦龍の会員カードに登録されている身分証明書のデータを確認してもらったところ
保険証を使用しており、名前は中橋浩太(仮) 21歳となっていた。
しかし、この中橋という名前俺は聞き覚えがあった。
そう丁稚と同じ名前なのである。
丁稚は最初会員カードを持っていなかったが、
後に作る事になった時に俺が対応したので出してきた免許証の名前を覚えていた。
つまり、彦龍は身分証明書の登録を顔写真がついていない丁稚の保険証で行っていたのだ。
会員の登録の際は出された身分証明書をちらっとチェックして
コピーをとる程度なのでスルーしてしまったのだろう。
こうして、全ての糸は途切れ彦龍はもう2度と姿を現わすことはなく
店長は1万円の自腹を切ることになってしまった。
名前、年齢、職業、身分証明書、収入、全てを偽っていた男、彦龍。
丁稚との関係は最後までわからなかったが
恐らく土方かなにかの現場での後輩なのだろう。
丁稚の親から預かったという話も、今になってみれば本当か嘘かもわからない。
ただ1つわかることは、底辺は自身より対等以下で
接することの出来る存在を常に欲しているということ。
俺達店員への上から目線の態度や自分を大きくみせる言動、
丁稚のような人間を従えていたのは
全て自分より見下せる存在を欲していたからに過ぎないと思われる。
そして、そのためならこの手のクズは堂々と嘘をつけるのだ。
嘘で塗り固めた端から見れば滑稽な外面でも自分ではそれを誇らしいと思い込んでいる。
そんな彦龍もまた心の病にかかっていた人間といっていいのかもしれない。
狂気の師弟愛の巻~完~
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